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5 はじめての、
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「釣りは慌ててするものじゃない。相手の出方をうかがう狩りと同じだよ」
「……言いたいことがあるならもっと分かりやすく言えよ」
「そうやって拗ねないの」
「拗ねてねーし!」
荒らげた声につられ、水面に浮かぶ優の釣り糸がビクンと揺れる。すると、びちちちと水しぶきが川を走り始め、糸がピンと張り詰める。
優が慌てて枝を振りあげようとした時にはもう遅く、水面を暴れ回った糸はまたすぐにしんと静けさを取り戻し、何事も無かったかのように水面にぷかりと浮かび上がった。
「ユウちゃんはさ、これまでちゃんとした狩りはした事ある?」
「……」
「それでなくても、狼がしてきた狩りとはそもそもやり方が違うだろうし、そんなに気を張るものじゃないよ」
ちゃぷん。動かなくなった優の糸をよそに、近くの水面に垂らされ雫の糸がクンと強く引く。ざぱりと水しぶきを上げながらその先に繋がった魚が飛沫を上げながら宙を舞い、川辺の砂利に打ち上げられた。
釣り上げた魚から釣り針を外し、それをまた水面へ放り投げる。その一連の動作を繰り返すのは雫ばかりで、優の糸はうんともすんとも動かない。
「俺は兎だ。ユウちゃん達みたいに狩りをする生き物じゃない。どちらかと言わずに、狩られる側の生き物なんだ。だから、狩られる側の気持ち、狩る側の気持ちもよくわかる」
「気持ち……」
「うん。君が今たらしている糸は餌……魚からすると狩りの対象だ。ユウちゃんなら、狩りをするならどんな奴を狙う?」
また一匹と魚が宙を泳き、木製の桶の中へと放される。狭いその中を複数の魚がびちびちとひしめき合い、無数の水しぶきをたてていた。
「獲物を見つけて……そして、それが仕留められそうかを判断するんじゃない?」
再び放たれた糸は静かに水面に着水し、そして無言の時間と共に川の流れに身を任せてゆらりと揺れる。
優は、ただ糸が垂れているものだと思っていた。暫くその糸から目を離さずにいると、食い付きとはまた違う、ピクンと数回糸が引かれ、流れに逆らうようにして水面を少しずつ動き、そしてまた川の流れに静かに身を任せている。
「存在を見せつけて、それから隙を作る。そうすると――――」
きらりと日差しに輝く水しぶき。また一匹、魚が空を泳いだ。
「ほら。これが、狩りだよ」
初めて習った狩りというものに、優の瞳が陽光を照り返す水面のように輝いた。
追い続けていた視線の先の魚が既に満員気味の桶の中へと仲間入りを果たすまでを見届けると、ひと狩り終えた優しい教育者はにこりと穏やかに笑みを浮かべていた。
「……言いたいことがあるならもっと分かりやすく言えよ」
「そうやって拗ねないの」
「拗ねてねーし!」
荒らげた声につられ、水面に浮かぶ優の釣り糸がビクンと揺れる。すると、びちちちと水しぶきが川を走り始め、糸がピンと張り詰める。
優が慌てて枝を振りあげようとした時にはもう遅く、水面を暴れ回った糸はまたすぐにしんと静けさを取り戻し、何事も無かったかのように水面にぷかりと浮かび上がった。
「ユウちゃんはさ、これまでちゃんとした狩りはした事ある?」
「……」
「それでなくても、狼がしてきた狩りとはそもそもやり方が違うだろうし、そんなに気を張るものじゃないよ」
ちゃぷん。動かなくなった優の糸をよそに、近くの水面に垂らされ雫の糸がクンと強く引く。ざぱりと水しぶきを上げながらその先に繋がった魚が飛沫を上げながら宙を舞い、川辺の砂利に打ち上げられた。
釣り上げた魚から釣り針を外し、それをまた水面へ放り投げる。その一連の動作を繰り返すのは雫ばかりで、優の糸はうんともすんとも動かない。
「俺は兎だ。ユウちゃん達みたいに狩りをする生き物じゃない。どちらかと言わずに、狩られる側の生き物なんだ。だから、狩られる側の気持ち、狩る側の気持ちもよくわかる」
「気持ち……」
「うん。君が今たらしている糸は餌……魚からすると狩りの対象だ。ユウちゃんなら、狩りをするならどんな奴を狙う?」
また一匹と魚が宙を泳き、木製の桶の中へと放される。狭いその中を複数の魚がびちびちとひしめき合い、無数の水しぶきをたてていた。
「獲物を見つけて……そして、それが仕留められそうかを判断するんじゃない?」
再び放たれた糸は静かに水面に着水し、そして無言の時間と共に川の流れに身を任せてゆらりと揺れる。
優は、ただ糸が垂れているものだと思っていた。暫くその糸から目を離さずにいると、食い付きとはまた違う、ピクンと数回糸が引かれ、流れに逆らうようにして水面を少しずつ動き、そしてまた川の流れに静かに身を任せている。
「存在を見せつけて、それから隙を作る。そうすると――――」
きらりと日差しに輝く水しぶき。また一匹、魚が空を泳いだ。
「ほら。これが、狩りだよ」
初めて習った狩りというものに、優の瞳が陽光を照り返す水面のように輝いた。
追い続けていた視線の先の魚が既に満員気味の桶の中へと仲間入りを果たすまでを見届けると、ひと狩り終えた優しい教育者はにこりと穏やかに笑みを浮かべていた。
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