この僧侶、女子高生っぽい女神の助手 仕事は異世界派遣業

網野ホウ

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幕間その2

幕間:女神の、仕事と愚痴

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 俺の本職は僧侶。

 僧侶のくせに、自称……まぁ本物っぽい女神の姿が見えるし、声が聞こえるという……特技、でいいか。特技がある。

 で、いろんな世界の創造主らしいんだが、まぁいろいろ雑用を手伝ってもらいたいと頼まれてしまった。

 理由は、そういう特技があるから、だと。




 報酬は、俺が体感したことだが、金運がアップした。

 宝くじが一定額当たるまでは外れないという現象が付きまとってる。

 直接給与とかバイト料などの手渡しをされるより、何となく粋に感じる。




 さて、今俺はいつも通りの朝を迎えている。

 駅前通り沿いの異駒清水神社から繋がる異界の社の中。その女神のななの家の中だ。




「あのさ、ななよぉ……」

「なぁに?」




 こないだ買ってやったばっかりのスマホを弄っている。

 電気や電波は何とか理解して、ここを圏内にしたらしい。

 口に出して言うと、こいつはどう機嫌を崩すか分からん。

 だが油断すると、つい口にしたくなる。




 昔の着物の軽装のような衣類を身に纏っているから辛うじて堪え切れてるが、湯川高校だのの制服を着せたら、間違いなく女子高生が初めてスマホを買ってもらって、その操作を覚えるのに夢中な姿そのものなんだよな。




 年の離れた妹か姪っ子に、高校入学記念に買ってやった身内の気分。

 まぁ学業が疎かになる心配はないからいいけどさ。

 でもそれ、創造主としてどうなのよ?




「ずっとスマホ弄りっぱなしじゃねーか。その鏡であちこちの世界を観察する役目ほったらかしかい」




「んー? でもせっかく南が私に買ってきてくれたんだしさぁ。しっかり覚えないと南に悪いし」




「けど、写メ使えるようにっても、ここで使っちゃまずいだろ? 俺と通話さえできりゃいいんだからよ。それより俺はお前の任務放棄の方が気になってしょうがないんだが?」




 ななはようやくスマホから目を離す。

 普通の携帯の方が良かったか? 余計な機能をつけると、ネットに繋がる端末な分、異世界の存在が俺の世界で広まっちまう。

 今はまだ日本では妄想の段階だけどよ……。




「一応それぞれの世界にも管理者みたいな存在はいるから、ある程度なら目を離しても平気だけどねーっ。んっ、んん~っ……と……」




 スマホをテーブルの上において背伸びをしてるななの外見は、どう見ても十八歳を超えるようには見えない。




「あ~……そろそろ行ってくるかなー」

「どこへ?」




 なながここから外出することはあまり見たことがない。

 あるとすれば……。




「別の世界に転移したいって人がたくさんいてね。面接しないと……」

「スマホの操作で希望者待たせるなよ、お前……」

「問題なーし。ここは時間が動かない場所。私がどんなに長くここにいても、面接会場で待ってる人は待ち時間ゼロなの」




 考えてみりゃ俺がここから自分の世界に戻った時も、時間の経過はないもんな。それにしてもだ。




「都合のいい設定だよな」

「設定ゆーなっ。そういう仕組みにしてるのっ、ここはっ。じゃあ行ってくるから」




 勢いよくななは立ち上がってそのまま外に出る。

 俺の副業はななの手伝い。自分が、自分しか出来ない仕事があるかどうかの確認のために、俺の世界での概念上での毎朝、ここに来ることにしている。

 しかし特にどれくらいここに滞在するかという決まりはない。

 とは言え、ななが不在の時に帰るってのも極まりが悪い。

 長く艶やかな髪の毛をなびかせながら社を出るななの後姿を見送った。




「……トリートメントとかしてるのかな。いや、そもそも女神ってもんは風呂に入ったりするのか?」




 まぁ体をきれいにできる魔法を使えば風呂の必要もないんだろうが……って、あいつのあの姿は仮の姿だっけか。

 本当の姿を見せながら仕事の手伝いを頼まれたら、俺、一目散に逃げるぞ、間違いなく。




「ただいまー。あー疲れた」




 早っ!

 今出たばっかりだろうがっ。




「面談室も時間あんまり流れないんだよね。待ち人結構いたから体感した時間はかなり長かったけど」

「何人どどんな話してきたんだよ?」

「えーと、魔法なんかない世界に生まれ変わりたいとか一般人になりたいとか、チート能力を持った魔王になりたいとか英雄になりたいとか、村人になりたいとかモンスターになりたいとか……。私と一緒に生活したい、なんてもの好きも何人かいたわね」




 プチ生活してるやつならここにいますが?




「で、転生だったらまだいいのよ。生まれ変わるってことは生まれ変わる先に親がいるわけだから。いきなり別の世界で生活したいっていう人が厄介なのよ。私が案内役にならなきゃいけないから」




「めんどくさそう……。そこの世界での常識とか知らなきゃ案内出来ないだろ」

「そーなのよ。ちょっと聞いてよ、こないだなんかねぇ……」




 あ、いかん。

 これ、酔っぱらいの管を巻く相手しなきゃならんやつだ。

 いつ終わるか分かんねぇぞこれ。

 ってか、これも報酬の一部になるんだろうか。

 増額されるとしても、神様の仕事の内輪話は聞きたくねぇ。

 こんな綺麗な顔がうんざりして歪んだ表情になって、鼻くそほじりかねないようなさぁ……。




「……ねぇ、聞いてる?!」

「……なんで神社の鳥居潜った後で、どっかの居酒屋で前後不覚に酔っぱらったような奴の愚痴聞かせられる気分になんなきゃなんねーんだよ」




 何か半開きした目でこっち睨んでくるんだが、なんなんだよ。




「南ぃ。今きれいな顔をゆがませて鼻くそほじるくらいに不貞腐れた顔、みたいなこと思わなかったぁ?」




 心を読むなバカ。

 こえぇよ。




「今度来るとき、酒とか持ってきてやるか?」

「いらないわよっ! そんなのは南の世界の神様にでも捧げといてなさいっ」




 それぞれの世界で崇められてる神仏とは別格らしい。

 まぁ別格だろうな。転生を司ってるんだから。




 そんな女神の愚痴聞かされて給料もらえるこの仕事。

 額がでかいから割はいいが……。

 そのうち手伝いなさいなんて言われたら……。

 人間が人間の転生先を決めるなんて、こっちの罪悪感半端ないんだけど?




 それだけは勘弁してください、と神様に縋るしかない。

 いや、直訴できる立場ではあるんだがな。
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