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本来の目的を忘れてはいけません

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とりあえず、氷室の無くなった腕が生えるかどうかは分からないが、2人には基本的な治療はしなくてはならない。

「ちょっと痛いかも知れないけど我慢してね。」

「・・・平気だ。」

氷室はそう言って目を瞑り、歯を食いしばる。私は持っていた布を水で湿らせ、傷口周辺の汚れを落としていく。改めてみると、本当に肘から先が途中から何かに食いちぎられたかのように無くなっている。風間によると木崎がやったらしいけど・・・

「お、おいちょっと止めろよ・・・いつつ・・・」

「キュン!」

タマミは風間の頭の上でじゃれつつ風間に治癒魔術を掛けている。風間は怪我が軽いのでタマミの治癒魔術だけでなんとかなりそうだ

「よし、じゃあタマミ今度はこっちお願い」

「キュオン!」

最後にタマミに治癒魔法を掛けて貰い、包帯を巻く。氷室の方はとりあえずはこれでなんとかなるはずだ。

「よし、完了。余り無理はしないでね。」

「ああ、わかった。礼を言う。」

ぶっきらぼうに言いながらタマミを撫でる氷室。

「じゃあ、迎えにヘル・ウルフが来ているからそれに乗って南の方にある森へ逃げて。そこには妖精が居て、ちゃんとした治療をしてくれるはずだから。」

「・・・分かった。」

氷室はなんだか残りたそうだったが、結局風間に押し切られるように承諾した。

こうして風間と氷室の2人も戦線を離脱した。

・・・・・

・・・

「タマミ、とれた?」

「キュオン!」

タマミの前脚には風間の髪の毛が絡まっている。そう、こんな時でも本来の目的を忘れてはいない。転生者の髪の毛回収。治療のついでにさせて貰った。氷室の方は血だけど。

ちょっと・・・いや、かなり罪悪感はあったけど、怪我をして気を失っているほかの転生者達もやらせて貰った。滝隆二や砂原、一樹の方も回収済みだ。後は木崎の物だけ。そちらは幼女(妖精)の方に期待するしか無い。

私は花畑の端の方へ行き、アトロポスさんに連絡を取る。

「とりあえず、木崎以外の髪の毛は集め終わりました。これからどうしましょう?」

『お疲れ様です。こちらも木崎悠馬の解析が終わりました。』

木崎の解析?そんなことやっていたの?

『木崎の暴走はやはり予想通り体内に多くのスキルを取り入れたことによるものでした。現在はまだ落ち着いている方ですが・・・』

落ち着いている方って・・・氷室は腕を食いちぎられているんだけど。

そうだ、風閒が気になることを言っていた気がする。たしか、暴走しているはずなのに魔法を一回も使わなかったとか何とか・・・

『どうやら取り込んだ暴食のスキルが魔神の力を初めとした魔法関係の力を封じているようです。なので今木崎に発現し、暴走しているのは暴食スキルのみのようです。』

そ、そうなんだ・・・まだまし・・?なのかな?

『そうですね。魔神の暴走があればその森周辺は吹き飛んでいます。ただ、暴食スキルが押さえ込んでいる時間もそうありません。なので早めに木崎の体の一部を回収してください。姉様達もそちらへ行く準備は完了しています。必要とあれば呼んでください。』

そう言ってアトロポスさんからの電話は切れた。
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