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ライドオン
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『勇者を助けますか?Yes/No』
久々のテレビ画面の質問を見たのは、朝からせっせと掃除をして昼ご飯食べた後も「綺麗に、綺麗に」と念じながら掃除を続行し、気付けば三時を時計が指していた時だった。
「勇者って、そういやこの前醤油関係の質問以来だな」
勇者か。
ちょっと悩んだ。
現在ローマンもマクセルも自分の世界に帰っている(仕事が溜まってるらしい)ので、この世界のことを確認するには眷属に聞くしかないのだが、誰に聞いて良いのかが分からない。
黒龍に聞いてみるが、自分の担当地区に勇者は居ないから分からないと言う。
つーか、担当地区あるのか、お前。
自分がこの世界の神になったと聞かされても未だに自覚出来てないし、やはり管理人兼掃除人の方がしっくりくるのだが。
しかし任されたからには一生懸命やるしかないので、テレビに質問し返してみることにした。
「その勇者って、良い人なのか?」
そう言うと画面にノイズが一瞬入った。
不味い質問だっただろうか。
しかし異世界物が流行ってた日本で、必ずしも勇者は善人だけでは無かった。
逆に魔王サイドの方が世界平和を願ってたりするものもあった。
だから、その勇者の為人を知らないのに関わって良いのか判断付かないのだ。
「その勇者が関わってる場所を担当してる眷属は居るのか?」
『南部を光龍、北部を風龍が担当しています。勇者に一時的関わったのは光龍ですが、呼び出しますか?Yes/No』
Yesを選択。
テレビ画面には『長考中』の文字が現れた。
「あれ?これって早く決断しなくても大丈夫な案件?」
『長考中―時間停止中―光龍到着まで後10分』
なるほど、良く分からん。
丁度10分後、庭にあの白い龍が現れた。
あれが光龍だったのか。
呼び鈴が鳴ったのでフルフェイスのヘルメットを被って迎え入れる。
「我が名は光龍、主、馳せ参じましたぞ」
恭しく神戸を垂れる白い長髪。神官を思わせる様な白い服。
顔を上げれば涼しげで細面の美青年だった。
「まだご尊顔を拝見することは叶いませぬか……」
「ヘルメット、脱いでも良いけど、大丈夫かな?それと光龍は普段からそんなに堅苦しい話し方なのか?」
ヘルメットを外そうとしたところ、小さいオッサンが光龍用にサングラスを持って来た。
と言うことはまだ眩しいんだな、俺の顔は。
光龍がサングラスを掛けたのを確認してヘルメットを脱ぐと、光龍は頬を染めて嬉しそうに笑った。サングラスが真っ黒だから口元しか見えないけどな。
「ちょっと聞きたいことがあって呼んだんだ。楽にしてくれ」
そう言いながら光龍を部屋に通す。
多分その時「白いな」って思ったからか、光龍の髪と服は一瞬にしてホワイトメタリックになった。
良いじゃん。
「は!?ワシの色がピカピカに!?」
「うん、綺麗だな」
思わずニンマリとしてしまう。
「眼鏡越しであれど、主のご尊顔を拝見出来て嬉しいですぞ。しかしこれは主の好みなのですかな?と言うか、何故黒龍が此処に?しかもそやつもピカピカじゃな」
ソファーに猫の様に丸くなっていた黒龍は「爺さん、久しぶり」と光龍に話し掛けている。
光龍、爺さんなのか。美青年なのに。
自分の変化に戸惑っている光龍には悪いが、質問させて貰おう。
「黒龍の話は追追。それより質問なんだが光龍、君は勇者を知っているか?知っているならどんな人物か教えて欲しいんだが」
「勇者?どの勇者ですかの?」
どの?勇者は複数居るのか?
