スイッチ

結1

真っ白な世界。




僕はあの世へ来たのだろうか。




風が吹いている。




柔らかいものの上に寝ているのか？




視界がぼんやりしていて景色がはっきりしない。





薬品の匂い？




やがで視界が晴れてきて、そこには顔をしわくちゃにして泣いているおばあちゃんがいた。

僕の顔を見て嬉しそうに、泣いて、抱きしめていた。

あれ？僕は死んだんじゃないの？

「おばあちゃん？
僕は生きているの？」

「そうだよ、昨日死にかけはしたけど何とか持ち直してもう安定しているよ」

そう言ってまた泣いていた。
なんだ、リスクを背負って死ぬのは僕じゃなくてやっぱり他人だったのか。

「おばあちゃん、もう桜は散ってしまったね。
退院したらどこ行こうか」

「そうね、近くの大きな公園あったでしょう。
名前は忘れたけど、そこは紫陽花がきれいじゃなかった？
あんたの好きな梅雨になったら見に行こうか」


「紫陽花か、いいね、行こうよ。」

それから僕の体調は良くなり、退院が決まった。

家に帰り、何となくスイッチと手紙を眺めてみた。

リスクが伴う。

一体誰の命を奪ってしまったのだろう。
奪われた命にも家族はいたんだろうか。
その誰かは悲しんでいるのだろうか。

ぼんやりとそんなことを考えていた。

しかし、この考えにに答えはない。

だって、僕のせいで誰が死んだのか、本当に誰か死んだのか確かめようがない。

考えるのは辞めよう。

そして、季節は梅雨になりおばあちゃんと紫陽花を見に行く日がやってきた。