モブですけど!

ビーバー父さん

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「うぅ」

 鼻水をズビズビやって、ひとしきり泣いたら何だかスッキリした。
 
「ラグ、もう顔を隠す必要も、私達を苦しめていたボンクラや王弟殿下の影響は、もう無くなってる。
 三人の息子たちに爵位も譲って、新たに爵位を授かってあの子らはラグに何かをする理由も無くなった。
 一度、社交界にデビューしてみないか?
 ラグを想ってくれる人が現れるかもしれない」

「パパは何でそんなに僕を貴族にしたいの?」

 擦った目元が痛いわ、熱いわ、恥ずかしいわ、アシッドが冷たいタオルを持ってきてくれたから、目に当てたまま聞いてみた。

「だって、親子って言って貴族連中に自慢したいんだもん」

 だもん、て……。

「パパ、だもん、はやめて。
 カッコいいのに、だもん、てやだよ」

「じゃあ、パパの自慢の可愛い息子をお披露目したいから、一度だけで良いからデビューしようよ」

 一度だけって、デビューが何回もある訳ないじゃん。

「デビューは一度しかないんだよ」
 
 パパの膝の上で、その胸に頭を押し付けて、何言ってんの! と突っ込んだ。

「はははは!」

「もうっ、分かった!
 貴族に戻って、貴族として暮らすのは無しだからね?」

「それでもいい。
 ラグを私の息子として、堂々と連れて歩きたいから」

 パパも僕を可愛がるって出来なかったから、余計に希望してるんだって言うのも良くわかるし。

「ここからなら、ドアイス国へ帰るのにどのくらい?」

 周りを見て聞くと、セバスチャンが大体ひと月で到着すると言った。

「ひと月もあれば、ラグに貴族のマナーを教えられるな」

 パパから貴族のマナーと言われて、すぐ後悔する事になった。

 まともに、貴族のマナーなんて勉強してないよ。
 平民になる事しか考えてなかったもん。

「ラグ様、大丈夫ですよ。
 私も旦那様も教えられますからね。
 明日からビシビシ行きますよ、楽しみです」

 セバスチャンの妖艶な笑いが怖かった。






 船の中で食事のマナーから挨拶や、歩き方、それに笑い方まで! まだ礼の取り方とかなら分かるし、ダンスの練習もすべきとは思うけど! ダンスパートナーが女性とは限らないから、どちらも踊れるのが嗜みだとか!
 トホホだよ。

「明日は数時間ですが、物資調達の為に寄港しますが、入国は出来ませんから下船してはダメですからね?」

 セバスチャンに何度も念押しをされた。
 初めて寄る国は何と、獣人の国でドアイスとはこれから交易が始まる国なんだとか。
 パパの辺境伯としての仕事の一つでもあるらしく、パパは港湾の偉い人と会食だそうだ。

 何が出るんだろう? いいなぁ。
 どんな料理が出るのか、どんな食材が出るのか、物凄く気になったけど流石に不法侵入、もとい、不法入国は出来ないので、侍従として着いて行くセバスチャンにどんな物だったか、しっかり見ておくようにお願いした。

 パパの食レポはイマイチなんだよね。
 あー、ヒューゴとかも上手いけど、護衛騎士は会食会場の外だったり、壁際だったりで見るのも下手したら難しいし、ここはやはりセバスチャンしかいないか。

 うーん、うーん、と唸っていたら、緑頭がヒョコッと出てきて、チビ達使って見たらいいと言った。

 その手があったかー!!

「緑頭! 最近凄いじゃん!
 あとで、コンポートしたフルーツ使ってゼリーを作ってあげるからね!」

「ほんとか!?」

 あ、相変わらずの緑頭でした。

 ナニソレ、ご褒美欲しくて頑張ってました感。
 まあ、緑頭だしな。

 パパにチビ達を連れて行って貰って、船の中で映像と会話を聞く事にした。

 夜になり、パパ達は礼服に着替えて船を降りて行こうとして、僕に更に念押しした。

「ラグ、この国の入国許可は無いから、絶対に出ちゃダメだからね。
 船の中なら治外法権で守られるから。
 いいね?」

「はい、大丈夫だからチビ達を連れて行ってね」

 甲板からパパとヒューゴ、セバスチャンを見送った。
 

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