「ワシの担当地区には四人の勇者が居りますのじゃ。異世界から召喚された様で、その内の一人を弟子として迎えて鍛えましての」
「ふむ、君の弟子になった勇者かどうかは分からないが、危機に陥っているらしい。それを救うかどうかの選択を迫られているんだ。
しかし俺は新米の管理人で、この世界にどんな国があるのか、何故異世界から勇者を召喚しなければならなかったのか全く分からないし、勇者達の為人を知らない。救った場合、この世界にどんな影響を与えるか判断出来ない。
大まかで良いから知ってることを教えて貰えないだろうか?」
「おお、主よ。ワシは貴方に仕えてる身。命令して下されば何でも致しますぞい!」
拳を握りスックと立ち上がった光龍の鼻息が荒くなる。
「甘いかもしれないが命令して無理強いさせるようなブラックな上司になりたくない。今は勇者の背景を知りたい」
光龍は居住まいを正すが、サングラスなので真剣さが微妙である。
「あ、飲み物と茶菓子を用意しよう。何が良い?」
「酒を……」
申し訳無さげに光龍はそう呟いた。
「いやぁ~~これが異世界の酒ですかの?喉越し爽やかでフルーティー、こんなに透明なのに酒精も強くて、あぁ、ワシは感動しとりますぞ!しかもこれはクラーケンですかな?……イカのシオカラ?酒のあてにピッタリで!」
「あ、うん。それでその帝国が勇者を召喚したのが隣国を攻める為だって言ったけど、そうなると帝国も勇者も侵略者ってことなのか?」
「そうですな。王国側からすれば侵略者ですな。ただ帝国には大義がありますのじゃ。現在の皇帝の姉が王国側に命を奪われましての、その仇を取るのが帝国人の総意なのですじゃ」
「なるほど。そういやその王国側の担当って誰なんだ?」
「精霊達ですじゃ」
「え?あのオーブ…じゃなくて、あの小さいフワフワしてる子達?」
俺は庭に視線を向ける。庭ではアレクとクロスが日向ぼっこをしていて、その周りをフワフワと精霊達が漂っている。
「担当者は精霊王達ですわい。主は庭で見ませんでしたかの?小さい精霊と一緒に主を見に来ておりましたがの?」
「もしかして、ぼや~と透けて見える人?」
「それですじゃ」
あれ、幽霊じゃなかったのかよ。オーブのことしか聞いてないぞ。
え?あの幽霊みたいな精霊に話聞かないといけないのか?
「主、精霊王達は王国に腹を立てておりますのじゃ。未だに酷使されている精霊がおりましての。」
それから俺は王国と精霊の関係を聞く為に、精霊王達を呼ぶことになった。
今目の前には風の精霊王が来ているのだが、やはりサングラスを掛けている。
「ほ、本日は、お日柄も良く、お、お呼び頂き光栄でしゅ!」
あ、噛んだ。
何かめっちゃ緊張してるんだけど。
「えーっと、楽にしてくれて構わない。飲みたい物とか食べたい物があれば出すから言ってくれ」
「いや、美味っ!なんですのん?これ?焼酎?美味っ!異世界から来た神さんは持ってるもんが違いますなぁ~流石!さす神!」
この世界の眷属は酒好きが多いのだろうか?
