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Scene.5
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「どこまで、我慢出来るかな?」
爪を立てたままグリグリ指を動かすと、柊一の顔が苦痛に歪む。
綺麗な顔って、痛みに耐えている時も綺麗なんだなぁ。
でも柊一の身体はその痛みさえ刺激の一つと受け止めているらしく、もう一方の手で摘んでいる突起がますますキュキュッと堅く尖ってくるのが指先に伝わってくる。
いやらしくって淫らな身体は、快感を全身で現してしまうらしい。
俺は堅く尖った乳首にも、きつく爪を立てた。
「やあっ!」
ビクンッと跳ね上がる身体と、一緒に上がる悲鳴。
その上擦った声が、なんというかモロに俺の下半身に直撃してくる。
俺は膝で強引に両足を割り開かせて、履いているズボンの前をくつろがせた。
当たり前だけど、この状態でそんな行動に出れば、その先に俺が何をする気なのかなんてのはあからさまなワケで。
自分の着衣をくつろがせる為に片手を使えば、柊一を拘束していられなくなる。
普通のマリオネットなら、ご主人様が「ソノ気」になったらおとなしくされるがままになるモノだが。
柊一は猛烈な勢いで抵抗をしてくる。
そりゃ、そうだろう。
ライティングに失敗している柊一にとって、俺は「ご主人様」ではないのだから。
ハッキリ言って、ただ強姦されているのと同じなんである。
なんとか俺から逃れて身を守ろうと、必死になるのは当たり前なのだ。
マリオネットは人間が便利に使えるように造られているから、人間よりもずっと運動能力が高い。
アクロバティックな格好をさせて、サディスティックな性行為に及ぶような趣味人を満足させるくらいだから、身体だって柔らかいし、力もヒグマ並みだとか聞く。
ヒグマに殴られたら人間なんてイチコロだろうが、そこは人間の狡賢いトコロで、マリオネットには「ロボット三原則」が適用されているから、人間に危害を加えることは出来ない。
そこ持ってきて「秘密のメイド」さんであるL-Typeは、基本的に「夜のご奉仕」機能の充実により、性的快感には絶対に逆らえないのだ。
俺は咄嗟に、柊一の男性器を握っていた手に力を込めた。
「いや……だっ!」
片足を掴んで俺の肩に担ぎ上げ、さらけ出された場所に俺は自身を押し進める。
柊一はしなやかな身体を思い切り仰け反らせた。
「や………っ!」
「……スゲ………」
絡みついてくる熱い内壁に、気が遠くなりそうになる。
白い肌に口唇を押し当てると、内壁はますます俺を煽るように締め付けた。
たまらない感触に、俺はそれこそケダモノの本能を剥き出しにして腰をグイグイ押しつけ、柊一の内側に己をねじ込む。
内壁には特別な加工がされているらしく、熱くて柔らかい肉襞のところどころに丸くてコリコリした堅い異物感があり、体内にねじ込むと目の前がチカチカしてくるぐらいの快感があった。
刺激に反応して柊一が締め付けてくると、それらが俺に当たってメチャメチャ気持ちいいのだ。
思わずそれらに自分を擦り付けるみたいに腰を前後に振れば、つまりは柊一のソコを激しく出入りさせているコトになる。
もちろんそれらの異物は柊一の身体にもとんでもない程の快感を与えるから、そんな勢いで出入りされてはたまったモノではないだろう。
柊一の口からは絶え間なく甘い悲鳴が上がり、白い肢体が陸に揚げられた小魚みたいにピチピチとはね回る。
ビクビクと震える度に、俺をねじ込まれている場所から甘い蜜が溢れだし、柊一の内腿はしとどに濡れていた。
覆い被さって白い肌を貪れば、俺の腹の辺りに柊一の堅く屹立した熱が触れる。
俺を飲み込まされている場所は、もうこれ以上は許して欲しいと懇願せんばかりにイカされ続けているのに対し、屹立しているこちらは件の金環によって一度も熱を解放出来ないまま何度も上り詰めそうな衝動だけを感じさせられていた訳だ。
「ひああっ!」
ほとんど力を込めずに触れただけなのに、柊一はそれだけでイッてしまいそうな悲鳴を上げる。
もっとも、結局はイケない訳だけれど。
「イキたい?」
