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3 見つめ合う瞳と繋いだ掌
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力強く引かれた手に導かれ、優の身体は浮かび上がるようにふらりと立ち上がる。まだなれない人の形の足が敷布団を踏み締めるも、膝がかくりと頼りない。
「背負ってあげようか?」
「いら、ない……!」
繋がった手にこれでもかと力を込めながら、優は雫の顔を見る事もせずにはを食いしばりながらそう答える。
ぎりりと握られた手は、旗目から見ても多少なりとも痛みを伴うだろうと理解出来るほどに強く握られていたが、雫は「そっか」と一言を返すと、その懸命な少年を静かに見守ることを選んだ。
雫が一歩布団の外へと踏み出し、繋がったままの手をゆっくりと己の方へと引き寄せると、ふるふると震える足がゆっくりと前へと踏み出され、ぺたりと床を踏みしめる。
また一歩と雫が離れては、少しの間を置いてまたもう片方の足が時間をかけながら一歩、また一歩と踏み出していった。
「うん。上手」
「……あんたは普通にしてるじゃん」
「そりゃ、君よりもこの体には慣れてるからね」
少しずつ歩く感覚を短くしながらようやく部屋を出ると、その建物はそれなりの広さがあるのか、左右に廊下が広がっている。
「こっちだよ」
「ん、」
くいくいと手を引かれるままに、ぺたぺたと木造の廊下を歩いていくと、案内されたのは布団のあった部屋から少し離れた畳の間。
広すぎることもなく、それなりの大きさのコンパクトな部屋に、布団のような厚手の布が掛かったテーブルがあった。
その部屋はどうやら日常的に過ごすところらしい。動物の住処にもいくつもの用途に別れた空間が存在するが、雫の住むこの建物もさして変わりはないらしい。
「ユウちゃんの好きそうなものはあんまり蓄えがなくてね。探してくるから、ちょっとまっててね」
「わかった」
部屋の中央にある布掛けテーブルの前まで手を引かれると、まだ少し頼りない足を膝から折り畳み、そのまま掛け布の中に両足を潜り込ませてみる。
もふりとした柔らか布を潜ると、その先はほのかに暖かい。冬場の寒さを感じさせないそれに心做しか優の表情が穏やかに和らいだ。
「ふふ、気に入ったみたいでよかった」
「……うっさい」
ぽふんと雫の手が優の頭をひと撫すると、ご丁寧にそれをぺしんと払い除け、そのまま手をひらりと振りながら雫は部屋を後にした。
ぽつんと部屋へ残された優は、特に何をする訳でもなく手持ち無沙汰。きょろりと部屋を見渡したところで、特に何かめぼしい物も無い。
己が入るそのテーブルの布地をめくり、その下を覗くように身を屈めてもぞりと動いた。ぼんやりと眩しい明かりから感じる焚き火のような温かさ。おそらく、それに触れるのは良くないだろうと優はすぐに理解した。
ふと目に入ったのは自分のものと思われる人間の足。五本の短い指がついたそれは、自分の意思の通りにぴくりと動く。
「本当に、ニンゲンの体なんだな……」
自分の家族の仇と同じ見た目。狼の名残はほとんど見当たらない。唯一の名残は頭の上にあるふたつの大きな耳。そこまで考えて、優はハッとした。
ふるり。確かに感触がある。
意識して自分の後方を振り返ると、そこにはかつての自分の毛色と同じ、長い毛で覆われた尻尾が生えていた。
手で掴んでみると、もふりと柔らかい感触と同時にぞわりと背筋が擽ったい。思わず手を払い除けるように尻尾がぶるんと大きく揺れた。
「自分の尻尾なんて、はじめて触った」
確かに、これは元々の自分の身体らしい。
昨夜から起こり続けていた現実味のないものは、紛れもなく事実なのだと、そう感じさせた。
「背負ってあげようか?」
「いら、ない……!」
繋がった手にこれでもかと力を込めながら、優は雫の顔を見る事もせずにはを食いしばりながらそう答える。
ぎりりと握られた手は、旗目から見ても多少なりとも痛みを伴うだろうと理解出来るほどに強く握られていたが、雫は「そっか」と一言を返すと、その懸命な少年を静かに見守ることを選んだ。
雫が一歩布団の外へと踏み出し、繋がったままの手をゆっくりと己の方へと引き寄せると、ふるふると震える足がゆっくりと前へと踏み出され、ぺたりと床を踏みしめる。
また一歩と雫が離れては、少しの間を置いてまたもう片方の足が時間をかけながら一歩、また一歩と踏み出していった。
「うん。上手」
「……あんたは普通にしてるじゃん」
「そりゃ、君よりもこの体には慣れてるからね」
少しずつ歩く感覚を短くしながらようやく部屋を出ると、その建物はそれなりの広さがあるのか、左右に廊下が広がっている。
「こっちだよ」
「ん、」
くいくいと手を引かれるままに、ぺたぺたと木造の廊下を歩いていくと、案内されたのは布団のあった部屋から少し離れた畳の間。
広すぎることもなく、それなりの大きさのコンパクトな部屋に、布団のような厚手の布が掛かったテーブルがあった。
その部屋はどうやら日常的に過ごすところらしい。動物の住処にもいくつもの用途に別れた空間が存在するが、雫の住むこの建物もさして変わりはないらしい。
「ユウちゃんの好きそうなものはあんまり蓄えがなくてね。探してくるから、ちょっとまっててね」
「わかった」
部屋の中央にある布掛けテーブルの前まで手を引かれると、まだ少し頼りない足を膝から折り畳み、そのまま掛け布の中に両足を潜り込ませてみる。
もふりとした柔らか布を潜ると、その先はほのかに暖かい。冬場の寒さを感じさせないそれに心做しか優の表情が穏やかに和らいだ。
「ふふ、気に入ったみたいでよかった」
「……うっさい」
ぽふんと雫の手が優の頭をひと撫すると、ご丁寧にそれをぺしんと払い除け、そのまま手をひらりと振りながら雫は部屋を後にした。
ぽつんと部屋へ残された優は、特に何をする訳でもなく手持ち無沙汰。きょろりと部屋を見渡したところで、特に何かめぼしい物も無い。
己が入るそのテーブルの布地をめくり、その下を覗くように身を屈めてもぞりと動いた。ぼんやりと眩しい明かりから感じる焚き火のような温かさ。おそらく、それに触れるのは良くないだろうと優はすぐに理解した。
ふと目に入ったのは自分のものと思われる人間の足。五本の短い指がついたそれは、自分の意思の通りにぴくりと動く。
「本当に、ニンゲンの体なんだな……」
自分の家族の仇と同じ見た目。狼の名残はほとんど見当たらない。唯一の名残は頭の上にあるふたつの大きな耳。そこまで考えて、優はハッとした。
ふるり。確かに感触がある。
意識して自分の後方を振り返ると、そこにはかつての自分の毛色と同じ、長い毛で覆われた尻尾が生えていた。
手で掴んでみると、もふりと柔らかい感触と同時にぞわりと背筋が擽ったい。思わず手を払い除けるように尻尾がぶるんと大きく揺れた。
「自分の尻尾なんて、はじめて触った」
確かに、これは元々の自分の身体らしい。
昨夜から起こり続けていた現実味のないものは、紛れもなく事実なのだと、そう感じさせた。
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