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第四十二話 敗北者達
しおりを挟む魔王が、現れてから、3日が、経った。
今日は、3人と街に出掛けていたが、街の中の雰囲気は、あまり良いものじゃなかった。
まぁ、魔王が、現れて、みんな不安を感じているからだ。
僕達は、買い物をして、そのまま城に戻った。
買ったものを整理して、中庭の東屋で、お茶をしようとなったので、準備していると、空に映像が浮かんだ。
僕は、念のために、装着のスキルと自在の影のスキルを発動させ、鎧を着て、剣を作り出し、戦闘体勢を取った。
その映像に映し出されていたのは、フリージアのことを殺しに来た元クラスメイト達と白羽族達が、魔王と対峙していた。
魔王が、「全ての国の人間達よ。これから、希望が途絶えるぞ。絶望しろ」
「そんなことはさせない。俺は、勇者だ。この世界を救うことが、出来る選ばれた人間だ。お前を殺し、あの黒騎士も黒羽族を殺して、俺は、英雄になるんだ」と言い、クラスの人気者が、聖剣を構えた。
「そうよ、私達は、選ばれた人間なのよ。私が、この世界を救済するの。だって、私は、聖女だから」と言い、クラスのヒロインは、杖を構えた。
そして、元クラスメイト達と白羽族達は、それぞれの武器を構えた。
魔王は、「憐れだな、異世界人達よ。例え、我を黒騎士を黒羽族を殺せたしても、そなた達は、英雄では無く、白羽族の道具になるのになぁ」
その言葉を聞き、元クラスメイト達に動揺が走った。
白羽族の1人が、「信じてはなりません、異世界の勇者方々、あれは、魔王が、我々を動揺させようと、嘘をついているのです。騙されては、なりません」
クラスの人気者は、「そ、そうだな。そ、そうか、魔王は、俺達に恐れをなしているのか、当たり前だ、俺達は、異世界の勇者、俺は、勇者だからな」
クラスのヒロインは、「そ、そうよ。白羽族の人達は、優しい人達よ。そんな、ことをするわけ無いわ」
魔王は、「愚か過ぎて、何も言えないな。まぁ、良いだろう。そなた達に圧勝し、この世界に希望が無いことを知らしめたやろう。さぁ、かかって来い」
その言葉から、戦いが始まった。
戦いは、一方的だった。
元クラスメイト達と白羽族達は、魔王には、一切敵わなかった。そして、敵わないと思ったのか、転移魔法を使って、撤退してしまった。
「敵を目の前で、撤退するとは、情け無い。しかも、あの程度の実力しか無いのに、あれ程大口を叩いていたのか、元から希望なんて無かったな。さぁ、人間達よ、条件を呑むしか無くなったな。後、4日だ。良い返事を期待している」と言い、空の映像が、消えた。
空の映像が、消えたことを確認した僕は、鎧を脱ぎ、剣を消した。
一応、3人に怪我が無いか確認した。
「えっと、伊黒さん?あの、異世界の勇者様が、言ってた、黒い騎士って、伊黒さんのことですか?」と、テレシアが、聞いて来た。
「うん、そうだよ。彼は、僕が、伊黒雄介だと気付いてないよ。まぁ、僕は、鎧で全体を隠しているから、気付かないのも無理がないよ」と、答えた。
「そ、そうですか。えっと、あの、白羽族の道具になるという話は、本当ですか?」と、テレシアが、聞いて来た。
「うん、本当ことだよ。僕が、ランダム転移魔法陣に入れられる前に、白羽族の長から聞いたことだから、間違えないよ」と、答えた。
「そうなんですね。えっと、答えにくいなら答えなくても大丈夫ですけど、伊黒さんは、元の世界から一緒に来た人達は、どうするですか?」と、テレシアが、聞いて来た。
「映像に映ってない人達は、どうにかしてあげたいと思っているよ。逆に、映像に映った人達は、助ける気は、さらさらない。あいつらは、フリージアのことを殺そうとしたし、今の聖女は、クレアを無実の罪で追い出してるから、助ける気も起きないよ。例え、それが、元クラスメイトだとしても」と、答えた。
僕は、続けて、「そして、僕は、元クラスメイト達と3人どちらかを選べと言われたら、迷わないで、3人のことを選ぶよ。だって、この世界で、1番大切だと思ってるから」
その言葉を聞き、3人は、顔を赤くして、下を向いてしまった。
この日、元クラスメイト達と白羽族達は、敗北者になった。
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