耳元に囁いても、柊一は決して素直に頷きなんかしない。
「俺にお願いしなきゃ、リングを緩めてやれないって言ってるじゃん」
「ゲ……ス野郎!」
「つれないの」
散々柊一の中に熱を注ぎ込んだ俺は自分をそこから引き抜き、今度は柊一の上に屈み込んでリングの光るそれを舌先で弄んでみる。
念入りに根元から尖端にかけて舌と口唇で嬲り、蜜を溢れさせている花弁の奥に指を入れて乱暴にかき回す。
「や………っ! もう、やめ………っ! お………ねが……」
快感に悶え狂う柊一は、とうとう快感と口惜しさに啼きながら俺に許しを請うた。
リングを緩めてから、待ち望んだ刺激を与えると屈辱に身悶えながら熱を解放する。
「ああっ! ………あっ!」
その姿が、なんとも綺麗で。
「柊一を注文したヤツって、よっぽどエッチだったんだなぁ?」
こんなに反応のイイ身体をしているって事は、基本プログラムがそういう風に組まれているという事だから、つまり柊一を注文した主人(あるじ)はこういう戯れをするつもりで作った……という結論に結びつく。
俺がちょっと意地悪くそう言った瞬間、信じられないような事が起こった。
柊一が俺の横っ面をひっぱたいたのだ。
「い………てぇ………」
さすがに俺は、何が起こったのか即座に理解出来なかった。
三原則でIC回路がブロックされているマリオネットは「人間を傷つけてはならない」ってのが、何を差し置いても絶対的なはずなのだ。
もちろん、己が痛めつけられる事に快感を覚えるタイプの趣味人向けとか、D-Typeの教育向けプログラムなんかを搭載しているヤツで「体罰プログラム」搭載タイプなんかは、例外的にある程度、人間を叩けるようにはなっているけど。
しかしこんな風に…まるで「己の感情のままに、相手に手を上げる」なんて事が有り得る訳がない…はずなのだ。
呆然としている俺に向かって、紅潮した顔を怒りに歪めて柊一は俺を睨みつける。
「アイツを………悪く言うなっ!」
「な………んだって?」
俺を睨んでいた柊一が、今度はいきなり泣き出して。
「放せっ! ……汚い手で、俺に触るなっ!」
もがき、暴れて、必死になって俺の腕から逃げようと身を捩る。
その様子に、俺はますます驚いてしまった。
だって、マツヲさんはハッキリと「マリオネットは泣かない」と言い切った。
「ヤキモチを焼く事はあっても、泣かない」と。
でも、俺の目の前で柊一は泣いているし、俺の頬は柊一に叩かれてヒリヒリしている。
どうなってんだ?
「そういうけど、俺、金払って買ったんですけど?」
あんまり意味はないかもしれないけど、一応己の主張を口に出してみる。
すると、意外にも柊一はびっくりしたみたいな顔で俺に振り返った。
「ウソだっ!」
「ウソじゃありません。ちゃんと領収書もあります」
俺はモタモタと柊一の上から降りて、着衣を正してからソファに座り直した。
そしてズボンのポケットにねじ込んであった、新田店長から貰った「金1万円也」の領収書が添付されているマリオネットの登録証を、柊一の眼前に差し出してやる。
受け取った柊一は、ジイッと書類を見つめた。
「ウソだっ! アイツが、俺を売るなんて………」
「売ったのは持ち主じゃなくて、持ち主の借金のカタに売られたっぽいけど?」
「それにしたって、アイツが俺のコトを手放すもんかっ!」
「……じゃあ、訊くけど。前の持ち主のコト、覚えてるの?」
即答しようと口を開けて、柊一はハッとなった。
「顔も名前も思い出せないンでしょ?」
「でも、アイツは俺を売ったりなんかしない! 俺は今でもアイツの物だっ!」
激昂する柊一に、俺はどうしたものかと考えてしまった。
これはなかなかどうして、面倒な事態になったもんだ。
俺は新田店長の説明で、ご主人様と認識はされなくても「自分が以前、誰かに所有されていた」事も思い出せないのだとばっかり思っていたのだ。
しかし、どうやらこの様子だと「前の持ち主の個人情報」だけがスッポリ抜け落ちていて、他の事はちゃんと思い出せるようになっているらしい。
オマケに、マツヲさんが言う所の「予想外の行動」どころか、マツヲさんが「無い」と言い切っていたはずの感情が、どう見たって柊一にはあるみたいなのだ。