透き通っていた風の精霊王はほんのりピンクになっている。
「ほんで、王国?ウチらが担当した地区が王国になったんですけどね、精霊術師ちゅーのとウチらのパワーバランスが崩れてしまいましてん。それからですわ、小さい子ぉらが核まで傷付けられるようになったんわ」
「核?心臓みたいなものか?」
「人に例えればそうですなぁ。核が完全に壊れると精霊は消えてしまうんですわ。解放された子ぉらはこの浮島で養生しとりますけど、まだ解放されてへん子ぉらが何時までもつのやら」
光龍と精霊王の主観ではあるが、凡その背景は分かった。
だとすれば管理人である俺は精霊解放の為にすべき事を頑張らねばならない。
――――――――
髪が全て焼かれ、縮んだ皮膚が音を立てて切れていく。
その皮膚からはジワリと体液が滲み出て回復を促そうとするが、まるで伴わない。
火は消えているものの、身に付けていた防具は未だに熱を持ち、皮膚どころか内臓まで焼こうとしているのが分かる。
そう、如月にはまだ意識があった。
勇者の恩恵か何かは分からないが、瞼が焼けて剥き出しになった眼球には炭化して落ちた指先が微かに映っている。
何故自分は死なないのか、こんなに痛い思いをしているのに。死ねば楽になるのに。
声を出そうにもそれは叶わず、微かに出来る呼吸が余計に如月を痛め付けていた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い殺して
「ゆ、勇者殿!」
「ハイポーションは?誰か持ってないのか!?」
少し離れた場所で様子を偵察していた帝国軍の騎士は、精霊術師達が居なくなると、倒れている騎士達と如月の状態を確認する為に傍にやって来た。
「ぐっ、これは酷い」
「しかしまだ息があります」
如月は殺して欲しかった。
早く楽になりたかった。
喉からは少しの空気しか出ず、自分の意志を伝える術は無かった。
「隊長!あれ!あれは何ですか??」
筋状になった雲から一線、光が静かに如月に向かって降りてくるのを騎士達は眺めていた。
魔術での攻撃等では無いことは直ぐに理解した。
あまりにも暖かく柔らかく、美しい光だった。
如月の身体がその光に包まれると目に見えて再生が始まった。
炭化して崩れ落ちた指先も、爛れて引きつれた皮膚も、短めであったが艶のあった黒髪も、逆再生をみているかの様に元に戻っていった。
「き、奇跡だ!」
暖かい光の中で痛みから解放された如月はゆっくりと起き上がる。自分の手を見て涙が溢れてくる。
助かったのだ。
「キサラギ殿!あれを見て下さい!」
騎士の一人に促され空を眺めると、キラキラと光を反射させている光龍が、人を乗せて漂っていた。
「あれは光龍様!?」
「光龍様が助けに来られたのか!?あの黒い兜を被った方は??」
ザワりと騎士達が口々に疑問を放つが、光龍はそのまま何も言わずに雲の上に姿を消した。
如月はそれを呆然と見詰めることしか出来なかった。
久々のテレビ画面の質問を見たのは、朝からせっせと掃除をして昼ご飯食べた後も「綺麗に、綺麗に」と念じながら掃除を続行し、気付けば三時を時計が指していた時だった。
「勇者って、そういやこの前醤油関係の質問以来だな」
勇者か。
ちょっと悩んだ。
現在ローマンもマクセルも自分の世界に帰っている(仕事が溜まってるらしい)ので、この世界のことを確認するには眷属に聞くしかないのだが、誰に聞いて良いのかが分からない。
黒龍に聞いてみるが、自分の担当地区に勇者は居ないから分からないと言う。
つーか、担当地区あるのか、お前。
自分がこの世界の神になったと聞かされても未だに自覚出来てないし、やはり管理人兼掃除人の方がしっくりくるのだが。
しかし任されたからには一生懸命やるしかないので、テレビに質問し返してみることにした。
「その勇者って、良い人なのか?」
そう言うと画面にノイズが一瞬入った。
不味い質問だっただろうか。
しかし異世界物が流行ってた日本で、必ずしも勇者は善人だけでは無かった。
逆に魔王サイドの方が世界平和を願ってたりするものもあった。
だから、その勇者の為人を知らないのに関わって良いのか判断付かないのだ。
「その勇者が関わってる場所を担当してる眷属は居るのか?」
『南部を光龍、北部を風龍が担当しています。勇者に一時的関わったのは光龍ですが、呼び出しますか?Yes/No』
