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終わりへの旅
128 魔王(1)
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◆登場人物紹介
・魔王討伐隊…
リリアン…前世(前・魔王討伐隊『英雄』のアシュリー)の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。『サポーター』
シアン(顧問役)、ニール(英雄・リーダー)、マコト(勇者・異世界人)、デニス(英雄)、マーニャ(英雄)、ジャスパー(サポーター)、アラン(サポーター)
・マルクス…魔王配下の上位魔族の一人。10歳程度の少年の姿をしている。ニールの友人。
====================
私の手をとったシアからは、さっきまでのつらそうな表情は消え失せていた。
そうして立ち上がると、落ちていたアシュリーの『英雄の剣』を黙って手に取った。
「もう大丈夫だ」
そう言って皆を見回した彼が、今度は困ったような顔で私を見る。そこでようやく、皆の視線が私にだけ向けられている事に気が付いた。
「え……? リリアン、なのか??」
混乱した表情でニールが言った。…… アシュリーの事はシアとデニスしか知らない。驚かれるのも当然だろう。黙って頷いた。
「どういう事なの? その姿はどう見てもアシュリーよね。リリアンとアシュリーの間に何か関係があるの?」
マーニャさんが紫水晶の瞳を細めて尋ねる言葉に、シアが代わりに答えた。
「生まれ変わりだよ。アッシュが死んで、リリアンに生まれ変わった。例の神の力とやらもその時に貰ったらしい」
「シアンは知っていたのね」
「ああ、デニスも知っている」
その言葉に、デニスさんもああと応えた。
ニールはまだ混乱しているようで何かぶつぶつと言っている。アランさんは何故か目を見開いて呆けていた。
流石に注目されるのが気になって、そっと『変姿の魔法』を解いた。体に纏っていた魔力が落ちると、元の狼獣人の少女の姿に戻った。
「なるほど、俺が使っていたのと同じ『変化の魔法』だな」
ジャスパーさんが、興味深げに私の姿を眺めながら言った。
「……リリアンについては、本当に不可思議な事だらけだわ。でも神の力が関わっているというのなら、いくらかは頷けるわね」
横で聞いていたデニスさんが、なあと私とシアさんに向けて声をかけた。
「さっきのアシュリーさんは何だったんだ? シアンさんは魔族にされたって言っていたけれど……」
「多分、あれはゴーレムです」
「!!」
「といっても、マルクスが出した石像のゴーレムとは違います。アニーと同じか、それ以上に性能がいいものでしょう」
「ゴーレムは魂のない器に魔力で作った魂を込めたものだわ。そしてその器は――」
「作る者の腕次第で、人形でなくてもいいんです」
マーニャさんの言葉を遮って言うと、彼女の方を見た。
「教会が、メルの遺骸でゴーレムを作ろうとしたように」
「……貴女はそんな事まで知っているのね」
「サムの日記に書いてありました」
「そうなの…… あなたたちは本当に仲が良かったものね」
そう言って彼女の吐いたため息は、少し寂しそうにも見えた。
「教会はメルのゴーレムを作って、何をするつもりだったんですか?」
そう尋ねると、マーニャさんはそっと視線を落としてから、口を開いた。
「あの子が死んだのは予定外だったのよ。あの時、ただでさえアシュリーが戦死して、クリストファーまでもが死にかけていて。ここでさらに討伐隊から無意味な死者を出すわけにはいかなかったの。だからメルヴィンを生きている事にしたかったのよ」
「メルを殺したのはマーニャさんですか?」
「……そう……言う事にもなるわね」
マーニャさんは、否定をしなかった。知ってはいた事だった。けれど、何故……
「そこまでにして、先に進もう」
マコトさんが私たちの会話に割り入った。
