漆黒の魔術師と金の聖女ー時空転移は永遠の出会いー

雛瀬智美

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第二章

番外編「手首に欲望のキス」(☆)

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ルシアは、子供を生んでからというもの、さらに美しくなった。
19歳という少女らしさのなかに、母親の顔と女の顔を隠しているかのようだ。
グローブをはめたままの手で、頬から首をくすぐると、屈託なく笑う。

まだ昼下がりの時間だが、サンルームの天蓋付きベッドでもつれあって、まどろんでいた。

お互いに、衣服をまとったまま、戯れている。こういうじゃれあいも、いいなと、最近気づいた。
今まではルシアを視界にとめると、すぐにでも抱きたくなることも
多かったが少し余裕が生まれたのかもしれない。
欲に身体中を侵食されて、身体を重ねずとも、やさしく抱擁し合うだけでも、心が満ちることを知った。
それでも、外へ買い物に出たあとなどは、ルシアを抱き殺したくてたまらなくなる。

彼女は未(いまだ)に無自覚だが、

きらめく美貌に行き交う人々(特に男!)に、

視線を吸い寄せられる度、苛立つ。

クライヴが、睨みを利かせていなければ、声をかけられ放題だろう。
ふわりと背を流れる金の髪、晴れた日の空のように澄んだ青い瞳、

紅をひかずとも色づいた桃色の唇。

出会いから、1年と少し。大輪の薔薇が花を咲かせるように、彼女は美しくなっている。

クライヴが、不安を覚えるほどに。

もっとも、街中を歩いている時、注目されているのは、ルシアだけではなく、

クライヴも同様なのだが、彼は知る由もない。

醜い嫉妬と独占欲が渦巻く彼は、しっかりとルシアをエスコートし、城に帰りつくまで、

息がつけなかった。黒魔術師の黒衣ではなく、

貴族男性の姿で街に出ているので、彼を陰気だとか、怖がるものは皆無だった。

彼の近寄り難い雰囲気も、華やかで明るいルシアによって、相殺されている。

無駄に色男だが、彼もまた無自覚だった。

「ルシア……」

「どうしたんですか? アルフならお昼寝してるから当分起きませんよ」

「……街に出るのは楽しいか」

母親になったルシアは、夫のクライヴの他に子供のことも考えている。
それは、ルシアと等しく子供を愛しているクライヴも同じではあるが、母性にはかなわないとつくづく思う。