それは、店頭で見たマリンちゃんのあまりにわざとらしくプログラミングちっくなモノではなくて、フツーの人間なら対応に困ってしまう程のリアリティを持った…とてもじゃないけど相手をアンドロイドとかロボだとか思えないようなレベルの…だ。
書類を持った柊一の手が、微かに震えだして。
俺を睨みつけていた柊一は、やがて目線を外して顔を俯かせる。
そりゃ、そうだろう。
どんなにそれを主張した所で、マリオネットにはなんの権利もない。
マリオネットは「物」であって、人権がある訳でもなければ生命が尊重される訳でもない。
買った人間…即ち「オーナー」が、マリオネットの全てを握っている。
そして、柊一はその事をちゃんと理解しているんだろう。
とはいえ、そんなところでシクシク泣き出されてもなぁ………。
いくら格安だったとはいえ、金を払って買ったマリオネット相手に「後ろめたい」なんて感じるのはおかしな事だと思う。
しかしこのシチュエーションは、やっぱりなにか罪悪感めいた気分にさせられる訳で。
俺は、とりあえず立ち上がった。
逃げる…と言うとちょっと語感が悪いけど、実際いたたまれない気分になってしまったし、いつまでもここで柊一と並んで座っていたって仕方がない。
バスルームに向かい、簡単に汗と汚れを洗い流してから服を着る。
部屋に戻ると、さすがに泣くのは止めたようだったけれど、柊一はやっぱり先刻と同じ格好のままそこに座っていた。
「あのさぁ、とりあえず風呂入れば?」
他にかける言葉も見つけられずそう言うと、柊一は不審な顔で俺に振り返った。
「だから、そこでそうやってても仕方ないじゃん。これからの事を決めるにしても、ちょっと気分切り替えるのに風呂でも使ったら?」
渋々…といった様子で立ち上がった柊一は、俺が示した方へと進んでいく。
しばらくすると水音が聞こえてきたから、どうやら言われた通りにシャワーを使っているらしい。
俺は(無駄にますます散らかった)ソファの上から汚れ物などをひろって、洗濯籠に放り込む。
ついでに適当な服を引っ張り出して、それを脱衣所に置いておいた。
爪を立てたままグリグリ指を動かすと、柊一の顔が苦痛に歪む。
綺麗な顔って、痛みに耐えている時も綺麗なんだなぁ。
でも柊一の身体はその痛みさえ刺激の一つと受け止めているらしく、もう一方の手で摘んでいる突起がますますキュキュッと堅く尖ってくるのが指先に伝わってくる。
いやらしくって淫らな身体は、快感を全身で現してしまうらしい。
俺は堅く尖った乳首にも、きつく爪を立てた。
「やあっ!」
ビクンッと跳ね上がる身体と、一緒に上がる悲鳴。
その上擦った声が、なんというかモロに俺の下半身に直撃してくる。
俺は膝で強引に両足を割り開かせて、履いているズボンの前をくつろがせた。
当たり前だけど、この状態でそんな行動に出れば、その先に俺が何をする気なのかなんてのはあからさまなワケで。
自分の着衣をくつろがせる為に片手を使えば、柊一を拘束していられなくなる。
普通のマリオネットなら、ご主人様が「ソノ気」になったらおとなしくされるがままになるモノだが。
柊一は猛烈な勢いで抵抗をしてくる。
そりゃ、そうだろう。
ライティングに失敗している柊一にとって、俺は「ご主人様」ではないのだから。
ハッキリ言って、ただ強姦されているのと同じなんである。
なんとか俺から逃れて身を守ろうと、必死になるのは当たり前なのだ。
マリオネットは人間が便利に使えるように造られているから、人間よりもずっと運動能力が高い。
アクロバティックな格好をさせて、サディスティックな性行為に及ぶような趣味人を満足させるくらいだから、身体だって柔らかいし、力もヒグマ並みだとか聞く。
ヒグマに殴られたら人間なんてイチコロだろうが、そこは人間の狡賢いトコロで、マリオネットには「ロボット三原則」が適用されているから、人間に危害を加えることは出来ない。
そこ持ってきて「秘密のメイド」さんであるL-Typeは、基本的に「夜のご奉仕」機能の充実により、性的快感には絶対に逆らえないのだ。
俺は咄嗟に、柊一の男性器を握っていた手に力を込めた。
「いや……だっ!」
片足を掴んで俺の肩に担ぎ上げ、さらけ出された場所に俺は自身を押し進める。