「今はできるだけ早く魔王の元に辿り着くのが先だと、そう言っただろう」
「そうね。魔王を倒すことができたら、彼らの事を教えるわ」
マーニャさんはそう言って、何かを振り切る様に、目線を行く先に向けた。
* * *
魔王城の奥深くに、玉座の間はあった。
「……ここだ」
感慨深く告げたシアさんを先頭に、ゆっくりと進み入る。
ぼんやりとした灯りでしか照らされていない広間の中。薄暗がりの所為ではっきりとは見えないが、複雑な文様らしきものが刻まれた幾つもの燭台が、青い炎を揺らしている。
血の色にも見える、濁った深く赤い絨毯が敷かれたその先に、玉座があった。
「たかが人間たちが、私の邪魔をするのか」
玉座に座る人物が静かに声を上げる。
――私は、彼の事を知っている……
さらに彼の周りに控えているのは、今までに私たちの前に立ちふさがってきた上位魔族たち。
鎧の魔族、ルシアス。
仮面の魔族、ビフロス。
そして、無垢な少年の姿をした、マルクス……
ニールは前に踏み出してシアさんの隣に並ぶと、マルクスの方を見た。
「無事だったみたいだね」
先に口を開いたのはマルクスだった。
「あれで君たちが諦めて、大人しく帰ってくれれば良かったのに」
「マルクス……」
ニールが寂しそうに彼の名を呼んだ。
「ニンゲンとはなんと強欲なのだ。我らの大事な物を奪うだけでは飽き足らず、こうして父者の命までも奪おうとするなど……」
ビフロスの言葉に、僅かにニールが動揺した。
「え……? 大事な物って何のことだ?」
「しらばっくれるな! 我らから奪ったものを返せ!」
次に声を荒げたのはルシアスだった。
「あれがあれば、世界は滅びずに済むのだ!」
「え……?」
魔族たちの言葉に皆が絶句した。
いや、正確には全員ではない。マーニャさんは静かに長いため息を吐き、マコトさんはちらりと私の方を見た。
「大丈夫です。貴方たちが望むものを持って来ています」
私の声が広間に響く。
上位魔族たちだけではなく仲間たちの視線までもが私に向けられた。
====================
(メモ)
ゴーレム(#50)
(Ep.5)
日記(#76)
・魔王討伐隊…
リリアン…前世(前・魔王討伐隊『英雄』のアシュリー)の記憶を持つ、黒毛の狼獣人の少女。『サポーター』
シアン(顧問役)、ニール(英雄・リーダー)、マコト(勇者・異世界人)、デニス(英雄)、マーニャ(英雄)、ジャスパー(サポーター)、アラン(サポーター)
・マルクス…魔王配下の上位魔族の一人。10歳程度の少年の姿をしている。ニールの友人。
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私の手をとったシアからは、さっきまでのつらそうな表情は消え失せていた。
そうして立ち上がると、落ちていたアシュリーの『英雄の剣』を黙って手に取った。
「もう大丈夫だ」
そう言って皆を見回した彼が、今度は困ったような顔で私を見る。そこでようやく、皆の視線が私にだけ向けられている事に気が付いた。
「え……? リリアン、なのか??」
混乱した表情でニールが言った。…… アシュリーの事はシアとデニスしか知らない。驚かれるのも当然だろう。黙って頷いた。
「どういう事なの? その姿はどう見てもアシュリーよね。リリアンとアシュリーの間に何か関係があるの?」
マーニャさんが紫水晶の瞳を細めて尋ねる言葉に、シアが代わりに答えた。
「生まれ変わりだよ。アッシュが死んで、リリアンに生まれ変わった。例の神の力とやらもその時に貰ったらしい」
「シアンは知っていたのね」
「ああ、デニスも知っている」
その言葉に、デニスさんもああと応えた。
ニールはまだ混乱しているようで何かぶつぶつと言っている。アランさんは何故か目を見開いて呆けていた。
流石に注目されるのが気になって、そっと『変姿の魔法』を解いた。体に纏っていた魔力が落ちると、元の狼獣人の少女の姿に戻った。
