白と灰の優しい獣

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5 はじめての、

5-1

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 雪解け水を混じえた透明な川に、色褪せた木の葉がひらりと落ちる。
穏やかな流れに身を任せ、山頂から麓へとなだらかに下っていくその川は山に住む生き物にとってとても大切な場所だった。

 水面に浮かぶ葉に紛れ、ピンと一筋の線が見える。それは細い植物のツタをさらに細長く引き伸ばした雫お手製の釣り糸。
 川べりにある大きな岩に腰を下ろしながら、優と雫は互いに糸が繋がっま木の枝を片手にじっくりと獲物がかかるのを待っていた。

「シズク……これで本当に釣れるの?」
「釣れるよ。いつも食べてるでしょ?」
「それはそうだけどさ、全然魚なんて居ないじゃん」

 まだ上流付近の浅い川ということもあり、透き通る水の底側を見る事ができる範囲。水面に目を凝らしても見えるのはお手製の釣り糸と木の葉だけ。
優はじっとりと疑いの眼差しにも似た湿っぽい視線で隣にいる雫を見つめた。

「まだ来たばかりじゃないか。そのうち来るよ」
「ほんと?」
「嘘はつかないよ。それとも帰る?」
「別に帰るなんて言ってないだろ」
「じゃあ、頑張って待とうか」

 会話のキャッチボールが終わるとそこに流れるのは川の流れによる涼やかな音だけ。
 優が思い描いていた狩りとは全く正反対にの位置にある静かなこの時間。だが、連れていけと懇願したのもまた優自身。
物言いなげに口元をへの字に歪めながら、自分の手元にある糸の先をただ見つめる事にした。

 ピンと垂らした糸をただじっと見つめること十分。雫が持つ枝の糸がぴくんと強く引きを見せた。

「……ん、」

 くんと引かれる糸は川の流れに逆らうように動き回り、波紋を作りながら水の中を暴れ回る。そして、繋がる木の枝が振り上げられると同時に、水飛沫をあげながら一匹の魚が顔を出し、そのまま宙へと投げ出された。

 空を泳いだ魚は勢いのままに川辺の石の上へとダイブし、じわりと灰色の石を黒に染めあげながら懸命に身体をびちびちと跳ねさせる。
 ぐにゃりぐにゃりと身をしならせていると、雫が尾びれの括れ部分を手に取り、口に引っかかった細い木の枝で作られた針を丁寧に取り払い、用意していた木製の桶の中へと放していく。

「ほら。ちゃんと捕まえられたでしょ」

 太陽のように眩しい笑顔に優の眉間の皺が深くなる。純粋に、その顔には面白くないと書かれているようだった。
 それを理解してか、にっこりと涼しい笑顔を浮かべながら雫は優の頭をぽんぽんと撫でてやると、その手は言葉もなくぺしりと手が払い除けられた。
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