3 / 12
打ち上げ花火
しおりを挟む
打ち上げ花火がはじまるとアナウンスが入ると、周りの人たちは確保していた持ち場へとぞろぞろと向かい始める。
人の流れに揉まれる中、はぐれないようにしっかりと愛弓の手を握りしめていた。
一矢達は席を確保していたわけではないので適当なところを探して腰掛けた。
どこも寿司詰め状態なので他人との距離も近く、窮屈感があった。
だが、そのおかげで愛弓との距離もかなり近くなっていた。肩が密着し、一矢の鼓動は高まっていた。
愛弓にも鼓動が聞こえてしまうのではないかとヒヤヒヤしたが、どうやら愛弓には伝わってなさそうだった。
席に着くと愛弓と繋いでいた手は離されてしまった。
それもそうだ、もう逸れる心配がないのだから。
一矢はほっとした気持ちもあるが、もっと繋いでいたかったという落胆の気持ちもあった。
「楽しみだね!」
花火を綺麗に見るための配慮で辺りの電気は消灯されていて暗闇に包まれる中、愛弓は一矢の顔を見て言った。
愛弓の顔はよく見えないが、彼女の吐息がかかることですぐそこに愛弓の顔があることがわかる。
幼馴染とはいえ、流石にここまで距離を詰めたことがない一矢は、緊張と人が密集している蒸し暑さで汗が止まらなかった。
「ねぇ、聞いてる?楽しみじゃないの?」
そう言われて一矢は返事をしていなかったことに気づく。
だめだ、今日は全然冷静でいられない。
まるで自分が自分ではないような、そんな気持ちになっていた。
「いや、すごく楽しみだよ」
愛弓の方を向いて言った。
それと同時に打ち上げ花火が上がり。
客達の感嘆の声が漏れる。
明るくなった拍子に愛弓の顔がぼんやりと見えた。
一瞬目が合い、一矢は気まずくて視線を花火へと向けた。
打ち上げ花火が上がる度に視界の横で見える愛弓の笑顔はとても美しかった。
今日みる物すべての中で一番輝いているのは愛弓、君だ。
時折こっちを向いて綺麗だねと言ったときの笑顔は
一瞬の美を全力で放つ花火よりも綺麗だった。
--------------------------------------------------
花火が終わり、人がぞろぞろと帰っていく中、二人はじっと花火の余韻に浸っていた。
一矢が人が減ってからの方が動きやすいからと言って待つことにしたのだ。
しばらく無言の時間が流れ、人もまばらになってきた頃。
一矢は告白するなら今だと思った。
「あのさ、愛弓、今日楽しかった?」
緊張してどう話を持っていこうか悩みながら一矢は言った。
「うん!こんな綺麗な花火は初めてだったとても楽しかった」
「そうか、良かった」
話があるんだ、そう切り出したかった。
だが、緊張していてなかなか勇気が振り絞れない。
あと5秒経てば言うぞ!とカウントするも0になったときやっぱりあと3秒と先延ばしにしてしまう。
そんなふうにして時間は過ぎていき、愛弓が一言
「3人で来れたら良かったのにね」
と言った。
愛弓は悪気があったわけではなく、弦希も見れたら良かったのにと言いたかったのだろう。
しかし、一矢はそうとは捉えなかった。
僕に気がないからきっとそういう言葉が出たんだろうと思った。
気があるなら今日という日を二人で過ごせたことで満足し、今の言葉は出なかっただろうと思った。
告白はやめよう、きっと告白してしまえば気まずくなり3人の関係が崩れてしまう。
告白出来なかった後悔よりも3人の絆の方が大事だと一矢は思った。
「そろそろ行こっか」
そう言った愛弓の笑顔は少しだけ寂しそうにも見えたのだが、一矢はそこに意味があるとは気づかずそのまま二人の夏は終わってしまった。
人の流れに揉まれる中、はぐれないようにしっかりと愛弓の手を握りしめていた。
一矢達は席を確保していたわけではないので適当なところを探して腰掛けた。
どこも寿司詰め状態なので他人との距離も近く、窮屈感があった。
だが、そのおかげで愛弓との距離もかなり近くなっていた。肩が密着し、一矢の鼓動は高まっていた。
愛弓にも鼓動が聞こえてしまうのではないかとヒヤヒヤしたが、どうやら愛弓には伝わってなさそうだった。
席に着くと愛弓と繋いでいた手は離されてしまった。
それもそうだ、もう逸れる心配がないのだから。
一矢はほっとした気持ちもあるが、もっと繋いでいたかったという落胆の気持ちもあった。
「楽しみだね!」
花火を綺麗に見るための配慮で辺りの電気は消灯されていて暗闇に包まれる中、愛弓は一矢の顔を見て言った。
愛弓の顔はよく見えないが、彼女の吐息がかかることですぐそこに愛弓の顔があることがわかる。
幼馴染とはいえ、流石にここまで距離を詰めたことがない一矢は、緊張と人が密集している蒸し暑さで汗が止まらなかった。
「ねぇ、聞いてる?楽しみじゃないの?」
そう言われて一矢は返事をしていなかったことに気づく。
だめだ、今日は全然冷静でいられない。
まるで自分が自分ではないような、そんな気持ちになっていた。
「いや、すごく楽しみだよ」
愛弓の方を向いて言った。
それと同時に打ち上げ花火が上がり。
客達の感嘆の声が漏れる。
明るくなった拍子に愛弓の顔がぼんやりと見えた。
一瞬目が合い、一矢は気まずくて視線を花火へと向けた。
打ち上げ花火が上がる度に視界の横で見える愛弓の笑顔はとても美しかった。
今日みる物すべての中で一番輝いているのは愛弓、君だ。
時折こっちを向いて綺麗だねと言ったときの笑顔は
一瞬の美を全力で放つ花火よりも綺麗だった。
--------------------------------------------------
花火が終わり、人がぞろぞろと帰っていく中、二人はじっと花火の余韻に浸っていた。
一矢が人が減ってからの方が動きやすいからと言って待つことにしたのだ。
しばらく無言の時間が流れ、人もまばらになってきた頃。
一矢は告白するなら今だと思った。
「あのさ、愛弓、今日楽しかった?」
緊張してどう話を持っていこうか悩みながら一矢は言った。
「うん!こんな綺麗な花火は初めてだったとても楽しかった」
「そうか、良かった」
話があるんだ、そう切り出したかった。
だが、緊張していてなかなか勇気が振り絞れない。
あと5秒経てば言うぞ!とカウントするも0になったときやっぱりあと3秒と先延ばしにしてしまう。
そんなふうにして時間は過ぎていき、愛弓が一言
「3人で来れたら良かったのにね」
と言った。
愛弓は悪気があったわけではなく、弦希も見れたら良かったのにと言いたかったのだろう。
しかし、一矢はそうとは捉えなかった。
僕に気がないからきっとそういう言葉が出たんだろうと思った。
気があるなら今日という日を二人で過ごせたことで満足し、今の言葉は出なかっただろうと思った。
告白はやめよう、きっと告白してしまえば気まずくなり3人の関係が崩れてしまう。
告白出来なかった後悔よりも3人の絆の方が大事だと一矢は思った。
「そろそろ行こっか」
そう言った愛弓の笑顔は少しだけ寂しそうにも見えたのだが、一矢はそこに意味があるとは気づかずそのまま二人の夏は終わってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?
さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。
しかしあっさりと玉砕。
クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。
しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。
そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが……
病み上がりなんで、こんなのです。
プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる