この僧侶、女子高生っぽい女神の助手 仕事は異世界派遣業

網野ホウ

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第一章 一件目、異世界龍退治

プロローグ:女神なな さい銭箱に手を出した

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 ななの後をついていって鳥居の下をくぐる。
 目の前には石塀があるはずだが、目の前の景色は一転。
 遠い距離まで見下ろせる小高い丘の上にいることは分かった。
 正面に見える景色は、小さく見えるどこぞ町並み。
 ここからでもレンガ造りの建物ばかりが見える。
 ななから説明を受けてたせいか、あるいはゲームにハマっていた経験からか、がらりと変わった風景に、思ったよりも動揺がない。
 我ながら大した肝っ玉だと思う。
 でも目の前に見知らぬ風景が現れた経験は、前にもあったような気がするが……。

「後ろ見てごらん、南君」

 後ろ?
 あらら。ここにも……。

「へぇ……。鳥居みたいなのはここにもあるのか」

 その奥、神社の社がありそうな位置に、形状は違うが神殿めいた建物がある。

「参拝者とかいそうなのに、よく誰もいないタイミングで来れたな」

「神がかってるでしょ?」

 自称女神が何か言ってんぞ。
 しかもドヤ顔やめろ。

「でもななに願い事した人もいないってどういうこと? 詳しい事情聴けねぇなら、願い事を叶えることも出来ないっての」

「そう言うわけにはいかないわ。たとえ本人が傍にいてもね。私が家の外に出るってことは、南君だけじゃなくみんなも見ることが出来る実体を持つってこと。つまり、お願いする人達ばかりじゃなく、その世界にいる人達みんなから見られるし会話もできるのよ」

「会話が出来るならなおさら都合がいいんじゃねぇの?」

 なにその軽蔑するような眼。
 何も知らねぇんだもん、こっちは。

「この世界もそうだけど、私の像を祀ってる世界もある。南君とこのあの神社はないけどね。ないからこそ南君とはこうして会話が成り立つんだけど」

 会話が成り立つ?
 会話が出来るじゃねぇの?
 どう違う?

「私の像を祀ってて、且つ信仰心が篤いと、実態を持った私を妖しげに見る人が増えてくのよね」

 何でだ。
 いや待て。
 俺の寺は仏教だ。
 で、うちの本尊は阿弥陀様。
 その阿弥陀様が普通にどこからかやって来て「困ったことでもあるのかい?」なんて言われたら……。

 確かにうさん臭い。
 実際に目の前に現れるなんてことはあり得ない。

 あぁ……、なるほど。

「信仰の対象は私じゃなくて、私の像ってケースが多いのよ。それともう一つ」

 まだあるのか。
 なんかななが物悲しい目つきになってきたぞ?

「困ったことが起きたらどこからともなくやって来て、頼みもしないのに解決してくれて、終わったらどこへともなく消えていく。そんな便利屋みたいな受け止め方もされたくないしね」

 特撮か何かのヒーロー物じゃねぇか。
 確かにそんな存在を宛てにして、自分達でその修羅場を乗り越えることをしなくなっちゃあ進歩も発展もないよな。

「便利屋か。確かにそうだよな。最初はお願いだったのに、次第にやってもらって当たり前って感じになって、最後は命令を下すみたいな感情持たれてもな」

「そういうこと。それと何もしないまま、いつの間にか問題が解決されたって思われるのも良くないし」

 ある問題に直面して皆が困っている。
 その思いを察してくれて神様が解決してくれる。
 何もしなくてもいろいろと手を差し伸ばしてくれる。

 そんな使役するような存在と受け止められても困るってわけか。
 皆が困っている。なながその問題を解決する。
 この二点の間に困っている皆がななに対して何かをするというプロセスが必要になるってことだ。
 天は自ら助くる者を助く、か。

「で、情報を仕入れなきゃいけないんだけど、南君がそばにいてくれるだけで有り難かったんだよね、実は」

「俺の力を借りたいって言ってなかったっけ?」

「もちろんそうよ。でもそれだけじゃなかったの。私一人であちこち動くと、神様のマネしてるなんて言われかねないの。服装変えればいいってもんじゃないもの」

 髪型、顔。
 変えられなくはないだろうが変えたくはないだろう。
 だがそばに俺がいるだけで、似ているだけで浴びる注目が分散されるってわけか。
 それこそ、そばにいてくれる者なら俺でなくても構わない話。
 だがななを見て会話できる力があるのは俺だけ。
 誰でも出来ないことはない役割だが、全てはそこが発端だ。

「で、どこに行く? 土地勘も何もない。この格好が当たり前の服装ならどこでも行けるだろうが」

「慌てない慌てない。まずはぐるりと周りの様子を見回してからよ」

 ふむ。
 神様とて、何でもすぐに分かるってのは幻想か。
 しかしこの世界を作ったのなら、俺ら人間だってななの作品の一つってことにならんか?
 なのに思い通りに相棒を見つけられない、ままならない話ってのも興味深くはあるが……。

「あそこら辺が問題の元凶かな?」

 きっちり真横の左方向。
 山脈のシルエットが見えるその手前。
 そこにも街並みが見えるが、不規則に凸凹している。

「壊された街って感じだな」

「うん。んでその奥の山脈の中腹に、竜っぽいのが……寝てるのかな? 動かないままね」

 視力いいな。
 俺には見えん。
 まぁ手がかりは見つけることが出来たわけだから……。

「じゃあ行くか。けどどんだけかかるんだ?」

「その前に、資金調達」

 はい?
 資金って……。
 あ。
 金がなきゃ何もできない仕組みなのは、俺の世界ばかりじゃないのか。
 で、どこから?

「もちろん、あ、そ、こっ」

 あん?
 指さした方は鳥居の奥の建物だよな?
 ……
 …………

 まさか。

「誰も来ないうちにさっさと行くわよー」

「いや、お前、ちょっとっ!」

 あるとは思えない。
 いや、有り得るか。
 神仏に何かを捧げる。
 それは感謝の意を態度で表すことだ。
 そしてその何かとは。

 自分らにとっていつでも大切なもの。
 そして受け取る者が、いつ受け取っても有り難いと思われるもの。
 そんなもの……一つしかねぇじゃねぇか!

「神様がモノ盗んじゃまずいだろうよ!」

「人聞きの悪いこと言わないでよ。私への捧げものなんだから、私が受け取っても何の問題もないわ」

 ……そりゃ、間違っちゃいないだろうが……。
 やっぱりあるのか……さい銭箱が。

「石材なのか……。どうやって開けるんだよ」

「ただ手を当てて透過させるだけ。こうやってね」

 うぉう……。扉も何もない壁に手のひら当ててそのまま肘まで中に入れてるのか?
 何と言うか……すげぇ罪悪感。

「はい、全部受け取りました。これだけあれば十分でしょ」

「……金額、どんくらいだよ……」

 かなりの量の、この世界での通貨や紙幣のような、俺にはよく分からない物がななの手から零れ落ちそうなくらい積まれている。
 思わず質問してしまったが、俺はノータッチの方がいいだろう。
 いや、アンタッチャブルだ。
 世の中には知らなくていいことと、知ってはならないことがある。

 俺は知らん。
 俺は知らん。

「さて、まずは現場に行きましょ。いきなり誰かに聞きに行っても話が合わなかったり理解出来なかったら、入りやすい情報も入らなくなるしね」

 まぁ……何となく分かってたけどさ。

 ななって、神経図太いんだな……。
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