Yesを選択。
テレビ画面には『長考中』の文字が現れた。
「あれ?これって早く決断しなくても大丈夫な案件?」
『長考中―時間停止中―光龍到着まで後10分』
なるほど、良く分からん。
丁度10分後、庭にあの白い龍が現れた。
あれが光龍だったのか。
呼び鈴が鳴ったのでフルフェイスのヘルメットを被って迎え入れる。
「我が名は光龍、主、馳せ参じましたぞ」
恭しく神戸を垂れる白い長髪。神官を思わせる様な白い服。
顔を上げれば涼しげで細面の美青年だった。
「まだご尊顔を拝見することは叶いませぬか……」
「ヘルメット、脱いでも良いけど、大丈夫かな?それと光龍は普段からそんなに堅苦しい話し方なのか?」
ヘルメットを外そうとしたところ、小さいオッサンが光龍用にサングラスを持って来た。
と言うことはまだ眩しいんだな、俺の顔は。
光龍がサングラスを掛けたのを確認してヘルメットを脱ぐと、光龍は頬を染めて嬉しそうに笑った。サングラスが真っ黒だから口元しか見えないけどな。
「ちょっと聞きたいことがあって呼んだんだ。楽にしてくれ」
そう言いながら光龍を部屋に通す。
多分その時「白いな」って思ったからか、光龍の髪と服は一瞬にしてホワイトメタリックになった。
良いじゃん。
「は!?ワシの色がピカピカに!?」
「うん、綺麗だな」
思わずニンマリとしてしまう。
「眼鏡越しであれど、主のご尊顔を拝見出来て嬉しいですぞ。しかしこれは主の好みなのですかな?と言うか、何故黒龍が此処に?しかもそやつもピカピカじゃな」
ソファーに猫の様に丸くなっていた黒龍は「爺さん、久しぶり」と光龍に話し掛けている。
光龍、爺さんなのか。美青年なのに。
自分の変化に戸惑っている光龍には悪いが、質問させて貰おう。
「黒龍の話は追追。それより質問なんだが光龍、君は勇者を知っているか?知っているならどんな人物か教えて欲しいんだが」
「勇者?どの勇者ですかの?」
どの?勇者は複数居るのか?
「ワシの担当地区には四人の勇者が居りますのじゃ。異世界から召喚された様で、その内の一人を弟子として迎えて鍛えましての」
「ふむ、君の弟子になった勇者かどうかは分からないが、危機に陥っているらしい。それを救うかどうかの選択を迫られているんだ。
しかし俺は新米の管理人で、この世界にどんな国があるのか、何故異世界から勇者を召喚しなければならなかったのか全く分からないし、勇者達の為人を知らない。救った場合、この世界にどんな影響を与えるか判断出来ない。
大まかで良いから知ってることを教えて貰えないだろうか?」
「おお、主よ。ワシは貴方に仕えてる身。命令して下されば何でも致しますぞい!」
拳を握りスックと立ち上がった光龍の鼻息が荒くなる。
「甘いかもしれないが命令して無理強いさせるようなブラックな上司になりたくない。今は勇者の背景を知りたい」
光龍は居住まいを正すが、サングラスなので真剣さが微妙である。
「あ、飲み物と茶菓子を用意しよう。何が良い?」
「酒を……」
申し訳無さげに光龍はそう呟いた。
「いやぁ~~これが異世界の酒ですかの?喉越し爽やかでフルーティー、こんなに透明なのに酒精も強くて、あぁ、ワシは感動しとりますぞ!しかもこれはクラーケンですかな?……イカのシオカラ?酒のあてにピッタリで!」
「あ、うん。それでその帝国が勇者を召喚したのが隣国を攻める為だって言ったけど、そうなると帝国も勇者も侵略者ってことなのか?」
「そうですな。王国側からすれば侵略者ですな。ただ帝国には大義がありますのじゃ。現在の皇帝の姉が王国側に命を奪われましての、その仇を取るのが帝国人の総意なのですじゃ」
「なるほど。そういやその王国側の担当って誰なんだ?」
「精霊達ですじゃ」
「え?あのオーブ…じゃなくて、あの小さいフワフワしてる子達?」
俺は庭に視線を向ける。庭ではアレクとクロスが日向ぼっこをしていて、その周りをフワフワと精霊達が漂っている。
「担当者は精霊王達ですわい。主は庭で見ませんでしたかの?小さい精霊と一緒に主を見に来ておりましたがの?」
「もしかして、ぼや~と透けて見える人?」
「それですじゃ」
あれ、幽霊じゃなかったのかよ。オーブのことしか聞いてないぞ。
え?あの幽霊みたいな精霊に話聞かないといけないのか?
