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3 見つめ合う瞳と繋いだ掌
3-3
しおりを挟む「お待たせユウちゃん……って、どうしたの?」
「――!」
雫が部屋に戻ってきたことに気が付かず、優は頭上からかけられた声にピンと耳を高く持ち上げた。視線を向けると、不思議そうに赤い目を丸くしながら小首を傾げる雫の姿。
「な、なんでもない」
「……?」
ふいと顔を逸らすと、雫も深くは追求をせずに手にしていた木製の器をコトリとテーブルの上へと置き、優の隣へと腰をかけて同じように掛け布の中へと足を潜り込ませた。
「ユウちゃんでも食べられそうなの探してみたんだけど……これくらいしかなくてね。今後のご飯はちゃんと考えるから、とりあえず今はこれでお腹の虫と相談してもらえるかな」
雫が持ってきた木の器の中には、真っ赤な果実や新鮮な葉野菜。そして、ころころと艶のある木の実がいっぱいに盛られていた。
優は狼。食事といえば生の肉。肉食獣なら当然である。
それに対し、雫は兎。そう、主食が違うのだ。
家屋に蓄えがあると言っても、それは肉食獣用では無い。
優がその中身とにらめっこをすることおよそ数秒。五本の指をくっつけたままの掬うような動きで中に入っていた果実を手に取り、顔の前まで運んでくる。
すんすんと鼻を動かし、その果実をじっと見つめると、言葉も発さぬまま大きく口を開けてその身を頬張った。
ぷちゅり。薄い皮に牙を立てると中で水玉が弾けるように果実が口の中へと溢れ出す。そして、甘酸っぱい香り一気に鼻をぬけ、舌の上をとろりと甘い液体が広がっていく。
「ん…………」
「どうかな」
ぷくりとした頬がもにゅもにゅと動く。その様子を雫はじっと見つめながら、自身の問いかけに対する返答を待つと、続いてこくんと喉が上下に動いた。
「…………うまい、かも」
ぽつりと呟くような声。そういった優の瞳はきらりと艶めき、黄金の瞳をらんらんと輝かせながら、釘付けになるように器の中の同じよう果実を真っ直ぐに見つめている。
それは、その言葉が嘘ではないと証明するにはじゅうぶん過ぎるもので、ざわついた心境の雫はほっと胸を撫で下ろした。
「そっか。よかった」
雫の手が優の頭へと添えられる。柔らかな毛に紛れた耳もへたりと大人しく、わしゃりと撫でる手の動きに逆らうこと無く、その行為を受けいれた。
またひと掬い優が果実を頬張ると、僅かに耳の先がぷるりと震え、先端をぴこぴこと動かしては幸せそうに咀嚼する。ふと、後方に聞こえる物音に気が付き、雫が後ろを振り向くと、髪と同じ色をした尻尾が左右に忙しなくゆらゆらと揺れていた。
「いっぱい食べていいからね」
つられるようにわしゃりと髪を撫ぜ回す。くにゅんと柔らかな耳の感触が少し心地よい。
少なからず心を開いてくれた少年に雫の目尻が角を落として丸くなった頃、これまで食べる事に夢中だった優が雫へと向き直った。
「……シズク」
「ん、どうしたの?」
「しつこい」
ぺしん。
こうして例外なく、頭部の手は優によって振り払われた。
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