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しおりを挟む「エリ、分かった」
震えるエリの手を握って、僕は金髪に向き直った。
「くそ! 不細工な癖に!」
「そうか、僕からしたらお前も十分不細工だと思うぞ。
作りじゃなく、中身がな」
アシッドとセバスチャン、それにパパが金髪に切りかかった。
「ラグ、避けなさい!!」
パパがそう叫ぶと、滅多やたらに切りかかっていた。
あっぶな~!!
何だよ、これ!
パパってバーサーカーだったの?
それなら剣を認められなかったって言うのも分かるわ。
ヤバイヤバイ、これ味方も何もかも切り捨てる奴だ。
何をもって切りかかってるのか……。
色? 動き?
「ぐぁっ!!」
金髪の腕にザックリと剣が突き刺さり、赤い血が流れ出ていた。
「まさか、この体に傷をつけられるとは!
お前は何者だ!」
全力疾走した獣のように、息を荒くつくパパが突き刺した剣をさらに奥へと突き刺し、金髪は叫びを上げていた。
「ふー、ふー! 貴様、ラグに触ったな?
その小汚い裸で、ラグのベッドにまで!
アシッド、殺せ!
こいつを殺して捨ててこい!!」
パパの怒りはそこだったか!
うんうん、なんか分かってたつもりだったけど、エリの事で話が逸れちゃってたんだよね。
アシッドは嬉々として、押さえつけていた魔法を解放した。
闇魔法の反動がどれだけあるのか分からないけど、アシッドはそれさえも僕のそばで使えるなら幸せだと豪語していた。
「ラグ様のお美しい寝顔を見た罪!」
闇魔法の黒いオーラが金髪の顔をザックリ切り裂いた。
「ラグ様のベッドで小汚い体を見せた罪!」
上半身の胸に十字の傷が付き、時間差で血が噴き出した。
「ベッドに潜り込んだ罪!!
貴様が存在した罪!!
ラグ様に仲介させた罪!!
金髪な罪!!
バカである事の罪!!」
殆ど言いがかりだろ、それ。
ドゴン!!
ドゴン!
ゴッ!!
ドガッ!!
「ぐぇ、ぶふぉぉっ!!」
あらゆる所から血が噴き出し、軽くスプラッタ状態な部屋になった。
「アシッド、もう、いい」
セバスチャンがアシッドを止めた。
「セバスお兄様、まだまだ未熟者で申し訳ありません。
つい、喜びの方が勝ってしまい、遊びすぎてしまいました」
片膝をついて、セバスチャンに謝罪をしたアシッドが次にしたことは、部屋を綺麗にする事だった・
そこか、そこなのか?
「セバス、アシッド、こいつをどっかに捨てて来い」
僕も大概かも。
「ま、マスター、も、もう、許してあげて、ください」
エリが僕らを止めた。
ん-、もう少し早く止めてくれたら良かったのに。
「エリ、お前はこいつに嫌いだと言った。
本当か?」
「う、うん。
でも、こんな風に傷つけたかった訳じゃない。
痛いのは、嫌だもん」
名前を付ける前に思考がもどちゃってんじゃん。
「そうか、良い子だな」
その背中をポンポンと叩いて、安心させるようにした。
「おい、金髪、話せるか?
まだ、死ぬほどじゃないだろ?」
「な、なんだ」
息を上げて、返事をする金髪に、エリを傷つけないと約束をさせて、治癒魔法をかけた。
「お前を拘束はしない、そして、これからの事も」
「いえ、私にも名を頂けないでしょうか、決して貴方様に牙をむく事はありません!
どうか! どうか!
私にもニーズヘッグとしての役割を!」
「……。
お前は、その役割で何をする?」
「この大地を守るアースドラゴンを支える者になりたい。
私の牙は、狩る者。
そして、ユグドラシルを滅ぼし、新たな世界の礎として大地を支える者」
それは世界樹が地に根を張っていた時のようなものか。
「既に、エリの力で大地は守られている。
お前の力はいらない」
エリがおろおろして、周りを見る。
「では、ロッシの暗部で使いましょう」
セバスチャンが割って入って、暗部への提案をした。
「世界樹を滅ぼすための牙なら、魔に対してかなりの効果があるのでしょう?
ならば、その牙をラグ様を陰から守る為にお使いなさい」
ならば、とセバスチャンとアシッドが魔力を練り合わせて、二人から名付けさせた。
「では、アモ、お前をアモと名付ける」
アモの名前を貰った金髪は、エリの時とは違って、特に何か変化があった訳では無かった。
「良かったな、エリ」
「マスター!」
僕よりデカいオネェにぎゅうぎゅうと抱きつかれて、息が止まりそうだとタップした。
そしてアモ、と名付けられた金髪はロッシの監視下に入った。
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