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エルビスでの怪しげな動き
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エルビス地下研究所。
「左脚部のE58回線への魔力供給順調です。次に右脚部のH56回線への魔力供給を。」
「頭部にブレインの魔力石搭載完了。起動テストを開始します。」
「右腕部、および左腕部への強烈な魔力負荷を確認。担当者は速やかにチェックをお願いします。」
広大な敷地を持つ地下実験施設にて、何百という黒いローブを着た者達が集まり、何か怪しげな物を創っていた。
“それ”は巨大な人型の物体で、背には巨大な翼を背負っている。肌の色は吸い込まれそうなほど黒く、最早影と言っても差し支えないものとなっている。
暫くして、“それ”の胸部らしき所に、十字架に磔にされた青年が数人のローブを着た者たちによって運び込また。
「~~・・!」
一人の男が呪文を唱えた瞬間、“それ”の胸部はまるで生きているかのように動き始め、あっという間に十字架ごと青年を取り込んでしまった。
「胸部への動力源への搭載完了しました。」
作業員の一人が、葉巻を吸う恰幅の良い男に作業状況を報告し、男は報告に対し満足げに頷く。
「よし、起動に必要とされる魔力石の数は?」
「約一トンあれば大丈夫かと。今まで“最高指導者”から抽出した魔力もあるので多少の誤差はなんとかなります。」
「では早々にあの森を焼き払わねばな。侵攻の状況は?」
恰幅の良い男が傍らに控えていた黒いローブを着た男に尋ねる。
「何者かが森に入るのを妨害しているそうで進んでおりません。なので軍が到着するまで待機を命じました。」
「よし、ならば軍隊が到着したところで森に火を放ち、出てきたところを包囲、殲滅するのだ。」
一通り指示を出したところで、恰幅の良い男はふと何かを思い出したかのように隣にいた黒いローブを着た男に尋ねた。
「そういえばエルビオンの奴に再三送り込んだ使者はまだ戻ってこぬのか?あやつめ、折角蘇らせた恩も忘れて軍も寄越さないとは。」
「その件に関してですが、その使者が戻って参りました。お連れしましょうか?」
「うむ」
暫くして、後方にあった扉から他の者たちと同じように黒いローブを着た男が入ってきた。
男は入るなり、恰幅の良い男の前に跪き、こう述べた。
「報告いたします。エルビオン王は早急に一万人規模の軍を送るとのことです。森に到着するのは明日の夕暮れ時だそうです。」
「何故遅れたのか。エルビオンは言っておったか?」
「は、王家に伝わる絶対王政なるスキルを掌握するのに時間がかかったと申しておりました。」
「ああ、言っておったな。あれさえあればイザベルの軍はおろか国民すらも思いのままだと。」
「はい。そうでもしなければ反乱の可能性があると申しており、遅れたことをここに謝罪すると申しておりました。」
「分かった。さがれ。」
「はっ!」
使いだった男は入ってきた扉から出て行く。
「お前も下がれ。・・・いや、お前には前線指揮に行って貰おう。すぐに準備せよ。」
「仰せのままに。エリスガル伯爵。」
恭しげに礼をした後、恰幅の良い男に付き添っていた黒いローブを着た男は、音も無く消えた。
「ククク・・・我が計画が成就するまであと少しだ・・・」
恰幅の良い男、エリスガル伯爵は誰もいない部屋の中で、着々と完成の近づいている“それ”を見て怪しげに笑った。
「左脚部のE58回線への魔力供給順調です。次に右脚部のH56回線への魔力供給を。」
「頭部にブレインの魔力石搭載完了。起動テストを開始します。」
「右腕部、および左腕部への強烈な魔力負荷を確認。担当者は速やかにチェックをお願いします。」
広大な敷地を持つ地下実験施設にて、何百という黒いローブを着た者達が集まり、何か怪しげな物を創っていた。
“それ”は巨大な人型の物体で、背には巨大な翼を背負っている。肌の色は吸い込まれそうなほど黒く、最早影と言っても差し支えないものとなっている。
暫くして、“それ”の胸部らしき所に、十字架に磔にされた青年が数人のローブを着た者たちによって運び込また。
「~~・・!」
一人の男が呪文を唱えた瞬間、“それ”の胸部はまるで生きているかのように動き始め、あっという間に十字架ごと青年を取り込んでしまった。
「胸部への動力源への搭載完了しました。」
作業員の一人が、葉巻を吸う恰幅の良い男に作業状況を報告し、男は報告に対し満足げに頷く。
「よし、起動に必要とされる魔力石の数は?」
「約一トンあれば大丈夫かと。今まで“最高指導者”から抽出した魔力もあるので多少の誤差はなんとかなります。」
「では早々にあの森を焼き払わねばな。侵攻の状況は?」
恰幅の良い男が傍らに控えていた黒いローブを着た男に尋ねる。
「何者かが森に入るのを妨害しているそうで進んでおりません。なので軍が到着するまで待機を命じました。」
「よし、ならば軍隊が到着したところで森に火を放ち、出てきたところを包囲、殲滅するのだ。」
一通り指示を出したところで、恰幅の良い男はふと何かを思い出したかのように隣にいた黒いローブを着た男に尋ねた。
「そういえばエルビオンの奴に再三送り込んだ使者はまだ戻ってこぬのか?あやつめ、折角蘇らせた恩も忘れて軍も寄越さないとは。」
「その件に関してですが、その使者が戻って参りました。お連れしましょうか?」
「うむ」
暫くして、後方にあった扉から他の者たちと同じように黒いローブを着た男が入ってきた。
男は入るなり、恰幅の良い男の前に跪き、こう述べた。
「報告いたします。エルビオン王は早急に一万人規模の軍を送るとのことです。森に到着するのは明日の夕暮れ時だそうです。」
「何故遅れたのか。エルビオンは言っておったか?」
「は、王家に伝わる絶対王政なるスキルを掌握するのに時間がかかったと申しておりました。」
「ああ、言っておったな。あれさえあればイザベルの軍はおろか国民すらも思いのままだと。」
「はい。そうでもしなければ反乱の可能性があると申しており、遅れたことをここに謝罪すると申しておりました。」
「分かった。さがれ。」
「はっ!」
使いだった男は入ってきた扉から出て行く。
「お前も下がれ。・・・いや、お前には前線指揮に行って貰おう。すぐに準備せよ。」
「仰せのままに。エリスガル伯爵。」
恭しげに礼をした後、恰幅の良い男に付き添っていた黒いローブを着た男は、音も無く消えた。
「ククク・・・我が計画が成就するまであと少しだ・・・」
恰幅の良い男、エリスガル伯爵は誰もいない部屋の中で、着々と完成の近づいている“それ”を見て怪しげに笑った。
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