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完結
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梅雨に入り、街の人たちはどこか憂鬱な雰囲気を漂わせていた。
雨、人から嫌われている天気だけど、僕は雨が大好きだ。
雨の音を聞いていると心が落ち着いてくる。
雨と言うのは、落ち込んでいるときは一緒に泣いてくれているみたいで、気分が晴れやかな時は雨音を奏でながら一緒に喜んでくれている。
そんな感じがたまらなく好きなのだ。
そして今日はおばあちゃんと紫陽花を見るために公園に来ていた。
「やっと一緒にでかけれたね、本当お互いに大変だったね」
「お互い?私はずっと元気だったし、あなたが大変だったのよ」
おばあちゃんは笑いながらそう言った。
そういえばおばあちゃんが亡くなったことは無かったことになっていたんだった。
「そういえば昔、雨の日あなた私に聞いたこと覚えてる?」
「なんか聞いたっけ?」
「やっぱり覚えてないか、あなたは死んでいるカタツムリを見つけて、死んだらどこに行くのって聞いたことがあるのよ。そして、私は死んだらどこにも行かない。ただ消えるだけよって言ったらあなた泣き出したのよ」
「そんなことあったっけ?」
僕は全然覚えていなかった。
「でも、今は消えるだけって思わなくなったの。
もし、死んだとしても、生きている人たちが死んでいった人の事を思ってあげることで、心の中に死んでいった人たちの事が思い浮かぶでしょう?
それって、死んでいった人たちがこの世界を生きた証になると思うの。そうやって思ってくれる人達がいる間は記憶の中で生き続けるんじゃないかって。」
「なるほどね、亡くなった人を思っている限り、思う人の心で生きているってことか。
なんとなくわかる気がする。こういう事って言葉では上手く例えれないよね」
「だから、もしね、私が死んだ時は悲しまないでほしいの、あなたが私を思っていてくれている間はずっとあなたのそばにいるから」
「どうしたの、縁起でもない」
おばあちゃんは僕の言葉に耳を傾けずに話し続けた。
「まぁ、でもねやっぱり大切な人と別れるのに悲しまないって無理な話だとは思うわ。
とても辛いことだから。
でも、別れ際の悲しみのデカさっていうのはね、その人に対しての愛の大きさでもあるのよ。
とても大事な人ほど別れはとても辛いの。
だから、私が死んだとき、あなたが感じる辛さってのは受け入れられない辛さかもしれない、でもその辛さを受け入れないのは私を大事に思っている気持ちも受け入れないのと同じだから、ゆっくり、時間をかけて受け入れてほしい」
「どうしたんだよいきなり、言いたいことはわかるせど今話すことでも無いよ。」
おばあちゃんは僕の目をみて、深呼吸をして言った。
「あなた、スイッチ使ったでしょう」
僕は頭が真っ白になった。
なんで、知っているの?
どういうこと?
「私のもとに手紙とスイッチが届いたのよ。
手紙には私が一度死んだこと、そしてあなたが私を生き返らせてくれた事が書いてあった。
そして、あなたが代償として死ぬことも。
私はあなたが死ぬと知って迷わずスイッチを押したわ。
代償はきっと私の命。
でもね、私はもう年だしこの先長くないから貴方に譲るわ。
それとね、私より先に死なれると私の人生不幸で閉じてしまうから、それだけは嫌なの。
あなたを育て始めてから私の人生の全てはあなたなの。だから、生きなさい。」
僕は話を理解するのに時間がかかった。
「待ってよ、僕にとってもおばあちゃんが全てだ。
だから、僕もおばあちゃんに死なれたら困る!」
「あなたの人生はこれからよ、今は私が全てであっても、いずれ貴方にはいい女性が見つかって、子供もできる、その時家族のために生きなさい。そして、これだけは覚えておいて。人生で辛いことがあっても死ぬときまで幸せか、不幸なのかは決めてはだめ。
生きている限り、どんな人生になるかなんて誰にもわからない。だから、どんなに辛くても死ぬときに幸せと思える人生を歩みなさい。」
「待ってよ、そんなこと急に言われたって俺はおばあちゃんなしでどうやっていきればいいの?
この先また、僕は一人になるの?そんなの無理だ!
