この僧侶、女子高生っぽい女神の助手 仕事は異世界派遣業

網野ホウ

文字の大きさ
8 / 44
第一章 一件目、異世界龍退治

俺 早速異世界で異能を発揮

しおりを挟む
 折り紙で何かを折ると、それに関連した実物に変化して実体化して実用品になる力を持ってしまった。
 しかも俺の住む世界でのみ発揮できないんだと。
 ななが行きたい場所には、この世界での一番早い交通手段である馬車でも、何日もかかるらしい。
 なら空を飛んだらどうだろう?
 壁も道路も進行不可の区域もない。
 直線距離ならかなり日数や時間は削られるはず。

 そう言うことで折り鶴を折ってみた。
 けど、まず大きさが不十分。
 俺とななの二人が乗せられる、しかも落っこちることのないくらいの大きさに変化することを願った。
 で、万が一落ちたら助けてくれるくらいの知恵は持っててほしい。
 いわゆる賢い生き物になってほしいと思いながら鶴を折ってた。

 終わった直後に大きくなり始めながら、それを見ることが難しいくらい発光した。
 その発光が終わって現れた生き物は、上半分が鷲。下半分が獅子、と言った方がふさわしいか。ゲームでは時々見られる、いわゆるグリフォンという名前が付けられている生き物に変わっていた。

 その姿を見た後、一瞬後悔した。餌に間違えられないか? 俺ら。
 なんせ体の大きさは四トントラックくらいだからな。
 頭部だけでも俺の上半身と同じくらい。

 そう思った直後、俺に頭を摺り寄せてくる。
 飼い主とペットの関係そのものじゃねぇか。
 元は折り紙なんだが、自分の意思で友好的に接触されると情も移るってもんだよなぁ。

「一応名前つけるか。グリフォンだからぐり。短い名前の方が咄嗟の時に呼びやすいし。でも大きな生き物一体よりも、俺専用となな専用の二匹作った方が良かったかな?」

 俺専用は全身赤くして、角を一本つけて三倍速くして……。

「それはムリ。最初の一匹目がこれで正解だったわね。つくづく幸運よね、南君。もっとも私が南君の幸運を高めてあげたからなんだけど」

 無理ってなんでだよ。
 紙さえあればいくらでも作れるだろ。

「同じ種類の物は重複できないのよ。ぐりを作ったから折り鶴から何かを実体化させることは出来ないし、他の折り紙からぐりみたいな生き物は作れない。作りたいときはぐりを折り紙に戻してからね」

 なるほど。
 最高級品の鎧を作って防具屋に売れば、一気に大富豪になること間違いないもんな。
 なんて言うんだっけ。インフレ?

「とにかく、早速ぐりに乗ってあの山へ」

「いやちょっと待て。その龍の姿は俺には見えんが、山頂近くには雪が残ってんぞ。しかも魔術師達が氷漬けにしてるって言ってなかったか? それに空を飛んでいくんだぞ? 上に行くほど空気は冷たいに決まってる。防寒具は必要だろうよ。それと食料」

 そうだよ。
 いくら時間の経過はない、身の安全は保障するって言われても、健康維持は別だろうよ。
 それと自ら危険な目に遭いに行くこともそうだ。
 そもそも空高く飛ぶこと自体危ない話だ。シートベルトがついてるわけでもなし、空調だってないだろうし。高山病にかかるんじゃねぇか?
 ヤバい。
 俺も意外と何も考えてなかった。

「食事については心配ないわよ。私はともかく、南君にはそういう仕掛けしといたから」

「仕掛け? 何か弄ったのか?」

「体の変化は、南君の世界の時間の経過に合わせるようにしてるから。だから別の世界にいる間はトイレに行く気にはならないし、お腹も減るようなこともないの。だって自分の世界に戻ったら別人になっちゃったなんてシャレにならないでしょ?」

 そりゃそうだ。
 浦島太郎状態なんて真っ平御免。

「けどお前は必要なんじゃないのか? お供えバカスカ食ってるイメージあるし」

 口から出まかせがつい出てしまった。ただ思いついただけ。
 しかし、三方に乗せる五穀や生魚、酒なんかは簡単に思いつく。
 実際に口にするわけではないだろうが、こうして実体化が出来る以上、何かを口にする必要はあるんじゃないだろうか。

「食いしん坊みたいなこと言わないのっ。私は別に食べても食べなくてもどっちでもいいの」

「どうでもいいってことか」

 そりゃちょっと食事を作ってくれた人たちや食材を育ててくれた人たちに失礼じゃねぇか?

