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ルアナ・クリストフ
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「彼は私の運命の人だわ!」
・・・えっ?
(この声まさか……いや…そんな……)
混乱する頭をそちらに向けると、そこには頬を上気させたマノンが立っていた。
「はぁ?」
ルアナは驚きで取り繕うのも忘れ、間の抜けた声を出していた。
幸いなことにざわめきで、その声を拾う者はいなかったが。
「ちょ……何言ってるんだ!君は俺の番だろ?」
ジョエルが慌ててマノンに詰め寄るが、彼女はノアから視線をそらさない。
場は騒然となり、彼を連れてきた教師もどうしたらいいのか分からずオロオロしていた。
そんな中ノアは、彼女を一瞥するだけで、興味ないと言わんばかりの態度を示した。
(あら?)
仮にも番と主張する相手に対して、あまりにも素っ気ない。
ルアナがそのまま見ていると、ふと此方を向いた彼と視線が合った。
!!!
何故かノアは惚けるような笑みでルアナを見てきたので、彼女の頬は一気に赤くなった。
それを誤魔化すように、ルアナは慌てて下を向いた。
(な……な…何で…)
混乱する彼女にノアは近づくと、「君にどうしても会いたかったんだ」と誤解を生みそうな発言をし、場は更に混乱した。
そんな二人の様子をマノンは睨み付けるように見ていた─・・・
◇
「モルガントに行く気はあるか?」
ノアが転校してきたその日の夜、父に呼び出されたルアナは、唐突に言われた言葉に驚いた。
「えっと…それは留学ということですか?」
「いや…実は彼方のルーベルト侯爵家より縁談が来てな…」
「一応…私はまだ婚約者がいる身なんですけど」
「もちろん彼方もそれを知っているし、お前とジョエルの仲も知っている……」
「なるほど……」
「私としてはこれを期に婚約を破棄して、ルーベルトを選ぶのもいいと思う。モルガントと国交が出来るのは国として喜ばしいことだが、何より彼方がお前を望んでいるからだ……幸せな結婚を望むのは親として当然だろ?」
「……少し考えさせてください」
「…………」
「まだジョエルに気持ちがあるとかではなくて、ルーベルト様の人となりを知りたいと……」
「そうか……」
ルアナの前向きな返事に、父は優しい顔で頷いた。
部屋へ戻った彼女は、今日会ったノアの事を考えていた。
初めて会ったはずなのに、自分に向けてきたあの微笑み─思い出してまた顔が赤くなる。
(☆#@◇&~~~)
異性にあんな顔で見られたことがないルアナは、恥ずかしくなりベッドの上で足をバタつかせた。
(どうせジョエルとは婚約破棄する予定だったんだもの、マノンという問題はあるけれど、今日のあの態度なら大丈夫……よね?)
彼女の言った番発言を思い出し、冷静になったルアナは、マノンの言葉の意味が気になった。
(彼女の番はジョエルでしょう?何故あんなことを……)
次の日学園に行くと、ノアが門のところで待っていた。
「あ……」
「おはよう」
「お…おはようございます」
「もしよければ今日一緒に昼ご飯でもどうかなと思って…」
はにかみながら言う彼に、「はい」とルアナも小さく答えた。
それから二人並んで教室に入ると、いつもはルアナに近寄りもしないマノンが、「ノア様!」と満面の笑みで走りよってきた。
ちらりと見た彼の顔には、眉間に皺が寄っており、さっきまでの優しい顔と違い、不機嫌を隠しもしないものになっていた。
「君に名で呼ぶ許可は出していない」
「そんな……私たち番じゃないですかぁ」
涙目になる彼女を無視して、ノアは教室を見渡し、此方を見ていたジョエルを見つけると「君の彼女だろ?きちんと捕まえておいてくれないか?」と冷たい声で告げた。
慌てて此方に来るジョエルに見向きもせずに、彼女は「彼じゃなかったんです!」と大きな声を出した。
「マノン!」
ジョエルが彼女の腕をつかみ、まだ何か言おうとするのを阻止する。
そこにタイミングよく先生が現れ、騒動は強制的に終わったが、場の雰囲気は終始気不味いものだった。
・・・えっ?
