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新婚編
邪神様、本当に良い娘ですね、愛し子は
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あれから三日経つが悪夢にうなされる日々が続いていた。
あの光景が瞼を閉じても目に浮かぶ。
俺は精神的疲労と睡眠不足に陥っていた。
「ゆうた、目の下にクマができてるけど大丈夫」
「ああ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、ミツキ」
「滋養強壮の飲み物らしいから、もし良かったら飲んでみて。少しは良くなるかもしれないし」
らしい、のか。でもせっかく俺のために手に入れてくれたんだから無碍には断れないよな。
「うん、ありがとう、いただくよ」
差し出された飲み物は濃い茶色の液体だった。
なんとなく匂いを嗅いでみた。
ウェッ、臭っ、なんの臭いだこれは、だが今更要らないなんて言えない。
俺は息を止めて一気に喉に流し込んだ。
「ケホッケホッ、あ、ありがとう、ミツキ。なんか元気になったような気がする」
「え、そんなに効き目が早いの。そっか、なら良かった」
ううう、なんか体が熱くなってきた。
いや、これって精力剤じゃないのか、なんかムラムラしてきたし!
やばっ、すごい効き目だ。
「ミツキ、これ、どこで手に入れたの」
「あのね、街で元気になるものがないか探してたら、大きなお店でこれがおすすめだって言われて買ったの」
おい、どこの世界にミニスカ制服姿の少女に精力剤をすすめる馬鹿がいるんだよ、常識を考えろよな。
「そうなんだ。でも高かっただろ、ほんと、ありがとな」
「それがね。なんか、こんな若いのに苦労してるのねって、安くしてくれたんだ。なんの意味なのかは分からなかったけど、安くしてくれるならいいかなって、お礼を言って購入してきたの」
ブッ、なんだそれ。魔族って頭がおかしいのか、馬鹿なのか!
「ゆうた、大丈夫。はい、これで口を拭いて」
ミツキは布を取り出して手渡してくれた。
こんな幼気な少女になんて物を売りつけてくれるんだ。これは抗議してこないと駄目だな。
「ゆうたはいつも大変そうだね。なんかいつも頑張り過ぎてない。少しは気を抜いて休んだ方がいいと思うよ」
「そんなに無理してるつもりはないけど、そうなのかなぁ」
「少し離れたところから見てる私が言うんだから、そうなんだよ。ほんとは私も、ゆうたの手助けが出来たらいいんだけど、力不足でごめんね」
「なに言ってるんだよ。ミツキはいつも俺の事を助けてくれてるじゃないか。こうして心配してくれたり、身の回りの事を手伝ってくれたり、俺と遊んでくれたり、本当にいつも感謝してるんだぞ」
「もっと、ゆうたの力になりたいんだけどね。でも、そう言ってくれて少しは安心したかな」
ミツキがヴェールの騎士学校に通ってた頃は夜しか遊べなくて少し離れていたけど、休校になってからは出会った頃のように一緒にいる事が多くなった。
なんだかんだで歳も近いし、二人で何かしらして遊んでいる事が多い。主に立体四目並べとか。
それに剣と魔法の稽古も一緒に受けてるし、もしかしたら凛子やロザミア、セリーヌよりも最近は一緒にいる時間が長いかもしれない。
「そういえば大事な事を伝えるのを忘れてた。あのね、マルデル様がしばらく公演を中止するって。それと、もしかしたら明日にでもこの街を出るかもしれないって言ってたよ」
ん、やけに急だな。相談なしなんて珍しいな。
「なんか、ゆうたの体調がよくないのが理由らしいよ。そうエイル先生が言ってた」
「そっか、なんかみんなに迷惑掛けたな」
「そんな事はないよ。ゆうたが虫嫌いなのに頑張ってくれたって、みんな褒めてたよ」
相変わらず優しいなあ。
ずっと幼い頃から虐げられ隔離されて過ごしてきたのに、こんなにも純粋無垢に人を思いやれるなんてすごいよな。
さすがは水の大精霊様の愛し子だよ。
「ありがとう、ミツキ」