「んー。食べたくなったから食べる、食べたくないから食べないって言うのとは違うわね。食事って肉体の維持だけが目的じゃないのよね。食事の場を通じていろんな人たちと交流する。食事にはそんな役目を持たせることが出来るのよ。私にとってはむしろそっちが重要かな」

 食べる時間よりも団欒の場を大切にするってことか。
 考えてみりゃ、食うことで満足感を得るのは食った本人だけ。
 けどななの心掛けてることを考えると、自分だけじゃなく一緒に食事の時間を過ごした人達にも満足感を……与えるという言い方が当てはまるか。
 職業柄と俺個人の偏見から考えるに、仏様というとみんなに幸せを気付かせるというイメージが強い。
 で、ほとんど縁のない神様というと、大勢から手を合わせ崇められてふんぞり返ってるイメージ。

 しかしこの自称女神様の言動を見てみると、俺が持つ仏様のイメージ寄りであることと、神仏のイメージよりもはるかに人間的な感じがする。
 だって神様の威厳のいの字もないことばかりしてるじゃないか。

「何ぼんやりしてるの? あぁ、防寒具のことか。それなら私の術でぐりちゃんの周囲の気圧とかは快適な環境を維持するようにすればいいよね?」

 ぐりちゃんって。
 まぁ懐いてくる分には可愛いけどさ。
 あれ?
 でも空を飛ぶ生き物じゃなく、早く走る生き物にいてほしいと思ったら……。
 こいつを折り紙に戻さなきゃならない?

「……懐かれるのも問題だよな。罪の意識が芽生えそうだ」

「何よ、いきなり沈んだ顔して」

「別の生き物を実体化させたい場合、こいつを折り紙に戻さないと他の生き物を実体化させられないってことだよな?」

 人間のエゴで愛玩動物を作り出したり、希少な動物を絶滅させたりする歴史が人間にはある。
 そんな歴史と無縁だと思ってたら、この力がその歴史に俺を巻き込むような気がする。

「まぁそうなんだけど、ぐりちゃんを折り紙に戻して別の動物作って、また同じタイプの生き物を作ったらぐりちゃんが再登場するわよ? って言うか、むしろいる必要がない時は折り紙に戻すこと推奨」

「いいのかよそれ。まるで俺とずっと一緒にいたがる態度とってるんだが、折り紙に戻るの嫌がるんじゃね?」

 頭ばかりじゃなく体も摺り寄せてくる。
 それだけならいいが、甘噛みしてくんぞこいつ。
 割りと痛いんだが。

「よく考えてみなさいよ。元々は紙よ? 同じ折り方したらいつかは紙も折り目に沿って切れやすくなるわよ? もっとも別の紙でぐりちゃんを作ることは出来るけど」

 ……紙、というか、無機物に懐かれてる俺。
 ある意味空しいな。なるべく考えたくはないが、考える必要はある。
 となると……。

「折り紙で食い物作ったら料理が実体化するけど、それを食うわけにはいかないか」

「紙を消化して栄養に出来るなら構わないわよ? 私は」

 ムリ。
 そうなると……。

「防寒具作ったら……」

「もちろん着用可能だしちゃんと役割を果たせるわよ。でも修繕は無理ね。もっとも修繕するより別の紙で作りなおす方がいいかも」

 なるほどね。
 しかし俺の力のことなのに、ななに聞くってのも変な話だ。
 しかも質問に答えてくれるってのもさらに奇妙な話だな。

「他に聞くことないなら早く行きましょう! 兵は迅速を貴ぶって言うしね!」

 まぁこの格好でも健康に害しない環境を作ってくれるってんなら何の問題もないか。
 移動中でも質問は出来るしな。

「おう。んじゃぐり、俺とななを背中に乗せてくれないか?」

 体を擦りつけながら分かったように何度もぐりが頷き、後ろ足の関節を曲げた。
 賢いな。乗りやすくしてくれたのか。
 まぁ賢い生き物だったらいいなとは思ってたけども。

「お、モフモフだねぇ。羽毛が気持ちいいよ」

 どこでそんな言葉覚えた、自称女神さんよぉ。
 それにモフモフって言う言葉は、羽毛にはあまり当てはまらないと思うぞ?

 とりあえず、あの山に向かって出発だな。

 ぐりは翼を大きく動かし、俺ら二人を乗せたその巨体がゆっくりと宙に浮き始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...