(この声まさか……いや…そんな……)
混乱する頭をそちらに向けると、そこには頬を上気させたマノンが立っていた。
「はぁ?」
ルアナは驚きで取り繕うのも忘れ、間の抜けた声を出していた。
幸いなことにざわめきで、その声を拾う者はいなかったが。
「ちょ……何言ってるんだ!君は俺の番だろ?」
ジョエルが慌ててマノンに詰め寄るが、彼女はノアから視線をそらさない。
場は騒然となり、彼を連れてきた教師もどうしたらいいのか分からずオロオロしていた。
そんな中ノアは、彼女を一瞥するだけで、興味ないと言わんばかりの態度を示した。
(あら?)
仮にも番と主張する相手に対して、あまりにも素っ気ない。
ルアナがそのまま見ていると、ふと此方を向いた彼と視線が合った。
!!!
何故かノアは惚けるような笑みでルアナを見てきたので、彼女の頬は一気に赤くなった。
それを誤魔化すように、ルアナは慌てて下を向いた。
(な……な…何で…)
混乱する彼女にノアは近づくと、「君にどうしても会いたかったんだ」と誤解を生みそうな発言をし、場は更に混乱した。
そんな二人の様子をマノンは睨み付けるように見ていた─・・・
◇
「モルガントに行く気はあるか?」
ノアが転校してきたその日の夜、父に呼び出されたルアナは、唐突に言われた言葉に驚いた。
「えっと…それは留学ということですか?」
「いや…実は彼方のルーベルト侯爵家より縁談が来てな…」
「一応…私はまだ婚約者がいる身なんですけど」
「もちろん彼方もそれを知っているし、お前とジョエルの仲も知っている……」
「なるほど……」
「私としてはこれを期に婚約を破棄して、ルーベルトを選ぶのもいいと思う。モルガントと国交が出来るのは国として喜ばしいことだが、何より彼方がお前を望んでいるからだ……幸せな結婚を望むのは親として当然だろ?」
「……少し考えさせてください」
「…………」
「まだジョエルに気持ちがあるとかではなくて、ルーベルト様の人となりを知りたいと……」
「そうか……」
ルアナの前向きな返事に、父は優しい顔で頷いた。
部屋へ戻った彼女は、今日会ったノアの事を考えていた。
初めて会ったはずなのに、自分に向けてきたあの微笑み─思い出してまた顔が赤くなる。
(☆#@◇&~~~)
異性にあんな顔で見られたことがないルアナは、恥ずかしくなりベッドの上で足をバタつかせた。
(どうせジョエルとは婚約破棄する予定だったんだもの、マノンという問題はあるけれど、今日のあの態度なら大丈夫……よね?)
彼女の言った番発言を思い出し、冷静になったルアナは、マノンの言葉の意味が気になった。
(彼女の番はジョエルでしょう?何故あんなことを……)
次の日学園に行くと、ノアが門のところで待っていた。
「あ……」
「おはよう」
「お…おはようございます」
「もしよければ今日一緒に昼ご飯でもどうかなと思って…」
はにかみながら言う彼に、「はい」とルアナも小さく答えた。
それから二人並んで教室に入ると、いつもはルアナに近寄りもしないマノンが、「ノア様!」と満面の笑みで走りよってきた。
ちらりと見た彼の顔には、眉間に皺が寄っており、さっきまでの優しい顔と違い、不機嫌を隠しもしないものになっていた。
「君に名で呼ぶ許可は出していない」
「そんな……私たち番じゃないですかぁ」
涙目になる彼女を無視して、ノアは教室を見渡し、此方を見ていたジョエルを見つけると「君の彼女だろ?きちんと捕まえておいてくれないか?」と冷たい声で告げた。
慌てて此方に来るジョエルに見向きもせずに、彼女は「彼じゃなかったんです!」と大きな声を出した。
「マノン!」
ジョエルが彼女の腕をつかみ、まだ何か言おうとするのを阻止する。
そこにタイミングよく先生が現れ、騒動は強制的に終わったが、場の雰囲気は終始気不味いものだった。
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