「なるほど、俺が使っていたのと同じ『変化の魔法』だな」
ジャスパーさんが、興味深げに私の姿を眺めながら言った。
「……リリアンについては、本当に不可思議な事だらけだわ。でも神の力が関わっているというのなら、いくらかは頷けるわね」
横で聞いていたデニスさんが、なあと私とシアさんに向けて声をかけた。
「さっきのアシュリーさんは何だったんだ? シアンさんは魔族にされたって言っていたけれど……」
「多分、あれはゴーレムです」
「!!」
「といっても、マルクスが出した石像のゴーレムとは違います。アニーと同じか、それ以上に性能がいいものでしょう」
「ゴーレムは魂のない器に魔力で作った魂を込めたものだわ。そしてその器は――」
「作る者の腕次第で、人形でなくてもいいんです」
マーニャさんの言葉を遮って言うと、彼女の方を見た。
「教会が、メルの遺骸でゴーレムを作ろうとしたように」
「……貴女はそんな事まで知っているのね」
「サムの日記に書いてありました」
「そうなの…… あなたたちは本当に仲が良かったものね」
そう言って彼女の吐いたため息は、少し寂しそうにも見えた。
「教会はメルのゴーレムを作って、何をするつもりだったんですか?」
そう尋ねると、マーニャさんはそっと視線を落としてから、口を開いた。
「あの子が死んだのは予定外だったのよ。あの時、ただでさえアシュリーが戦死して、クリストファーまでもが死にかけていて。ここでさらに討伐隊から無意味な死者を出すわけにはいかなかったの。だからメルヴィンを生きている事にしたかったのよ」
「メルを殺したのはマーニャさんですか?」
「……そう……言う事にもなるわね」
マーニャさんは、否定をしなかった。知ってはいた事だった。けれど、何故……
「そこまでにして、先に進もう」
マコトさんが私たちの会話に割り入った。
「今はできるだけ早く魔王の元に辿り着くのが先だと、そう言っただろう」
「そうね。魔王を倒すことができたら、彼らの事を教えるわ」
マーニャさんはそう言って、何かを振り切る様に、目線を行く先に向けた。
* * *
魔王城の奥深くに、玉座の間はあった。
「……ここだ」
感慨深く告げたシアさんを先頭に、ゆっくりと進み入る。
ぼんやりとした灯りでしか照らされていない広間の中。薄暗がりの所為ではっきりとは見えないが、複雑な文様らしきものが刻まれた幾つもの燭台が、青い炎を揺らしている。
血の色にも見える、濁った深く赤い絨毯が敷かれたその先に、玉座があった。
「たかが人間たちが、私の邪魔をするのか」
玉座に座る人物が静かに声を上げる。
――私は、彼の事を知っている……
さらに彼の周りに控えているのは、今までに私たちの前に立ちふさがってきた上位魔族たち。
鎧の魔族、ルシアス。
仮面の魔族、ビフロス。
そして、無垢な少年の姿をした、マルクス……
ニールは前に踏み出してシアさんの隣に並ぶと、マルクスの方を見た。
「無事だったみたいだね」
先に口を開いたのはマルクスだった。
「あれで君たちが諦めて、大人しく帰ってくれれば良かったのに」
「マルクス……」
ニールが寂しそうに彼の名を呼んだ。
「ニンゲンとはなんと強欲なのだ。我らの大事な物を奪うだけでは飽き足らず、こうして父者の命までも奪おうとするなど……」
ビフロスの言葉に、僅かにニールが動揺した。
「え……? 大事な物って何のことだ?」
「しらばっくれるな! 我らから奪ったものを返せ!」
次に声を荒げたのはルシアスだった。
「あれがあれば、世界は滅びずに済むのだ!」
「え……?」
魔族たちの言葉に皆が絶句した。
いや、正確には全員ではない。マーニャさんは静かに長いため息を吐き、マコトさんはちらりと私の方を見た。
「大丈夫です。貴方たちが望むものを持って来ています」
私の声が広間に響く。
上位魔族たちだけではなく仲間たちの視線までもが私に向けられた。
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