柊一はしなやかな身体を思い切り仰け反らせた。
「や………っ!」
「……スゲ………」
絡みついてくる熱い内壁に、気が遠くなりそうになる。
白い肌に口唇を押し当てると、内壁はますます俺を煽るように締め付けた。
たまらない感触に、俺はそれこそケダモノの本能を剥き出しにして腰をグイグイ押しつけ、柊一の内側に己をねじ込む。
内壁には特別な加工がされているらしく、熱くて柔らかい肉襞のところどころに丸くてコリコリした堅い異物感があり、体内にねじ込むと目の前がチカチカしてくるぐらいの快感があった。
刺激に反応して柊一が締め付けてくると、それらが俺に当たってメチャメチャ気持ちいいのだ。
思わずそれらに自分を擦り付けるみたいに腰を前後に振れば、つまりは柊一のソコを激しく出入りさせているコトになる。
もちろんそれらの異物は柊一の身体にもとんでもない程の快感を与えるから、そんな勢いで出入りされてはたまったモノではないだろう。
柊一の口からは絶え間なく甘い悲鳴が上がり、白い肢体が陸に揚げられた小魚みたいにピチピチとはね回る。
ビクビクと震える度に、俺をねじ込まれている場所から甘い蜜が溢れだし、柊一の内腿はしとどに濡れていた。
覆い被さって白い肌を貪れば、俺の腹の辺りに柊一の堅く屹立した熱が触れる。
俺を飲み込まされている場所は、もうこれ以上は許して欲しいと懇願せんばかりにイカされ続けているのに対し、屹立しているこちらは件の金環によって一度も熱を解放出来ないまま何度も上り詰めそうな衝動だけを感じさせられていた訳だ。
「ひああっ!」
ほとんど力を込めずに触れただけなのに、柊一はそれだけでイッてしまいそうな悲鳴を上げる。
もっとも、結局はイケない訳だけれど。
「イキたい?」
耳元に囁いても、柊一は決して素直に頷きなんかしない。
「俺にお願いしなきゃ、リングを緩めてやれないって言ってるじゃん」
「ゲ……ス野郎!」
「つれないの」
散々柊一の中に熱を注ぎ込んだ俺は自分をそこから引き抜き、今度は柊一の上に屈み込んでリングの光るそれを舌先で弄んでみる。
念入りに根元から尖端にかけて舌と口唇で嬲り、蜜を溢れさせている花弁の奥に指を入れて乱暴にかき回す。
「や………っ! もう、やめ………っ! お………ねが……」
快感に悶え狂う柊一は、とうとう快感と口惜しさに啼きながら俺に許しを請うた。
リングを緩めてから、待ち望んだ刺激を与えると屈辱に身悶えながら熱を解放する。
「ああっ! ………あっ!」
その姿が、なんとも綺麗で。
「柊一を注文したヤツって、よっぽどエッチだったんだなぁ?」
こんなに反応のイイ身体をしているって事は、基本プログラムがそういう風に組まれているという事だから、つまり柊一を注文した主人(あるじ)はこういう戯れをするつもりで作った……という結論に結びつく。
俺がちょっと意地悪くそう言った瞬間、信じられないような事が起こった。
柊一が俺の横っ面をひっぱたいたのだ。
「い………てぇ………」
さすがに俺は、何が起こったのか即座に理解出来なかった。
三原則でIC回路がブロックされているマリオネットは「人間を傷つけてはならない」ってのが、何を差し置いても絶対的なはずなのだ。
もちろん、己が痛めつけられる事に快感を覚えるタイプの趣味人向けとか、D-Typeの教育向けプログラムなんかを搭載しているヤツで「体罰プログラム」搭載タイプなんかは、例外的にある程度、人間を叩けるようにはなっているけど。
しかしこんな風に…まるで「己の感情のままに、相手に手を上げる」なんて事が有り得る訳がない…はずなのだ。
呆然としている俺に向かって、紅潮した顔を怒りに歪めて柊一は俺を睨みつける。
「アイツを………悪く言うなっ!」
「な………んだって?」
俺を睨んでいた柊一が、今度はいきなり泣き出して。
「放せっ! ……汚い手で、俺に触るなっ!」
もがき、暴れて、必死になって俺の腕から逃げようと身を捩る。
その様子に、俺はますます驚いてしまった。
だって、マツヲさんはハッキリと「マリオネットは泣かない」と言い切った。
「ヤキモチを焼く事はあっても、泣かない」と。
でも、俺の目の前で柊一は泣いているし、俺の頬は柊一に叩かれてヒリヒリしている。
どうなってんだ?