「主、精霊王達は王国に腹を立てておりますのじゃ。未だに酷使されている精霊がおりましての。」
それから俺は王国と精霊の関係を聞く為に、精霊王達を呼ぶことになった。
今目の前には風の精霊王が来ているのだが、やはりサングラスを掛けている。
「ほ、本日は、お日柄も良く、お、お呼び頂き光栄でしゅ!」
あ、噛んだ。
何かめっちゃ緊張してるんだけど。
「えーっと、楽にしてくれて構わない。飲みたい物とか食べたい物があれば出すから言ってくれ」
「いや、美味っ!なんですのん?これ?焼酎?美味っ!異世界から来た神さんは持ってるもんが違いますなぁ~流石!さす神!」
この世界の眷属は酒好きが多いのだろうか?
透き通っていた風の精霊王はほんのりピンクになっている。
「ほんで、王国?ウチらが担当した地区が王国になったんですけどね、精霊術師ちゅーのとウチらのパワーバランスが崩れてしまいましてん。それからですわ、小さい子ぉらが核まで傷付けられるようになったんわ」
「核?心臓みたいなものか?」
「人に例えればそうですなぁ。核が完全に壊れると精霊は消えてしまうんですわ。解放された子ぉらはこの浮島で養生しとりますけど、まだ解放されてへん子ぉらが何時までもつのやら」
光龍と精霊王の主観ではあるが、凡その背景は分かった。
だとすれば管理人である俺は精霊解放の為にすべき事を頑張らねばならない。
――――――――
髪が全て焼かれ、縮んだ皮膚が音を立てて切れていく。
その皮膚からはジワリと体液が滲み出て回復を促そうとするが、まるで伴わない。
火は消えているものの、身に付けていた防具は未だに熱を持ち、皮膚どころか内臓まで焼こうとしているのが分かる。
そう、如月にはまだ意識があった。
勇者の恩恵か何かは分からないが、瞼が焼けて剥き出しになった眼球には炭化して落ちた指先が微かに映っている。
何故自分は死なないのか、こんなに痛い思いをしているのに。死ねば楽になるのに。
声を出そうにもそれは叶わず、微かに出来る呼吸が余計に如月を痛め付けていた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い殺して
「ゆ、勇者殿!」
「ハイポーションは?誰か持ってないのか!?」
少し離れた場所で様子を偵察していた帝国軍の騎士は、精霊術師達が居なくなると、倒れている騎士達と如月の状態を確認する為に傍にやって来た。
「ぐっ、これは酷い」
「しかしまだ息があります」
如月は殺して欲しかった。
早く楽になりたかった。
喉からは少しの空気しか出ず、自分の意志を伝える術は無かった。
「隊長!あれ!あれは何ですか??」
筋状になった雲から一線、光が静かに如月に向かって降りてくるのを騎士達は眺めていた。
魔術での攻撃等では無いことは直ぐに理解した。
あまりにも暖かく柔らかく、美しい光だった。
如月の身体がその光に包まれると目に見えて再生が始まった。
炭化して崩れ落ちた指先も、爛れて引きつれた皮膚も、短めであったが艶のあった黒髪も、逆再生をみているかの様に元に戻っていった。
「き、奇跡だ!」
暖かい光の中で痛みから解放された如月はゆっくりと起き上がる。自分の手を見て涙が溢れてくる。
助かったのだ。
「キサラギ殿!あれを見て下さい!」
騎士の一人に促され空を眺めると、キラキラと光を反射させている光龍が、人を乗せて漂っていた。
「あれは光龍様!?」
「光龍様が助けに来られたのか!?あの黒い兜を被った方は??」
ザワりと騎士達が口々に疑問を放つが、光龍はそのまま何も言わずに雲の上に姿を消した。
如月はそれを呆然と見詰めることしか出来なかった。
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