アストレイヴ 〜中二病召喚計画〜

よしまさ

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第72話 記憶修復ロスの見解

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第72話 記憶修復ロスの見解

No.04 ラボ室。

プログラミング班の蓮、デバッグ班のエマ、そしてAI行動班のガブリエラ。
三人は並んでモニターを見つめながら、静かに会話を交わしていた。

モニターには、迅たちが旅を続ける様子――つい先ほどまでの会話シーンが映し出されている。

「なあ……リスポーン時に、記憶修復ロスが起こるって話、マジなのか?」

蓮が画面から目を離さずに問いかける。

「ああ、それね」

エマはため息まじりに頷いた。

「一時期、裏で問題になってて、私たちで調査してたの。厳密に言えば、記憶――いわゆるニューロン自体が消失するわけじゃないのよ」

彼女は指先で宙をなぞるように続ける。

「問題なのは、ニューロン同士をつなぐシナプス。その連携があまりにもミクロな単位だから、修復時にズレが生じて“修復ロス”が起きるって、シミュレーション結果で出たの」

「それって……」

「日常生活でも起こり得るレベルの現象よ。特定の記憶が思い出せなくなるとか、そういうのと同じ。関連する情報に触れれば、シナプスの連携も自然と復活するわ」

エマは淡々と語る。

「だから上層部も、掘り下げるほどの問題とは判断しなかったし、実際、そういうクレームも入ってこなかった」

だが、蓮は納得していない様子で口を開く。

「……でもさ。転生者は現実世界に戻れない。つまり、シナプスを再連携させる“きっかけ”が与えられないってことだよな」

その言葉に、空気が一瞬だけ重くなる。

「結果として、記憶が抜け落ちた状態が続いて……そのまま固定される、と」

「しかも」

今度はガブリエラが口を挟んだ。

「前衛職や自爆スキル持ちのプレイヤーだった場合、リスポーン回数が多くなる。つまり、その記憶修復ロスを引き当てる確率も、比例して上がるってことか……」

「ええ」

エマは小さく頷く。

「ゲーム内での記憶は残るから、プレイ自体に支障はない。でも……それって……」

蓮が言葉を引き取る。

「NPC化……だよな……」

その単語が、ラボ室に重く落ちた。

「……どうする?」

沈黙を破ったのはガブリエラだった。

「次の議題として、会議に挙げてみる?」

エマは少し考え込むように視線を落とす。

「どうだろう……。前に問題になったとき、生体影響調査チームが、発生頻度を限りなくゼロに近づける調整を、密かにアップデートに組み込んだの」

「それ以上に悪化する可能性は低い、って判断だったわ」

「それに……」

エマは続ける。

「この情報が万が一、世間に漏れた場合、このゲームに対するネガティブイメージがどれほど大きくなるか。それを、上層部は一番懸念してた」

ガブリエラは肩をすくめた。

「……なら、厳しいわね」

「結局さ」

蓮は苦笑しながら言った。

「迅君が、何とかしてくれるのを見守るしかないか……」

「そうね」

エマも同意する。

「もしかしたら、もう何か糸口を見つけているのかもしれないし」

ガブリエラは、モニターに映る迅たちを見つめながら微笑んだ。

「親友の記憶を取り戻す旅、ね。……見ものだわ」

モニターの中で進む三人の旅は、知らず知らずのうちに運営側の期待までも背負うことになっていた。

だがそんな事情など露ほども知らず、彼らはただ、自分たちにできることを一つひとつこなしていくのだった。
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