拉致られて箱庭掃除をやらされてます。~きっと犯人は闇の組織に違いない

那珂川

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開戦2

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 ゴーレムは一体の損失も無く、田代達と帝国軍は呆気なく砦を抑えたことに戸惑っていた。
 自分達が予想していた以上にヴェズリー王国の騎士と一般魔術師の力量不足だったからだ。

 ゴーレムに手や足を潰された王国軍の騎士や傭兵は居たが帝国軍に治療を受け、死に至った者は居なかった。
 このことで王国軍所属の人間達の中に、今まで帝国人に関して聞かされていたことが本当だったのか疑問に思う者も出て来た。

 帝国人は野蛮人、血も涙も無い人非人で敵を残酷な方法で処理していく、侵略や併合した部族や国を恐怖政治で圧政している等と言った様なものだ。
 この教育を受けて来た王国人だからこそ、過去に帝国人を否応も無く連れ去り、甚振り売り払う所業が出来たのだ。
 現在砦に勤続していた騎士や一般魔術師の中には比較的歳が若く、当時の拉致に関わった者は居なかったが、話のネタには度々上がっていたので知っていた。
 その時は「帝国人の様な下等な人種は我等の糧になるぐらいが丁度いい」ぐらいの軽口を叩き合う様であったが、ゴーレムの圧倒的な力を見せ付けられ、しかも敵である自分達に治療まで施している姿に、自分達の方が惨めに思えた。
 見下していた敵国の技術、洗練された騎士達の動き、捕虜になった自分達への気遣い、どれを取っても見下して良いものでは無かった。
 与えられる食事も普段より量は少ないものの足る量であり、手足に拘束具は付けられていても理不尽な暴力は受けなかった。

 中には拘束具を着けたまま暴れた騎士も居たが、一瞬で帝国の騎士に抑えられ無力化させられていた。

「精霊術師様が来れば、お前達なんかあっという間にヤラれるぞ!」

 そう吠えた騎士の言葉に希望を見出す者も居たが、それが何時になるのか見当もつかない。
 以前はこの砦に王国最強戦力の氷結の精霊術師、そして金剛精霊術師や普通の精霊術師達が交代で来ていたが、それも無くなり、普通の精霊術師は使い物にならなくなっていったのを目で見ている。
 そして現在の国王は側妃に夢中で浪費も激しく、自分達の給料にも年々影響を及ぼしている状態で、尚且つ自分達だけが助かろうと金剛精霊術師団を王宮に留まらせている。
 自分達は捨て駒にされるのでは?と言う疑念が振り払えなかった。



「もっと暴れるかと思っていたたよ」

 定期的に伝魔鳥を飛ばしているマッシモが如月に言う。

「確かにな」

 如月は捕虜に食事を与えているのを眺めているとこだった。

「捕虜は帝国に移送するのか?」

「タナトス様の指示では、精霊術師が来るのにまだ余裕があるから、その間に魔術契約を受けさせよとのことだ。
 明日も朝から忙しくなるな」

「従属化させるんだっけ?それって奴隷みたいなもんか?」

 マッシモの言葉に如月は少し顔を顰めて質問してみる。

「奴隷化とは違うな。奴隷だと隷属された者の意思はかなり消極的になる。同じ様に命令には背けないけど従属化はそれが無いから。それに我が国では犯罪者以外を奴隷化することは禁じられている」

「え?奴隷が帝国にも居るのか??」

「あぁ、犯罪者のな。大抵が鉱山に送られるが、罪が軽い者は工場に送られて鉱山から掘り出された鉱物を精製したり、他の地区では色んな職業訓練受けたりしてるよ。罪を償ったら奴隷の身分から解放されることにはなってるけど………うーん言ってもいいのかな?」

 マッシモは悩み顔で言い淀む。

「カケルは今は騎士団所属になってるけど、戦争が終わったらどうするんだ?」

 話の変わりように如月は一瞬呆けるが、考える間も無く「帰れないし、これからも続ける」と答えた。

「じゃあ知っておいた方が良いかもしれない。犯罪を犯した者達は奴隷化された後、耳の奥に特定の微弱な魔力を発信する魔石を埋め込むんだ。小さい魔石だから人体に影響は無いらしい」

「は?」

「再犯防止の為と、又罪を犯した時に即座に人物確定、捕縛する為だよ。だから非人道的だと言うような目で見ないでくれ」

 如月はマッシモの言葉にそんな目で見てしまったのかと反省する。
 ここは異世界で、自分の世界のルールを押し付けていい訳が無い。

「ごめん、非難するつもりじゃなくて単純に驚いただけだから。それに犯罪者に反応する水晶玉みたいなのがあると思ってた」

 如月はラノベに出てくるシステムを思い出す。
 村や街に設置された水晶玉、若しくはそれに似た何かで入って来る者達が犯罪者かどうかを判断するのだ。
 それをマッシモに説明すると

「それ便利過ぎだな。人の素性が分かるなんて。まだ捕まってない奴等が戦々恐々としそうだ」

 と、笑った後に、研究所へ提案してみたらどうかと勧められた。


「まぁ、ここの捕虜達は従属化させるけど、王国との話し合いによっては早目に保釈されるかもしれないな」



 王宮から出された早馬に搭乗していた騎士は、この砦から王宮へ向かった者と同一人物である。
 ほぼ休憩も無しに王宮へ帝国軍の襲来を知らせに行ったにも関わらず、援軍も無しにたった一人、追い返された様なものだった。

「くそっ!何で俺だけなんだよ!国境軍はどうでもいいってのか!」

 憤りながら砦に向かうが、碌に休憩もさせてやれなかった馬のスピードは見る見るうちに落ちて行く。

「クソったれ!」

 馬を止め休憩を取ることにしたが、心が逸る一方だった。
 残虐な帝国人に今も仲間が拷問を受けているかもしれない。
 いや、もう既に何人も生きていないかも。
 次第に身体が震え上がる。

「お、俺が行っても戦力にならない、よな?」

 訓練も碌にせずにダラダラと砦で過ごしていた者には王国の騎士としての矜恃等無かった。

「そうだ、近くの村で援軍を待とう。それから一緒に行けばいい」

 男は村がある方に向かって馬を走らせる。
 漸く到着した男の目に入ってきたのは、あの日見た空から降りて来たゴーレムだった。


―――――――――――――――――――


ゴーレム「初めましてお嬢さん達」

村の奥様方「やだぁ、お嬢さんだなんて!うふふふ」
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