俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

文字の大きさ
88 / 196
未熟な冒険者のコルト

不審人物二人の正体は、あの二人

しおりを挟む
 日本に帰りたいってんなら、こっから出て行けば自宅に戻れるとは思う。
 けど、相棒のエルフさんにはそれはできないだろうな。
 この戸が見えないから。

 でもこの男の方にはそんなつもりはなさそう……と見ていいよな?
 ま、こっちはそっちにかまってられない。
 流しにコンロ、掃除しとかにゃ。

「コウジさん、コウジさん」

 プレハブ作った時にこれも挿げてもらったんだよな。

「コウジさん、コウジさんってばっ」

 一年はまだ経ってないんだよな。
 水滴の跡がなー……。

「コウジさんっ! わざと無視してるの分かってるんですからねっ!」

 ちっ。

「何だよ、うるさいな」
「まったくもう……。さっきの二人、なんか変……なんですよね。この部屋の説明はしましたけど」
「ここに来る連中はみんな変だよ」

 無理して命を危険に晒すんだから。
 そうなる前に帰ればいいのに。

「何か、私に興味津々って感じして。またどこかの国からの偵察か何かかな」
「さぁな。誰が来たってやることは同じだろ? 食費が思いの外かからなくなったが、だからと言って俺の生活費はプラスにならねぇんだよ。 装備品作り、頼むぜ?」
「もぉ……。分かってますっ」

 雑貨屋の品物よりも、異世界で活用される道具を展示品のような目的で売る方が売り上げが高い。
 そもそも店に品物を並べても、買いに来る客の絶対数が少ない。
 過疎化だもんなぁ。

 ※※※※※ ※※※※※

 いつもの昼の歌の時間。
 俺には効果が及ばないような工夫をしてくれている。

 そしていつもの、コルトと二人の昼飯。
 まぁ天たまうどんは俺も好きだけどさ。

 ところが食べ終わってからがいつもの時間とは違ったんだよな。

「えーっと、コウジさん、ていうのか。あの子、いい歌聞かせてくれてうれしかったよ」
「……それは何よりです」

 異世界から来た日本人が、親し気に声をかけてくる。
 同じ日本人だから仲良くできるとは限らない。
 何か下心ありそうだな。

「あぁ、俺は日本に戻るつもりはないし、ここを自分のいいように利用しようとするつもりもないから安心してくれ」

 はい、警戒度をマックスにしようか。

「コルトー、けいかーい」
「はーい」

 五秒もあれば、いや、五秒もかからず眠らせることができる。
 自分の家に逃げ込む防衛策は、異世界人にしか通用しない。
 まさか日本人がやって来るなんて誰が想像できようかっての。

「あぁ、そんな警戒しないでくれ。その歌に不思議な力があることは分かる。君はここにバイトに来てるの?」

 自分の素性を明かさずに、相手をあれこれ詮索するのってどうよ?
 怪しすぎるだろ、こいつ。

「テンシュ、あなたまだ自己紹介してないでしょ」
「あ、あぁ、そうだったな。すまん。俺は天流……じゃなかった。あれ? 今なんだっけ?」
「オルデン法国。ってなんで私の方が覚えてるのよ」

 何なんだこの二人。
 夫婦漫才か?
 払う金はねぇぞ?

「オルデン法国……って。確かホールスの……」

 コルトは心当たりがあるらしい。
 盛り上がるんなら勝手にやってろ。
 俺は知らん。

「そうそう。ライリーと兄弟だか従兄弟だかのホールスがその隣に国を作った……っつーか天流国内に作った?」
「あ、はい、知ってます。天流の名前も。私も……ホールスだから……」
「まぁ引っ越しはしたけど今もその国内で『法具店アマミ』の店主をさせられてる……」
「え?!」
「テンシュ! そーゆー言い方はないでしょっ!」

「し、知ってます! そこの店主さんは、宝石が絡んだ物作りはいい仕事するって聞いてます! かなりの変人だけど……あ……」

 おぉう。
 地雷踏みやがった。

「……客に変人が多いからな、あの店は」
「何で私を睨むのよ?」

 面白いなー。
 けどわざわざ話しかけに来る理由が分からんな。

「俺は別にコルトの保護者でも何でもねぇ。コルトと話が合うなら適当にそこらでしてたらいいんじゃね? 俺が耳挟んだって理解が追いつかねぇし、雑用もあるんでな」
「あ、あぁ、済まないな、コウジさん」

 年上にさん付けされるのも落ち着かねぇな。
 それはともかく……指輪の部屋から米袋持ってくるか。

 ……何であの部屋でお金増やせないんだろうなぁ……。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...