桜の下でさよならを

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花火大会以来、愛弓とは二人きりになれていない。

「一矢、愛弓今日も何かかけて勝負しないか?」

弓の手入れをしながら弦希が提案する。

「えーだって弦希強いもん、どうせまた弦希の一人勝ちでしょ!それにもう道具片付けてしまったし」

更衣室に向かおうとしていた愛弓はそう言って行ってしまった。

「しょうがない、今日は諦めるか」

そう言い更衣室へと向かった弦希の後を一矢も追った。

更衣室に入るなり弦希が聞いてきた。

「一矢そういや、愛弓の事どうするんだ?」 

あの夏一矢は告白できず、そしてそのままずるずると行動を起こさずに秋を迎えていた。

あの夏、告白するよりも3人の絆をとったのだが、それでもやはり迷っていた。

自分の心に閉じ込めて置けるほど小さな感情ではない、このままほっておけば病んでしまいそうなほどだ。

「迷ってるんだ、僕が告白してもし、愛弓と気まずい関係になって、それで3人の関係も壊れてしまわないかと不安なんだよ」

それを聞いた弦希はため息を吐いた。

「それで一矢は納得できるのか?俺にはそうは見えないけどな。

抱えきれない感情のやり場に困ってる様に見える」

本心を言い当てられ、言い返す言葉がなかった。
弦希はちょっと躊躇った感じで、右手に持っているタオルを左手に打ち付けながら言った。

「あのさ、俺も愛弓の事が好きなんだよ」

ロッカーを閉じようとしていた一矢の手が止まり、弦希の方に顔を向けた。

「え、じゃあなんで夏休み、セッティングしてくれたの?好きならなんであんなことしたの?」

弦希の言っていることはハッタリだと思った。

「そりゃ、愛弓はお前のことが好きだからだよ、俺の出る幕じゃないと思って譲ったんだ。

だけど一矢がそんな調子なら俺はもう我慢しない、例え愛弓が振り向いてなくても全力でぶつかろうと思う。
もう夏に味わったような気持ちは味わいたくないんだ」

「そうだったんだ、弦希の気持ちも知らずにごめん」

一矢ゆっくりと閉じかけのロッカーを締め更衣室を出ようとした。

「なぁ、愛弓への告白をかけて俺と弓道で勝負しないか?

負けた方は引き下がる、どうだ?これくらいの事をしないと踏ん切りつかないだろ。

お前が勝負を受けないなら俺は今日告白する、たとえ俺達の関係が崩れようとも自分の思いに正直に生きたい、それに俺たちの絆はそんな脆い物とも思っていないしな」


弦希はロッカーを締め、一矢を追い越して更衣室の出口に手をかける。

「わかったよ、その勝負受けて立つよ。
弦希がどのみち告白するならもう悩む必要はない、僕も全力でやる」

弦希は笑顔で振り向いた。

「よし、決まりだなじゃあ卒業式に勝負だそれまでに気持ちの整理と腕を磨いておけよ、絶対に負けないからな!」

そう言って更衣室を出て行った。

更衣室を出ると心配そうな顔をして愛弓が待っていた。
「喧嘩でもしたの?弦希先に帰っちゃったよ?」

今まで病欠したとき以外にバラバラに帰ったことがなかったから不安だったのだろう。

「大丈夫だよ、喧嘩なんてしてない悪いけど僕も先に帰るね」

勝負が着くまで愛弓と二人になるのは辞めた。


その日から弦希と一矢の距離が開いた。
その様子を見た愛弓は不安だった。
二人に何があったのかはわからない。

けれど、もしこの空気のまま卒業を迎えることになるのではないか、3人仲良く卒業できないのではないか、そんな不安が愛弓の心に積もり始める。
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