そんなこと・・・・・言わないでくれ・・・・」
僕は傘を持つ気力も無くなり、雨に打たれながら泣いていた。
泣いても泣いても足りなかった。
足りない涙を補うように雨は激しく降り始めた。
それから一週間後、おばあちゃんは逝ってしまった。
これから僕はおばあちゃんの死を受け入れなければならない。
とても辛い人生を歩むことになる。
けれど、僕はおばあちゃんの言葉を受け取り、最後は幸せと思える人生を歩むために。
生きようと思う。
おばあちゃんの意思はしっかりとこの胸に受け止めた。
完
雨、人から嫌われている天気だけど、僕は雨が大好きだ。
雨の音を聞いていると心が落ち着いてくる。
雨と言うのは、落ち込んでいるときは一緒に泣いてくれているみたいで、気分が晴れやかな時は雨音を奏でながら一緒に喜んでくれている。
そんな感じがたまらなく好きなのだ。
そして今日はおばあちゃんと紫陽花を見るために公園に来ていた。
「やっと一緒にでかけれたね、本当お互いに大変だったね」
「お互い?私はずっと元気だったし、あなたが大変だったのよ」
おばあちゃんは笑いながらそう言った。
そういえばおばあちゃんが亡くなったことは無かったことになっていたんだった。
「そういえば昔、雨の日あなた私に聞いたこと覚えてる?」
「なんか聞いたっけ?」
「やっぱり覚えてないか、あなたは死んでいるカタツムリを見つけて、死んだらどこに行くのって聞いたことがあるのよ。そして、私は死んだらどこにも行かない。ただ消えるだけよって言ったらあなた泣き出したのよ」
「そんなことあったっけ?」
僕は全然覚えていなかった。
「でも、今は消えるだけって思わなくなったの。
もし、死んだとしても、生きている人たちが死んでいった人の事を思ってあげることで、心の中に死んでいった人たちの事が思い浮かぶでしょう?
それって、死んでいった人たちがこの世界を生きた証になると思うの。そうやって思ってくれる人達がいる間は記憶の中で生き続けるんじゃないかって。」
「なるほどね、亡くなった人を思っている限り、思う人の心で生きているってことか。
なんとなくわかる気がする。こういう事って言葉では上手く例えれないよね」
「だから、もしね、私が死んだ時は悲しまないでほしいの、あなたが私を思っていてくれている間はずっとあなたのそばにいるから」
「どうしたの、縁起でもない」
おばあちゃんは僕の言葉に耳を傾けずに話し続けた。
「まぁ、でもねやっぱり大切な人と別れるのに悲しまないって無理な話だとは思うわ。
とても辛いことだから。
でも、別れ際の悲しみのデカさっていうのはね、その人に対しての愛の大きさでもあるのよ。
とても大事な人ほど別れはとても辛いの。
だから、私が死んだとき、あなたが感じる辛さってのは受け入れられない辛さかもしれない、でもその辛さを受け入れないのは私を大事に思っている気持ちも受け入れないのと同じだから、ゆっくり、時間をかけて受け入れてほしい」
「どうしたんだよいきなり、言いたいことはわかるせど今話すことでも無いよ。」
おばあちゃんは僕の目をみて、深呼吸をして言った。
「あなた、スイッチ使ったでしょう」
僕は頭が真っ白になった。
なんで、知っているの?
どういうこと?
「私のもとに手紙とスイッチが届いたのよ。
手紙には私が一度死んだこと、そしてあなたが私を生き返らせてくれた事が書いてあった。
そして、あなたが代償として死ぬことも。
私はあなたが死ぬと知って迷わずスイッチを押したわ。
代償はきっと私の命。
でもね、私はもう年だしこの先長くないから貴方に譲るわ。
それとね、私より先に死なれると私の人生不幸で閉じてしまうから、それだけは嫌なの。
あなたを育て始めてから私の人生の全てはあなたなの。だから、生きなさい。」
僕は話を理解するのに時間がかかった。
「待ってよ、僕にとってもおばあちゃんが全てだ。
だから、僕もおばあちゃんに死なれたら困る!」
「あなたの人生はこれからよ、今は私が全てであっても、いずれ貴方にはいい女性が見つかって、子供もできる、その時家族のために生きなさい。そして、これだけは覚えておいて。人生で辛いことがあっても死ぬときまで幸せか、不幸なのかは決めてはだめ。
生きている限り、どんな人生になるかなんて誰にもわからない。だから、どんなに辛くても死ぬときに幸せと思える人生を歩みなさい。」
「待ってよ、そんなこと急に言われたって俺はおばあちゃんなしでどうやっていきればいいの?
この先また、僕は一人になるの?そんなの無理だ!
そんなこと・・・・・言わないでくれ・・・・」
僕は傘を持つ気力も無くなり、雨に打たれながら泣いていた。
泣いても泣いても足りなかった。
足りない涙を補うように雨は激しく降り始めた。
それから一週間後、おばあちゃんは逝ってしまった。
これから僕はおばあちゃんの死を受け入れなければならない。
とても辛い人生を歩むことになる。
けれど、僕はおばあちゃんの言葉を受け取り、最後は幸せと思える人生を歩むために。
生きようと思う。
おばあちゃんの意思はしっかりとこの胸に受け止めた。
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