「そういうけど、俺、金払って買ったんですけど?」
あんまり意味はないかもしれないけど、一応己の主張を口に出してみる。
すると、意外にも柊一はびっくりしたみたいな顔で俺に振り返った。
「ウソだっ!」
「ウソじゃありません。ちゃんと領収書もあります」
俺はモタモタと柊一の上から降りて、着衣を正してからソファに座り直した。
そしてズボンのポケットにねじ込んであった、新田店長から貰った「金1万円也」の領収書が添付されているマリオネットの登録証を、柊一の眼前に差し出してやる。
受け取った柊一は、ジイッと書類を見つめた。
「ウソだっ! アイツが、俺を売るなんて………」
「売ったのは持ち主じゃなくて、持ち主の借金のカタに売られたっぽいけど?」
「それにしたって、アイツが俺のコトを手放すもんかっ!」
「……じゃあ、訊くけど。前の持ち主のコト、覚えてるの?」
即答しようと口を開けて、柊一はハッとなった。
「顔も名前も思い出せないンでしょ?」
「でも、アイツは俺を売ったりなんかしない! 俺は今でもアイツの物だっ!」
激昂する柊一に、俺はどうしたものかと考えてしまった。
これはなかなかどうして、面倒な事態になったもんだ。
俺は新田店長の説明で、ご主人様と認識はされなくても「自分が以前、誰かに所有されていた」事も思い出せないのだとばっかり思っていたのだ。
しかし、どうやらこの様子だと「前の持ち主の個人情報」だけがスッポリ抜け落ちていて、他の事はちゃんと思い出せるようになっているらしい。
オマケに、マツヲさんが言う所の「予想外の行動」どころか、マツヲさんが「無い」と言い切っていたはずの感情が、どう見たって柊一にはあるみたいなのだ。
それは、店頭で見たマリンちゃんのあまりにわざとらしくプログラミングちっくなモノではなくて、フツーの人間なら対応に困ってしまう程のリアリティを持った…とてもじゃないけど相手をアンドロイドとかロボだとか思えないようなレベルの…だ。
書類を持った柊一の手が、微かに震えだして。
俺を睨みつけていた柊一は、やがて目線を外して顔を俯かせる。
そりゃ、そうだろう。
どんなにそれを主張した所で、マリオネットにはなんの権利もない。
マリオネットは「物」であって、人権がある訳でもなければ生命が尊重される訳でもない。
買った人間…即ち「オーナー」が、マリオネットの全てを握っている。
そして、柊一はその事をちゃんと理解しているんだろう。
とはいえ、そんなところでシクシク泣き出されてもなぁ………。
いくら格安だったとはいえ、金を払って買ったマリオネット相手に「後ろめたい」なんて感じるのはおかしな事だと思う。
しかしこのシチュエーションは、やっぱりなにか罪悪感めいた気分にさせられる訳で。
俺は、とりあえず立ち上がった。
逃げる…と言うとちょっと語感が悪いけど、実際いたたまれない気分になってしまったし、いつまでもここで柊一と並んで座っていたって仕方がない。
バスルームに向かい、簡単に汗と汚れを洗い流してから服を着る。
部屋に戻ると、さすがに泣くのは止めたようだったけれど、柊一はやっぱり先刻と同じ格好のままそこに座っていた。
「あのさぁ、とりあえず風呂入れば?」
他にかける言葉も見つけられずそう言うと、柊一は不審な顔で俺に振り返った。
「だから、そこでそうやってても仕方ないじゃん。これからの事を決めるにしても、ちょっと気分切り替えるのに風呂でも使ったら?」
渋々…といった様子で立ち上がった柊一は、俺が示した方へと進んでいく。
しばらくすると水音が聞こえてきたから、どうやら言われた通りにシャワーを使っているらしい。
俺は(無駄にますます散らかった)ソファの上から汚れ物などをひろって、洗濯籠に放り込む。
ついでに適当な服を引っ張り出して、それを脱衣所に置いておいた。
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