スイッチ

転2

5日目

白い壁、天井、カーテンに囲まれながら僕は死ぬのだろうかと考えていた。

外を眺めてみると、そこには青空が広がり雲一つない晴天だった。

不思議と僕のこころもこの青空のように透き通っていた。

もし、死ぬのだとしても何も怖いとは感じなかった。

おばあちゃんが死んだあの日に比べたらなんてことない。

お昼になるとおばあちゃんがお見舞いに来てくれた。
いつものように穏やかな笑顔でそばにいてくれていた。

「おばあちゃんごめんね、桜はまた延期になりそうだね」

おばあちゃんは笑顔で気にせんでと言ってくれた。
それより早く治して退院しなさいとそう言ってくれた。

この日の夜、僕の容態は悪化して昏睡状態になってしまった。

6日目

昏睡状態になってもおばあちゃんは僕の手を握りずっと励ましていてくれていた。

「大丈夫、すぐ退院できるからね。
今日も天気がとても良くて、気持ちいいよ。
窓開けようか。」

返事のない僕にずっと声をかけ続けてくれた。

7日目

自分の命の終わりはなんとなく悟ることができる。

僕はもう長くない、きっと今日中には死ぬだろう。
でも、おばあちゃんが生きてくれているならそれで良かった。

僕はいつの間にか走馬灯を見ていた。
映画のフィルムのように色々な思い出が目の前を流れていく。

両親を亡くして毎日泣いていた僕を励ましてくれているおばあちゃん。

7歳の時には入学式の時一緒に校門で写真も撮ったよね。

運動会では、運動神経のない僕はかけっこでビリになり、暗い顔でお昼ごはんを食べていたら。

おばあちゃん、言ってくれたよね。

「かけっこでどべでも、最後まで走り抜いたあなたは輝いていたわよ」

その一言で僕はすぐに元気になって、おばあちゃんの事ももっと好きになった。

喧嘩もしたよね。

周りの生徒たちはいつも人気のゲームの話をしていて、僕もゲームをしたくてわがまま言って。

買ってくれないならもう口をきかない！なんて言ってしまって。

でも、誕生日に買ってくれて嬉しかった。

卒業式の時は、おばあちゃん泣いてたね。
こんなに大きくなってしまってと寂しそうな顔をして。

中学の入学式は僕が恥ずかしくておばあちゃんと一緒に居るのを見られたくなくて冷たくしてしまったりね。

ごめんね。

それからも仲良くしてくれて今に至る。

なんて短い人生だったんだろう。

僕の人生にはおばあちゃんしかいなくて、かけがえのない存在だった。

楽しかった。



幸せだった。



いよいよ、僕は死ぬ。



さよなら、おばあちゃん、今までありがとう。