この僧侶、女子高生っぽい女神の助手 仕事は異世界派遣業

網野ホウ

文字の大きさ
36 / 44
第三章 三件目 異世界への転移、転生希望者へ一言

新たなお仕事 ~嫌な予感は当たるもので~

しおりを挟む
 まさかどこぞの商品のサービスセンター係みたいなことをやらされるとは思わなかった。

 転移予定者の希望を聞いて、なるべくそれに沿った転移先に同行する羽目になるとは。
 ななの魔術によって体にチップのようなものを埋め込まれた。
 転移者が転移先にある程度慣れたら、そのチップを頼りにななの家に帰還できるという仕組み。
 パスポートみたいなのを持たせることも考えてたみたいだったが、それをなくしたら帰れなくなるだろうから、だとさ。

 付き添いが必要ないパンフを用意した方がいいと思うんだがな。
 つーか、手回し早すぎねぇか? ななのやつ。

「はぁ?! その世界……っつーか、俺が住んでる世界のことだってすべて知ってるわけじゃねぇのに、なんで全く無縁の奴が行きたがってる俺とは無縁の別世界に付き添わなきゃならねぇんだよ!」
「細かいこと気にしないの。髪の毛なくなっちゃうわよ? っていうか、もうないし」
「剃ってるだけだ! アホウ!」
「それだけ南が文句を言う仕事よ? それを引き受けてくれたら、報酬もかなりのものになると思うけどなー」

 金はどんなにあっても困るということはない。

 そんな言葉は嘘である。
 だって、金をたくさん持ってることを他人に知られると、それを何とかして横取りしたいと思う奴も現れる。
 そういう奴に限ってなかなか諦めてくれないもんだからな。

 しかし必要な物ではある。あればあるほど、生きるために必要な物品の質を高めることも出来る。
 そして本業だけでは、その質を高めることは出来ず、生きるために必要な要素の一つである健康を維持することは難しい。
 ということで、報酬は大事である。
 雇い主は、人間の感覚から相当ずれている普通の神仏よりも格が違う女神とあらばなおさらだ。

 だから断じて安請け合いではない。
 俗世でのサビ残とか何とかとは違う。
 苦労した分報われるのである。

 だが、やってることは、はっきり言えば子守りも同然。
 俺が付き添いを頼まれたのは、俺の住んでいるところとは違う世界で自ら命を絶った、十才くらいの少年だった。
 彼がいた世界は、俺の世界のように魔法が存在しない、社会は人間の身によって形成された世界。
 彼の話によれば、そこでいじめを受け、それを苦にして自殺したようである。
 別世界でも命を絶つ以外に方法を思いつけないほどのいじめを受けたのかと悲しい気持ちになるが、だからと言って俺が出来ることと言えば、俺の知らない世界でそんな彼がある程度生活に慣れるまで付き添うこと。

 彼から離れるタイミングは俺に任せる、というななからの依頼。
 魔法や人間以外の種族が自治体を作っているこの世界で、俺の何が彼の役に立つというのか。
 まったくもって、やれやれである。

「で、なな……女神様から遣わされたわけだが……」
「あぁ。あのきれいな女神様からこうして気を遣われるなんて嬉しい限りだ。よろしく頼む。俺は……」

 何か横柄な感じだ。言葉遣いも碌にしっかり覚えてなかったのか。
 もっともそれを指導するのは俺の仕事の範疇じゃない。
「お前の名前とかは俺は知る必要はない。お前はこの世界の文字とか言葉は言えるんだろう?」

 彼は頷く。
「どうしたものか、この町の人たちの会話とか、話は分かるように聞こえてくるし、店の看板の文字も分かる。でも君の話しも分かるよ?」

 世界に固有名詞はない。俺が住む星には、地球という名前はあるのにな。
 前々から不思議に思ってたことの一つだ。
 そして今俺とこいつがいるこの都市、地名も知らない。
 こいつが一人前になるまで一緒に生活をしなければならない、という規則でもないし、俺が望めばすぐにななの家に戻れる。
 だから俺はこの町や地名の名前など知るつもりもない。
 そして俺は、そいつの名前も知るつもりもなかった。

「で、俺、これからどうしよう?」
「知らん」

 そいつは驚いて俺の方を見ている。

「お、お前、この世界での俺の案内役じゃ……」
「ただ付き添ってるだけ。案内役じゃないと何度言えば分かる」
「初めて聞いたよ!」

 ななも少しくらい説明しろよ。
 何でも俺に丸投げか?

「はぁ……。こんなんで俺、この世界でどうしろと……」
「どうもこうも、臨んだことを叶えやすい環境の世界って聞いたぞ? お前が女神様に臨んだことをこの世界でやり遂げる。ただそれだけだ」

 ななを『女神様』などと改まった呼び方をするのは、何かむずむずして落ち着かない。が、こいつにそんな俺の感情を理解してもらうつもりもない。
 この場限りの間柄なのだ。

「相談に乗ってくれてもいいだろー?」
「お前がこれから何をするつもりかも、そして今のお前の種族が何なのかも知る必要もないし知るつもりもないと思ってるんだがな」

 転移前は俺と同じ人間。
 魔法や魔物がいる世界に転移したいという希望を持っている。
 ななからはそう聞いた。

「他の情報は、南には特に必要ないと思うから言わないでおくね。伝えるとその人に情が湧くことだってあるだろうし」

 ななの気遣いに感謝である。

「この世界で、誰も敵わないほどの力を持つ魔王になりたいってお願いしたのに、誰も見向きもしないどころか、付き添いからも関心持たれないなんて……」

 ななの愚痴のあとは、ななの面談相手の愚痴かよ。
 何という面倒くさい副業だ……。
 愚痴を聞く、という特別報酬の項目はないものか。
 あるわけがないな。宝くじが当たるってことだけだからなぁ……。

「これじゃどこでどうしたらいいか分かんねぇよ」

 お前が分からないのに何で俺に答えを求めようとするんだ、まったく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...