「ほんとの事を言っただけだから。あ、そうだ、ゆうたの好きな串焼きとエールも持ってきたんだ」
そう言ってミツキはマジック袋から串焼きが山盛りになった皿とエールを取り出してテーブルの上に並べた。
他にもパンやチーズの盛り合わせなど、たくさん用意してくれていた。
「はい、どうぞ。私もエールを飲んでみようかな」
ミツキは冷えたエールをグラスに入れて俺に差し出してくれた後、自分でグラスにエールを注ごうとしていた。
「待って、俺がエールを注いであげるよ」
俺はミツキが持つグラスにエールを注いで、二人で軽くグラスを合わせて乾杯した。
「あれ、ミツキってエール飲めたっけ」
「はじめてだよ。うん、これが大人の味なんだね。思ってたよりは美味しいかな」
そう言って照れくさそうにミツキは笑った。
そのミツキの笑顔に癒されながら、俺は美味しい食事の時間をミツキと二人で過ごした。
久しぶりだな、ミツキとこんな風に過ごすのは。
けど、さっきの精力剤のせいで、なんか余計に酔ってきたような気もする。
ミツキの迷惑になるような間違いを起こさないように気をつけないとな。
ほんと、美味しい料理に、美味しいお酒だな。
ああ、なんか久々にゆっくり落ち着いて食事をしてるよ。
ミツキに感謝だな。ありがとう。
◇
クロ、どう、寝てる。
うん、仲良く寝てるよ。まるで兄妹みたい。
ま、マルデル様、やっぱりこんなのは。
もう、ヒルデはほんと、頭が堅いんだから。
あ、ほんとだ。もうミツキったら、こんな安心した顔しちゃって。
でしょ、なんか見てるとほっこりするね。
悠太が色恋なしでも、こんな風になるのですね。
な、なんか悔しいっす。私も一緒に寝たいのに。
ロータにはしばらく無理かもしれませんね。
スクルド姉様、ひどいですよ。
ミツキももう少し積極的にいけばいいのに。
ロザミア、それは彼女には無理ですよ。
そうね、外で男を押し倒すなんて、あなたにしか無理ね。
凛子様、わ、私は、
あ、マチルダもロザミアと同じ穴のムジナよね。
凛、私は違うから。
静かに、そんなに騒いでたら起きちゃうでしょ。
ミツキの初恋、実ればいいね。
クロ、私は愛の女神だよ。任せてちょうだい。
でも、悠太君は大丈夫なのでしょうか。
セリーヌ、一人も九人もたいして違わないでしょ。大丈夫だよ。
いや、全然違うと思うよ、フレイヤ。
と、とにかく、私達は二人をあたたかく見守りましょう。
そうだね、うまくいくといいね。
あの光景が瞼を閉じても目に浮かぶ。
俺は精神的疲労と睡眠不足に陥っていた。
「ゆうた、目の下にクマができてるけど大丈夫」
「ああ、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう、ミツキ」
「滋養強壮の飲み物らしいから、もし良かったら飲んでみて。少しは良くなるかもしれないし」
らしい、のか。でもせっかく俺のために手に入れてくれたんだから無碍には断れないよな。
「うん、ありがとう、いただくよ」
差し出された飲み物は濃い茶色の液体だった。
なんとなく匂いを嗅いでみた。
ウェッ、臭っ、なんの臭いだこれは、だが今更要らないなんて言えない。
俺は息を止めて一気に喉に流し込んだ。
「ケホッケホッ、あ、ありがとう、ミツキ。なんか元気になったような気がする」
「え、そんなに効き目が早いの。そっか、なら良かった」
ううう、なんか体が熱くなってきた。
いや、これって精力剤じゃないのか、なんかムラムラしてきたし!
やばっ、すごい効き目だ。
「ミツキ、これ、どこで手に入れたの」
「あのね、街で元気になるものがないか探してたら、大きなお店でこれがおすすめだって言われて買ったの」
おい、どこの世界にミニスカ制服姿の少女に精力剤をすすめる馬鹿がいるんだよ、常識を考えろよな。
「そうなんだ。でも高かっただろ、ほんと、ありがとな」
「それがね。なんか、こんな若いのに苦労してるのねって、安くしてくれたんだ。なんの意味なのかは分からなかったけど、安くしてくれるならいいかなって、お礼を言って購入してきたの」
ブッ、なんだそれ。魔族って頭がおかしいのか、馬鹿なのか!
