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しおりを挟む「同じ伯爵家でも、カスターノは王族の血筋を持っている。
片や、伯爵になったのはメリア家との家格を揃える為に陞爵したんだ。
元々は男爵でしかも商人からの叙爵だ。
だから一代限りのはずが、ガーム国のメリア家と輸出入で繋がり、ドアイスに当時貴重だった胡椒などのスパイスを潤沢に流通させる事が出来たのはメリア家の娘が嫁いで来たからだ。
だが、今、スパイスは自国でも栽培が成功し、メリア家の影響はほぼ無い状態だ。
功労は認められたが、家督を継承する事は無いとなった。
ならば、一代限りの伯爵で子供達を平民にするのをどうにかするには、貴族の元へ嫁がせる事だ。
そうすれば、爵位が剥奪される事はまず無くなる。
家格を重んじる貴族界では、実家が平民では許されないからな」
それはロッシの叔父とやらが少しでも良い様に繋がりを持ちたくてセレニアをリカルドに充てがったのと同じだ。
「それなら、ゲオルグは巻き込まれただけで、破棄も有効でしょ?」
パパは困った顔をしながら、首を振った。
「一方的な破棄ではあったが、その後自殺未遂をした事で慰謝料としての婚姻を求めて、何年も揉めているんだ」
そんなのおかしいよ。
「なんで?
家格がカスターノの方が上なら、破棄されても受け入れるしかないでしょ?
それなりの慰謝料はあるだろうけど、自殺未遂で婚姻なんて誰も幸せになれない」
「そうだ。
それを法廷に持ち込んでは棄却されている」
「なら、どうしてゲオルグを認めてくれないの?」
頭では理解していた。
パパは親心で揉め事を抱えたカスターノと今、伴侶として認めるわけにはいかない、と言う事を言っていた。
「ラグ、今はダメだ。
ゲオルグが、カスターノ家がカイサル家と決着をつけて、初めて口に出せる事だ。
メリア家がガーム国の伯爵である以上、無下にも出来ないんだ」
僕は呆然とした。
そして、悔しくて悔しくて、涙を流した。
「ラグノーツ様、私がその憂いを晴らしましょう」
アシッドが綺麗な笑顔で、どす黒いオーラを醸し出した。
「だめ、だよ。
アシッド……」
パパが僕を膝に乗せていたのは、慰めるためにただ抱きしめてくれる為にだったんだ。
横抱きにしたまま、ゆっくり背中をさすってくれた。
「パパもラグの望む様にしてあげたいよ。
だけどゲオルグは、まだダメだ」
「ちゃんと、ゲオルグと話したいから、ここに呼んでいい?」
「パパからもちゃんと話そう。
ゲオルグがカスターノ家に戻り話し合うしかないだろう」
離れたくない。
前世のトラウマが蘇ってきた。
「私がゲオルグ先輩を呼んで来ましょう」
セバスチャンがお湯から出て、ゲオルグを呼びに行った。
「ラグ、泣かないでくれ。
今じゃない、それだけだ」
僕はまるで赤ちゃんみたいに体を丸めて、パパに抱っこされていた。
セバスチャンに呼ばれて、ゲオルグは物凄い勢いで走って来た。
「待ってください!! ゲオルグ先輩!」
「待たん! ラグ!」
ゲオルグはパパ都の話し合いが出来る、先ずそこに喜びを感じたようで真っ先にパパに向かって貴族の礼を取った。
「レイラント・ドアイス辺境伯爵、お願いがございます!」
響き渡る声で、ゲオルグがパパに言うと、聞いているとだけ答えた。
「でしたら!」
「君はまだ、決着がついていないんじゃないかい?
まずはカスターノ家に戻って、マルロイ・メリア・カイサル令嬢と伯爵家として決着をつけて来なさい。
話しはそれからだ」
丸まって泣いていた僕は、ゲオルグと離れたくなくてパパの胸から手を伸ばした。
「ゲオルグ、離れたくないよ」
「ラグ、ラグ」
パパはその腕を放してくれて、ゲオルグの胸に抱きしめられた。
「二人とも、責任とはそう言うものだ」
パパの言葉は当たり前のことだった。
「ラグ、泣くな。
私はちゃんと、決着をつけて戻ってくる。
だから待っていてくれ」
「ぅっ、ん、うん、ゲオルグ
僕、僕は、待たない、よ。
その、約束は出来ないから」
泣き笑いでゲオルグを放した。
だって、僕はいつフラグが回収されるか分からないし、もしかしたらゲオルグだって……。
涼みたいに、なってしまうかもしれない。
次男なら家督の為に女性を迎え、子を成す事が半義務でもあるから。
「ちゃんと、したら、もう一度迎えに来て」
まだ大人にならない僕では隣に並ぶのも早すぎるから。
「ラグ、必ず、必ずだ」
「うん、大好きだよ」
「あぁ、愛している」
パパの前だったけど、僕たちはキスを交わした。
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