【R18】忘れ草の咲く森〜想いを失ったのは、結ばれるきっかけにすぎなかった〜

天野すす

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春祭り

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 結局、『春祭り』には、蒼空の方から誘いが来た。


「明日、祭り。11時でいいよな?」
「おぅ!」

 あっという間に、その日はやって来た。



 世砂とは、祭りの終わりに上がる、花火の前に、偶然を装って、落ち合うことになっていた。


 それまでは、毎年しているように、店を回り、たこ焼きを食べ、遊ぶ。


「おい、夕輝。これ」
「ぜってー、やだ。ほら、これだ!」


 ちょんまげ帽子を、蒼空に被せ、顔とのバランスの悪さに、大笑いしていると、手に持っていたネコの耳を、夕輝は付けられた。


「夕輝、可愛い」
「にゃーん、てか?」


 もしかしたら、今年が最後かも知れない。


 なんとなく、そんな事を思うと、淋しいという気持ちが、襲い、夕輝は腹を抱えて、笑っていた。


 花火の前。

 約束どおり、世砂が今見つけたかのように、声をかけて来た。


「蒼空くんも来てたんだ。友達帰っちゃったんだ、一緒に花火見てもいいでしょ?」

 蒼空は、俺の方を見て、救いを求めていた。

「仕方ねぇな」

 腰に手を当てて、笑って、了承すると、蒼空も諦めたように、息を吐いた。


 ごめんな……蒼空。


「あー、おれ、ちょっと、食いもん買って来るわ。腹減った」


 世砂からは、合流した後、蒼空と2人きりにしろ、と言われていた。




 焼きそばを買って食べた後、飲み物を片手に、適当に、ぶらぶらした。

(つまんねぇな、1人じゃ)

 多少、興 気になる露店もあったが、蒼空のいない今は、やる気が起きなかった。

(そろそろいいか……)


 一通り回って、2人のところに戻ってみる。



「なぁ……」


 後ろにいる夕輝に、2人は気づかなかった。


「椋野くんて、蒼空くんのこと、好きなんだよ。しってた? あー言っちゃった」



 なんで……?


「夕輝が? ……嘘だろ?」
「ねぇ? あり得ないでしょ?」

 遠目でも分かるくらい、蒼空が驚いているのが分かった。

 そして、返事に困ったように、苦笑い。

「はは……それは、困ったな」

 と、言った。




 言わない約束だった。

 なのに……



 手から零れ落ちる。



 持っていた、飲み物が、地面に落ちた。
 その時、はじめて、2人は俺がいた事に、気づいた。



 見られたくない!


 蒼空が、振り向く前に、夕輝は走っていた。


「夕輝!」


 聞こえた気もする。
 だけど、振り返られなかった。




 ただ、ひたすらに、日が落ちて、橙赤色の路を。



 走って


 走って


 走って……






 無我夢中で、辿り着いたのは……


 たぶん、誰も来たことのない、場所。




 想っているだけでよかった。

 だけど……知られてしまった。


 いう事ができないことくらい、分かってたのに。
 幼馴染で、親友、それでよかった。




 一面に咲く、忘れ草の、強烈な橙赤色が、目を埋め尽くし、溢れて、頬を伝った。


 そして、夕輝は……願った。



『想いを。忘れさせてください』


 と。
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