冷徹公爵は、契約妻に亡き妻の愛を重ねる

白桃

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第四話「秘めた過去」

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 翌朝、レオンハルトは珍しく寝室で目を覚ました。アリアは、すでに身支度を終え、静かに本を読んでいる。その横顔は、穏やかで美しい。

「おはようございます」

 アリアがこちらを見て、微笑んだ。レオンハルトは、小さく頷き、寝台から起き上がった。

「今日は、領地を見て回りたいのですが、ご一緒しませんか?」

 アリアが遠慮がちに尋ねた。レオンハルトは、少し考え、頷いた。

「ああ、構わない」

 領地は、ベルンハルト公爵家が代々受け継いできた豊かな土地だ。レオンハルトは、領民たちの暮らしを視察し、問題があれば改善するように指示を出した。アリアは、熱心にレオンハルトの言葉に耳を傾け、時折質問をした。

「領民の方々は、あなた様をとても慕っていますね」

 視察を終え、屋敷に戻る馬車の中で、アリアが言った。レオンハルトは、窓の外を見ながら答えた。

「ああ、彼らは俺の大切な家族だ」

「家族、ですか?」

 アリアが驚いたように尋ねた。レオンハルトは、アリアを見た。

「そうだ。俺は、彼らを守るために生きている」

 その言葉に、アリアは何か言いたげな表情を浮かべたが、結局、何も言わなかった。

 屋敷に戻ると、執事のセバスチャンがレオンハルトに近づき、深刻な表情で言った。

「旦那様、エルネスト・グレイ様が、あなた様にお会いしたいと」

「エルネスト……何の用だ」

 レオンハルトは、眉をひそめた。エルネスト・グレイは、レオンハルトの領地を狙っている貴族だ。彼とは、以前から領地の権利を巡って対立していた。

「分かりません。しかし、ただならぬ様子で……」

 セバスチャンの言葉に、レオンハルトは迷ったが、会うことにした。

「アリア、部屋で待っていてくれ」

 レオンハルトはアリアに言い、応接室へと向かった。

 応接室に入ると、エルネスト・グレイが苛立った様子で室内を歩き回っていた。

「レオンハルト!貴様、一体どういうつもりだ!」

 エルネストは、レオンハルトを見るなり、怒鳴りつけた。

「何の事だ」

 レオンハルトが冷静に尋ねると、エルネストはレオンハルトに近づき、一枚の羊皮紙を叩きつけた。

「貴様、この証拠をどう説明する!」

 羊皮紙には、レオンハルトの領地で違法な取引が行われている証拠が記されていた。

「……」

 レオンハルトは、羊皮紙に目を通すと、表情を険しくした。

「これは、一体……」

「貴様が知らぬと言うのか!証拠は全て揃っている!貴様は、領民を食い物にし、私腹を肥やしていたのだ!」

 エルネストの言葉に、レオンハルトは激しく動揺した。そんなことをするはずがない。

「……そんなはずはない。俺は、領民を裏切るような真似はしていない」

「ならば、この証拠をどう説明する!貴様は、言い逃れなどできんぞ!」

 エルネストは、レオンハルトを激しく詰った。レオンハルトは、何も言い返せずに、ただ立ち尽くしていた。

 その時、応接室の扉が開き、アリアが入ってきた。

「レオンハルト様、一体何が……」

 アリアは、二人の様子を見ると、エルネストに近づき、羊皮紙を手に取った。

「……これは」

 アリアは、羊皮紙に目を通すと、レオンハルトを見た。

「レオンハルト様、これは一体……」

 アリアの問いかけに、レオンハルトは答えることができなかった。
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