「ゆうた、大丈夫。はい、これで口を拭いて」
ミツキは布を取り出して手渡してくれた。
こんな幼気な少女になんて物を売りつけてくれるんだ。これは抗議してこないと駄目だな。
「ゆうたはいつも大変そうだね。なんかいつも頑張り過ぎてない。少しは気を抜いて休んだ方がいいと思うよ」
「そんなに無理してるつもりはないけど、そうなのかなぁ」
「少し離れたところから見てる私が言うんだから、そうなんだよ。ほんとは私も、ゆうたの手助けが出来たらいいんだけど、力不足でごめんね」
「なに言ってるんだよ。ミツキはいつも俺の事を助けてくれてるじゃないか。こうして心配してくれたり、身の回りの事を手伝ってくれたり、俺と遊んでくれたり、本当にいつも感謝してるんだぞ」
「もっと、ゆうたの力になりたいんだけどね。でも、そう言ってくれて少しは安心したかな」
ミツキがヴェールの騎士学校に通ってた頃は夜しか遊べなくて少し離れていたけど、休校になってからは出会った頃のように一緒にいる事が多くなった。
なんだかんだで歳も近いし、二人で何かしらして遊んでいる事が多い。主に立体四目並べとか。
それに剣と魔法の稽古も一緒に受けてるし、もしかしたら凛子やロザミア、セリーヌよりも最近は一緒にいる時間が長いかもしれない。
「そういえば大事な事を伝えるのを忘れてた。あのね、マルデル様がしばらく公演を中止するって。それと、もしかしたら明日にでもこの街を出るかもしれないって言ってたよ」
ん、やけに急だな。相談なしなんて珍しいな。
「なんか、ゆうたの体調がよくないのが理由らしいよ。そうエイル先生が言ってた」
「そっか、なんかみんなに迷惑掛けたな」
「そんな事はないよ。ゆうたが虫嫌いなのに頑張ってくれたって、みんな褒めてたよ」
相変わらず優しいなあ。
ずっと幼い頃から虐げられ隔離されて過ごしてきたのに、こんなにも純粋無垢に人を思いやれるなんてすごいよな。
さすがは水の大精霊様の愛し子だよ。
「ありがとう、ミツキ」
「ほんとの事を言っただけだから。あ、そうだ、ゆうたの好きな串焼きとエールも持ってきたんだ」
そう言ってミツキはマジック袋から串焼きが山盛りになった皿とエールを取り出してテーブルの上に並べた。
他にもパンやチーズの盛り合わせなど、たくさん用意してくれていた。
「はい、どうぞ。私もエールを飲んでみようかな」
ミツキは冷えたエールをグラスに入れて俺に差し出してくれた後、自分でグラスにエールを注ごうとしていた。
「待って、俺がエールを注いであげるよ」
俺はミツキが持つグラスにエールを注いで、二人で軽くグラスを合わせて乾杯した。
「あれ、ミツキってエール飲めたっけ」
「はじめてだよ。うん、これが大人の味なんだね。思ってたよりは美味しいかな」
そう言って照れくさそうにミツキは笑った。
そのミツキの笑顔に癒されながら、俺は美味しい食事の時間をミツキと二人で過ごした。
久しぶりだな、ミツキとこんな風に過ごすのは。
けど、さっきの精力剤のせいで、なんか余計に酔ってきたような気もする。
ミツキの迷惑になるような間違いを起こさないように気をつけないとな。
ほんと、美味しい料理に、美味しいお酒だな。
ああ、なんか久々にゆっくり落ち着いて食事をしてるよ。
ミツキに感謝だな。ありがとう。
◇
クロ、どう、寝てる。
うん、仲良く寝てるよ。まるで兄妹みたい。
ま、マルデル様、やっぱりこんなのは。
もう、ヒルデはほんと、頭が堅いんだから。
あ、ほんとだ。もうミツキったら、こんな安心した顔しちゃって。
でしょ、なんか見てるとほっこりするね。
悠太が色恋なしでも、こんな風になるのですね。
な、なんか悔しいっす。私も一緒に寝たいのに。
ロータにはしばらく無理かもしれませんね。
スクルド姉様、ひどいですよ。
ミツキももう少し積極的にいけばいいのに。
ロザミア、それは彼女には無理ですよ。
そうね、外で男を押し倒すなんて、あなたにしか無理ね。
凛子様、わ、私は、
あ、マチルダもロザミアと同じ穴のムジナよね。
凛、私は違うから。
静かに、そんなに騒いでたら起きちゃうでしょ。
ミツキの初恋、実ればいいね。
クロ、私は愛の女神だよ。任せてちょうだい。
でも、悠太君は大丈夫なのでしょうか。
セリーヌ、一人も九人もたいして違わないでしょ。大丈夫だよ。
いや、全然違うと思うよ、フレイヤ。
と、とにかく、私達は二人をあたたかく見守りましょう。
そうだね、うまくいくといいね。
応援ありがとうございます!
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