スイッチ

転1

一日目

神様ありがとう！おばあちゃんが本当に帰ってきた！
僕は嬉しくて嬉しくて、おばあちゃんが作った肉じゃがを全部食べてしまった。

「2日分のつもりだったんだけどね」

そう言いながらおばあちゃんは嬉しそうに微笑んでいた。

おばあちゃんが帰ってきてから、世界が天国に見えた。

風や街の騒音、太陽の日差し、街を歩く人々、どれを見ても幸せに溢れているように見えた。

おばあちゃんがいなかった時、景色や風など今と何も変わらなかったのに世界が絶望に包まれていた。

世界って自分の心次第で良くも悪くも見えるということを知った。

世界は心を写す鏡なのだと。

溢れるような幸福感に包まれ、僕は一日中笑顔がこぼれてしまっていて、それを見たおばあちゃんも幸せそうに笑っていた。

しかし、この笑顔の裏で誰かの命が奪われるということを僕はこの時忘れていた。

二日目

カーテンから射す陽射しに起こされて、リビングへと向かった。

「おばあちゃんおはよう、今日も天気良さそうだね」

「そうね、今週末も晴れるみたいよ。
この前行けなかった桜見に行かない？」

「うん、でもおばあちゃん体調はどうなの？しんどくない？」

先日亡くなっていたのだから体調が心配だった。
しかし、亡くなったという事実が無くなっているのでおばあちゃんは至って健康だった。
「全然問題ないよ、この通りピンピンしてるよ」

「そっか、じゃあ行こう！
そろそろ学校行かないと遅刻するから、帰ってきたら計画立てようね」

晴れやかな気持ちで登校し、午前授業もいつも通りこなしていた。

昼休みを挟み5時間目の授業辺りで身体がだるくなってきた。

この短期間で精神的にとてもゆらいだから疲れが溜まったのだろうか、授業が受けれないほどではないので
その日の授業を受けてから帰宅した。


3日目

昨夜から熱が出ていて、今日は学校に行けそうになかった。

おばあちゃんが朝からお粥を作ってくれていた。

「風邪でもひいたのかね、今日は学校休んで病院に行っておいで。」

「わかった、とりあえずお粥を食べたら行ってくるよ、次の休みまでには治さないとね」

お粥を食べ終えて、だるい体を引きずりながら病院へ行った。

診断結果はただの風邪だった。

薬をもらいそのまま帰宅し、一日中寝ていた。


4日目

薬を飲んでも体調は良くならない、むしろかなりしんどくなってきた。

これはただの風邪じゃないと思い病院へ行った。
どうやらこじらせて重症化しかけているらしい。

先生が言うには、若いし大丈夫だと思うけどとりあえず入院はしといたほうが良いとのことだった。

この時僕はリスクの事を思い出していた。
願った物の大きさと同じリスクがあると言うこと。

世界の誰か、つまり自分以外だと思っていたけど、自分も例外ではなく奪われる対象であって、もしかして奪われるのは自分の命なのかもしれないと、そんなことを思った。