モブですけど!

ビーバー父さん

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「僕は蒼月なんてものじゃなく、この自由恋愛の世界で、相愛の人と一緒になって、最期は一緒のお墓にって言うのは本当の気持ちだから、君が守護者である以上全てが潔癖じゃなくても良いと思ってる。
 だってね、神様だって失敗するんだ。 
 なら、僕らだって失敗もするし、多少の悪さや知らないうちに誰かを傷つけるって言うのもしょうがない部分だと思うよ。」

「ですが、私は聖獣なのに捕まって、その力も発揮できないまま悪事の加担をしたのです!!」

「うん、なら聖獣って普通の獣になるとかなんかあるの?
 今僕の側にいて、聖獣の力を取り戻してるって、そう言う事なんじゃないの?」

 この子の気持ちも分かるけど、生きてる以上何かしらの過ちは毎日してると思う。
 選択することが生きる事だから。

「私は許されてるのでしょうか?」

「誰が許す、許さないで言うなら、僕は許すよ。
 生きるための手段に、これが正しいなんてのは無くて、今、君が生きてここにいる事が正しいんだから」

 聖獣はポロポロと涙を流して、むせび泣いた。

「よしよし、今までよく頑張って生き抜いてくれたよ。
 僕に会うまで頑張ってたって事でしょ?
 長い間、頑張らせてごめんね。」

「いいえ、蒼月様のせいではありません。
 私が未熟で、迂闊だったのです。」

 真面目だし、賢い。
 どっかの緑頭とは全く違う。
 本来の守護者って立場の者の考え方ってこっちじゃないかな、うん。

「僕は蒼月として生きたくはない。
 それを前提に、僕の守護をしてくれないかな?
 もっさりが嫌だって、緑頭みたいに言うなら、それはまた別な話なんだけど」

「とんでもない!!
 蒼月様はお美しく、優しい慈悲深い方です。
 そのお姿をお隠しになってるいるのも、理由を聞いて納得しております。
 私をおそばに置いてくださるなら、必ずや、貴方様をお守りすると誓います。」

「うん、ありがとう。
 じゃぁ、君の名前を決めて良いかい?」

「はい!」

 白くて大きな体躯、大神の読み名でオオミワ、でどうだろう?
 毎回名前のセンスが無いなどと言わせない。
 今回は、壮大なスケールの意味があるのだ!

「大神の読み名でオオミワでどうかな?」

「はい、オオミワの名を拝命いたしました。」

 緑頭の時と同じように、金環が現れて、オオミワの額にピタリとはまった。

「うん、ミワ、これからよろしくね」

 ミワは僕のほっぺたをペロンと舐めた。




 生ハムの仕込みをしたかった事を思い出して、ソロミュール液を作っていた。
 飽和寸前の塩分に玉ねぎの皮、セロリの葉、ローレル、ガーリックを丸ごと上から潰しただけで鍋に投入して、ぐらぐらと煮立てた。
 黒コショウの粒を加えて、砂糖も舌の端に感じる程度には入れておく。
 ロース肉を粗熱を取ったソロミュール液に付け込んで、ビニール袋があればいいけど無いので、密閉できる入れ物に入れて保冷庫で10日ほど寝かして置く。
 この後は一度軽く塩抜きをしてそれから乾燥だけど、それも時間がかかるので今日はここまで。
 ベーコンを作るためのバラ肉も同じ手順で漬けておく。
 これだけで、数週間後には美味しい生ハムが食べられるのさ。

 おやつ用にカスタードクリームを作るのに出た、卵白でメレンゲクッキーを作ると緑頭が匂いに引き寄せられて来たので、先にミワにあげると、しおしおと泣きやがった。

「緑頭はさ、精霊なのに何でそんなにおやつとかご飯が好きなの?」

「私は、ラグの作る物が好きなんだ。
 無意識だろうが、魔力が込められていて、体がとても軽くなる。
 ミワもそうであろう?」

「癒しと言うか、我らに必要な魔力、世界樹の魔力を感じます。」

 ミワは本当に真面目だね~。
 
「そうか、無意識に魔力が練り込まれちゃってたのかぁ。」

 ミワが喜ぶなら、とメレンゲクッキーあげちゃったけど、犬とかってこういうの食べて大丈夫なのかな?



 夕方近くになって、パパとセバスチャンが漸く帰宅した。
 渋い顔なのは、何か良くない知らせを持ってると言う事だ。
 昼間、ミワを助けた事を言い出すにはタイミングが悪い気がしたので、僕は寝室にミワを入れて二人の様子をうかがった。
 
「何があったのですか?」

 鶏肉を叩いて、薄く伸ばした間にチーズを挟んで何層かにした物を、多めの油で揚げ焼をしたカツレツを出した。
 スープは朝の残りを温め直して、サラダはサッと茹でたキノコをお酢と塩、マヨネーズにはちみつを加えて作ったドレッシングで和えた物を出した。
 パンは少し硬めのフランスパン系の物にした。

 テーブルに付きながら、二人は苦い表情を崩さない。

「さぁ食べましょう、お腹が膨れればいい案も浮かびますよ」

「ラグ、私たちがジョーハンの王宮で暮らさないといけなくなった。」

 思ってもない事が、嫌どこかでそんな事が起きてもおかしくないって覚悟はしてた。
 貴族社会って変に理不尽なんだから。

「ラグを一人に出来ない」
「パパ、僕は一人じゃないよ。
 緑頭だっているし、あ、そうだ、僕紹介したい子がいるんだ」

 そう言うと、二人は、顔色を失くした。
 なんでだよ?

 
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