見当違いの返答をさらっと、受け流し、

クライヴは、聞きたかったことを尋ねた。

「は、はい! デートしてるみたいで」

「みたいじゃなくてデートだろ」

さらり、突っ込む。

クライヴが、触れた頬は、熱くなっていた。

陽の光に照らされて、瞳まで潤んでいる様子もわかる。

その可愛らしさに、背中を抱きしめる腕に力を込める。
頭を抱いて、腰を引き寄せ密着した。

「……デートいいですね。私達は、出会って一年経たずに結婚して、子供もできたんだなって。
二人きりで出歩く機会増えたのも結婚してからですよね」

「つがいになったんだ。夫婦であり恋人だよ、俺達は」

「つがい……」

「一時離れているのも、切なく感じ、恋しく思ってしまう。比翼連理の関係だからな」

ほんの一時でさえ、永遠のごとく感じ離れがたくなる

一対の存在。運命なんて陳腐な言葉で言うのも癪だが、

きっと、相違ないと、思う。

ルシアは、クライヴが、自ら掴み取った運命だ。

「あ、甘いことばかり言うんですから」

「ルシアが言わせてるんだよ」

手首を取って、キスをした。ちゅ、と音を立てて吸い上げる。

ぶるり、と震えた背中を撫でた。

ルシアは、クライヴが、どう触れても、敏感な反応を返す。それが、彼を調子づかせるとは、

気づきもしないで小さく声を漏らすのだ。

「……恥ずかしいことばかり、するようになりましたね」

「恥ずかしいのか……これくらいで」

「だ、だって」

全身に隈無くまなく、口づけの痕を残すのは、常の日々で、手首にキスしたくらいで、

今更何を言っているのか。

「……可愛すぎてめまいがする」 

「あっ……」

口付けていない方の手首を取ると、

きつく吸い上げる。

「これは、俺の欲望だよ……」

情欲を表すキスだと、耳元に息を吹き込む。

「昼間から、いけませんよ」

「そんな、弱々しい声で抗っているつもりか」

クライヴは、か細く震える声にさえ、

煽られるというのに。

どこか、甘く艶めいている声を聞くと、身の内に宿る炎が

一気に燃え上がってしまう。

「……私の欲望まで焚きつけてしまうのだから」

「それは、本望だな」

くっ、と笑って、さらに手首から手の甲、手のひらまで、唇を滑らせていく。
指の先まで吸い上げたら、吐息はさらに

甘く弾む。肩から背中、腰骨を撫でさする。

ふわり、柔らかな金の髪も指に絡めながら。 

「ん……ふっ」

ちゅ、軽く啄んでは離す。

角度を変えてキスを落とす。

ささやかなキスは、切ない余韻を残し、この先の行為を

焦がれてしまう。お互いのすべてを知るもの同士深く求め合いたいと、心が、疼き出す。

「あ……」

「どうした? 」

クライヴは、肩に唇を沿わせながら、問う。ひどく甘く、

いやらしく聞こえるように。

「意地悪……」

「何が意地悪なんだ。ちゃんと言わないと分からないな」

ルシアの腕が、クライヴの背中に回される。

どくどく、と早鐘を打つ鼓動が聞こえてくる。

興奮で、クライヴの呼吸もひどく乱れていた。

「欲しいんです……あなたが」

震える声で言われると、たまらなくなる。

クライヴは、自らの失態を悟った。

今すぐ、ルシアの膣内ナカで、暴れて、欲を吐き出したいと、衝動が起きてしまう。
きっと、長く保てなくて、 

彼女に失望されてしまうかもしれない。

心地よく包み込まれたら、呆気なく達イって、しまう。

男の矜持なんて、脆く崩れ去ってしまうだろう。

彼の葛藤を知ってか知らずか、ルシアは身を擦り寄せてきた。

衣服を介していても伝わってくる柔らかさ。

「……くっ」

「あ、だめ、いきなり」

クライヴは、ルシアのワンピースをたくしあげると胸元にむしゃぶりついた。
ふくらみに歯を立てて、舌でなぞる。 

ふくらみを揉みしだき、下腹部に指を忍ばせた。

とっくに、濡れそぼっていたそこからは湿った音がする。

「……んん」

じゅ、ると音を立てて、ふくらみを愛でる。

赤く硬くなったそこは、クライヴにより汚されている。

もどかしげに両脚を動かすルシアを自らの身体で、
押さえつけたクライヴは、いっそう激しく彼女を攻め苛み始めた。 

白い肌が、光に照らされてさらけ出されている。

ルシアは、痴態をあますことなく、視界に入れられていても、

抵抗する様子もない。クライヴに、侵略されていくのを

受け入れている。うっとりとした表情に、思わず喉が鳴った。 

聖女の風情でとんだ魔性だといつかも思ったが、

クライヴを惑い、狂わせるのだからそう称されても仕方がないのだ。
薄く唇を開いてたから、舌を絡めたキスをする。

自らの腰を衣服越しに押しつけながら、欲を煽り立てる。

(理性なんてなくして、溺れてしまえばいい)

じれったくなったのか、ルシアは、クライヴの背中に爪を立てた。
長衣を纏った姿の彼を恨めしげに睨んでくる。 

瞳から涙をこぼしながら、訴えていて、その吸引力は抜群だった。

「俺の方がお前を欲しがってるって、教えてやる。

煽ったことを後悔しても遅いからな」

クライヴは、ルシアの身体を跨いだまま、纏っていた長衣を脱ぎ放った。
裸身をさらした彼を食い入るように見上げるのは、

清らかでいて、本能に忠実な乙女。

「早く……来て」 

「……お前」

クライヴは、無邪気な誘惑に、抗えるはずもなかった。

ふくらみに手のひらを置いたまま、一気に突き上げる。

甲高い声が、上がった。ルシアの膣内ナカは、

うねっては、彼を強く締め上げた。

一気に高まる性感に、クライヴは、腰の動きを早める。 

「……いいのか、さっさと終わってしまっても? 」

余裕なんて一切ないが、強気に問いかける。 

ぶるぶると首を横に振るルシアは、頬を朱に染め、 

唇の動きだけで、いやと伝えてきた。

「なら、締めんな、俺のを嬉しそうに咥え込みやがって」 

「……し、してない」

「……この勢いだとさっさと2人目ができるぞ」

「え……」

「1度で終われるはずがないんだから」 

「はぁ……ん」

迫り来る射精感を堪えつつ、突き上げる。 

奥に擦り付けるように動くと、ルシアも腰を揺らした。  

片脚をかついで、貫く。  

いつまでも、この膣内ナカにいたい。 

ずん、と突き上げながら、クライヴは吐息をつく。 

「あ、あ、クライヴ……そこ、やっ」 

「いいんだろうが。身体は十分素直だぞ」  

ゆっくりと、味わうように先端で突くと、

ルシアはまた、啼いた。

「……クライヴ、一緒に」

すすり泣くルシアは限界を訴えていた。

クライヴは、煽られるまま、一気に奥まで貫いた。

少し長めに、吐精したあと繋がりを解かないまま、

ルシアの身体にもたれかかった。

絡みつく指が、優しく彼の背中を撫でた。

瞳から、涙をひとしずく落としてルシアは、

のぼりつめた。

それから、意識を目覚めさせたルシアの望み通り、

幾度も腰を振って、昂りで突き上げた。





日が暮れかけた頃、呆れるほど抱き合ったつがいは、

目を覚まし、もう一度寄り添った。

「今日の夜は、ぐっすり寝ちゃいそうです」 

ルシアの言葉にクライヴは、くす、と笑い、

彼女の身体を強く抱擁した。

「じゃあ、俺がアルフの面倒を見ててやる」

「……まあ、ありがとうございます」

妻であるが、母親でもあるルシアを昼間から、

抱きつくし、疲れさせてしまったことへのせめてもの

詫びだった。
魔術師とはいえ、引きこもりを卒業した彼の

体力は、昔のように回復し、女性であるルシアを

いたわるくらいの余裕はあった。

底なしの体力だから、1週間ルシアを抱いて過ごしても、身体は疲弊しない。
少し休めば快復する。

そんな欲望のままに、過ごさないのは、

彼女を愛していて、壊してしまいたくないからだ。

望めば答えてくれるかもしれないが、

クライヴは、決して身体が欲しいわけではなく、

ルシアの心身が健やかであるのが一番だと考えていた。

(子供を望まないなら、抱き方を変えればいいのだが)

「愛している……」

「はい」

夕闇に照らされながら、キスを交わす。

欲の絡まない、愛情のキスを。

ひとしきりキスをしたあと、クライヴは、ルシアの身体を抱き上げた。
サンルームの隣にしつらえた浴室(バスルーム)

に連れていくために。

「もう、だめですよ」

「わかっている」

釘を刺されたクライヴは、浴槽(バスタブ)の中で

肌を慈しむだけに留めた。
忠告されずとも、もう、抱く気はなかったのだけれど。



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