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猛烈なアタックと言うはずのなかった提案
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「レイ。君ともっと親しくなりたいんだ」
「………」
「レイ。好きな食べ物は何だい?今度一緒に食事に行こう」
「………」
「レイ。ツンと澄ました顔も素敵だね。でも、笑った顔も見たいな」
「………」
どこから突っ込んだらいいのか分からない。アダムはあれ以降も毎日のようにこの調子で、どんなに無視を決め込んでもめげずにしつこく話しかけてくる。
それも、毎回明らかにその手の口説き文句を織り交ぜながら、ストレートに好意を表している。一度、耐えられなくなってどうして自分なんだと聞いてみたところ、
「一目見た途端に運命を感じたんだ」
と真顔で恥ずかしげもなくおっしゃった。それはそのまま、一目惚れという単語が当てはまるのだが、馬鹿なと咄嗟に掻き消した。
鈴は自分の外見や中身を卑下するわけではないが、至って十人並みだと思っている。ましてや、こんなおとぎ話の王子を具現化したような完璧な男に惚れられるほど、自分が魅力的な外見をしているとはとても思えない。
それに、たとえ本当に一目惚れだとしても、見た目に幻想を抱いた恋愛は中身を知った途端にあっという間に冷めると決まっている。だから、これはアダムの一時的な気の迷いで、それ以上でもそれ以下でもないのだ。
そうやって決めつけてかかり、まともに相手をしないまま数日から数週間を過ごしたのだが、アダムは一向に態度を変える気配がなかった。
それどころか、
「ああ、そうやってつれなくされると逆にますます手に入れたくなるよ」
とまで言ってきたので、はっきり言ってやることにした。
「ルノワール先生、あいにく私は恋愛をする気はありません。なので、他を当たってください」
ちょうど二人揃って受け持った授業がない時間で、職員室ががら空きのタイミングを計って言った。アダムとほぼ二人きりな状況にげんなりしつつも、逆にこれは好機だと思ったのだが。
「無理。僕もレイ以外は考えられないので」
「あなたが無理でも、私は……。というか、前々から言いたかったんですけど、せめて佐上と呼んでください」
「嫌です。君は僕の運命の人なんだから」
「勝手に決めないでもらえますか。運命なんてあるわけないじゃないですか。特に」
自分には、と内心で付け加えながら、ずきりと胸が痛む。そんな内心を知らないアダムは、至って前向きな言葉を続ける。
「運命を信じなくてもいい。でも、僕はレイが好きだ。レイも少しずつ僕のことを知って、それから好きになってくれれば……」
「はっ」
鈴はアダムの真っ直ぐ過ぎる愛情表現を信じもせず、とうとう鼻で笑った。驚いたような顔をしている鈴に、するりと言うはずではなかった台詞を吐いていた。
「何度も言いますが、私はあなたと恋愛する気はありません。でも、体だけの関係なら構いませんよ。何なら、今夜でもどうですか?」
どうせこの男も、愛だの恋だのと綺麗事を言いながら、鈴と寝たいだけなのだ。そして、こちらが本気になったタイミングで面倒になって捨てる。それが分かっていながら、最初からこうしなかったことを不思議に思う。
少しでも望みを持っていたのか。まさか。
自分の女々しい思考を嘲笑いながら、アダムを見つめると、怖いほど強い眼差しをぶつけられて。
「体だけの関係は欲しくありません。でも、そこから始まることにほんの少しでも望みをかけられるなら、レイに触れたい」
望みなどないと言い捨てたら良かったのに、無言を貫いた。そして、そのままの流れで、仕事帰りに自宅へ招くことになったのだった。
「………」
「レイ。好きな食べ物は何だい?今度一緒に食事に行こう」
「………」
「レイ。ツンと澄ました顔も素敵だね。でも、笑った顔も見たいな」
「………」
どこから突っ込んだらいいのか分からない。アダムはあれ以降も毎日のようにこの調子で、どんなに無視を決め込んでもめげずにしつこく話しかけてくる。
それも、毎回明らかにその手の口説き文句を織り交ぜながら、ストレートに好意を表している。一度、耐えられなくなってどうして自分なんだと聞いてみたところ、
「一目見た途端に運命を感じたんだ」
と真顔で恥ずかしげもなくおっしゃった。それはそのまま、一目惚れという単語が当てはまるのだが、馬鹿なと咄嗟に掻き消した。
鈴は自分の外見や中身を卑下するわけではないが、至って十人並みだと思っている。ましてや、こんなおとぎ話の王子を具現化したような完璧な男に惚れられるほど、自分が魅力的な外見をしているとはとても思えない。
それに、たとえ本当に一目惚れだとしても、見た目に幻想を抱いた恋愛は中身を知った途端にあっという間に冷めると決まっている。だから、これはアダムの一時的な気の迷いで、それ以上でもそれ以下でもないのだ。
そうやって決めつけてかかり、まともに相手をしないまま数日から数週間を過ごしたのだが、アダムは一向に態度を変える気配がなかった。
それどころか、
「ああ、そうやってつれなくされると逆にますます手に入れたくなるよ」
とまで言ってきたので、はっきり言ってやることにした。
「ルノワール先生、あいにく私は恋愛をする気はありません。なので、他を当たってください」
ちょうど二人揃って受け持った授業がない時間で、職員室ががら空きのタイミングを計って言った。アダムとほぼ二人きりな状況にげんなりしつつも、逆にこれは好機だと思ったのだが。
「無理。僕もレイ以外は考えられないので」
「あなたが無理でも、私は……。というか、前々から言いたかったんですけど、せめて佐上と呼んでください」
「嫌です。君は僕の運命の人なんだから」
「勝手に決めないでもらえますか。運命なんてあるわけないじゃないですか。特に」
自分には、と内心で付け加えながら、ずきりと胸が痛む。そんな内心を知らないアダムは、至って前向きな言葉を続ける。
「運命を信じなくてもいい。でも、僕はレイが好きだ。レイも少しずつ僕のことを知って、それから好きになってくれれば……」
「はっ」
鈴はアダムの真っ直ぐ過ぎる愛情表現を信じもせず、とうとう鼻で笑った。驚いたような顔をしている鈴に、するりと言うはずではなかった台詞を吐いていた。
「何度も言いますが、私はあなたと恋愛する気はありません。でも、体だけの関係なら構いませんよ。何なら、今夜でもどうですか?」
どうせこの男も、愛だの恋だのと綺麗事を言いながら、鈴と寝たいだけなのだ。そして、こちらが本気になったタイミングで面倒になって捨てる。それが分かっていながら、最初からこうしなかったことを不思議に思う。
少しでも望みを持っていたのか。まさか。
自分の女々しい思考を嘲笑いながら、アダムを見つめると、怖いほど強い眼差しをぶつけられて。
「体だけの関係は欲しくありません。でも、そこから始まることにほんの少しでも望みをかけられるなら、レイに触れたい」
望みなどないと言い捨てたら良かったのに、無言を貫いた。そして、そのままの流れで、仕事帰りに自宅へ招くことになったのだった。
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