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しおりを挟む「法的に花嫁にはなれません!!!
僕はドアイスの人間です!」
違った!!! そこじゃない!!
「ぶっ!!!
ラグ君、この国、正式にはロアルド共和国って言うんですけど、法的には十五歳以上なら親の許可なしに婚姻できます。
それ以下なら、親同士が許可して初めて婚約期間を経て、婚姻します。
ね? 郷に入っては郷に従えって言うじゃないですか」
白い軍服に金の飾りがついた花婿の衣装を見て、少し見惚れたのは失敗だった。
「おや、この私の姿は気に入っていただけましたか?」
「違う! うちのミワの方がカッコいい!!」
「あぁ、あの時連れて来られていたフェンリルですね。
魔獣でもフェンリルは上位種ですし、賢いですから従魔にするのは大変だったでしょう」
ミワが聞いたら激怒ものだな。
聖獣に向かってフェンリルと同等に扱うとは!って感じで。
でもこのセリフを聞いて、僕は蒼月だからサリエルに狙われたんじゃないんだって理解した。
なら、何故?
ゲオルグが冒険者だと知ってるって事と、意外にも不意打ちや身体の強化や魔法にも慣れていたのは?
あぁ、分かった。
サリエルも冒険者なんだ。
「ランクは幾つですか?」
「ん? なんの話し?」
すっとぼけてるか。
「あそこのギルマスは色々おしゃべりでしたし、妹可愛さにやらかし過ぎてましたよね?
ゲオルグの子供を産むって言ってましたし……」
「相手にはしてなかっただろ?
ゲオルグが冒険者になった理由は好きな子を探し出すため、だったしね」
ほら、知ってた。
「あなたも同じSランクですか? いや、それ以上か」
ゲオルグの結婚式に行くなんて辻褄が合ってるようで、合ってなかったんだ。
ガーム国と交流のある獣人国だとしても、王太子が他国のしかも伯爵程度の家の結婚式に出ること自体おかしかったんだ。
なら、サリエルはゲオルグの敵か味方か、その二択のどちらかだろう。
「ふふふ、私は冒険者ではないよ?」
「では!」
「しーっ、今からこの国でだけしか通用しない結婚式をするから、大人しくしておいで、子猫ちゃん」
サリエルの意味深な行動に翻弄されまくって、意識がゲオルグとの関係にしか向いていなかった。
「だから、僕を帰してください!」
「う~ん、結婚式がすんだらね、新婚旅行もいいかもね」
話がかみ合わない。
「ほら、時間だ。
君の御父上も呼んであるから安心して」
え? 僕がパパの息子だって知ってるの?
ってことはドアイス辺境伯の息子って事を知ったうえで?
ふいに抱き上げられて、暴れるのも忘れてそのまま部屋を後にした。
「ラグ君、君は十五歳だと言うのにずいぶん小さくて細くないですか?」
「ほっといてください」
抱っこされたまま、連れて行かれる場所にはパパたちが居るなら、ここから逃げ出すことも出来るはずだ。
うん? いや、蒼月として本気出したら逃げられるんじゃね?
なんでいつも本気出してないんだろう?
あ、いや、ユグドラシルの時は本気出した。
うん、すっごく本気出した。
本気出して帰ったら、ゲオルグが結婚しちゃってたんだよね。
あー、もう! このところ忘れてたのに! サリエルのせいで色々思い出しちゃったじゃん!
「ゲオルグは君のどこが良かったんでしょう?」
「は? なら、花嫁とか止めてくださいよ!!」
パパたちの顔が見えたら、マジでこの国滅ぼす勢いで暴れてやる!
「やんちゃだし、綺麗って意外あんまり使い道無さそうだし。
それに、辺境伯の息子って言っても養子かなんかでしょ?
やれやれですね」
なら抱き上げてんな!
「大きなお世話ですよ!
うちの家庭事情、放っておいてもらえませんかね?
拉致して花嫁にしようとしてんですから、分かってます?
国際問題ですよ!!」
「え~? 君って国際問題になるほどの重要人物とかじゃないでしょ?
ドアイス辺境伯ならまだしも、養子にそこまで情はないと思うんですけど?」
「そうですか。
じゃぁ、そう思ってたらいいじゃないですか?
僕は一人でも逃げますから」
獣人の力には及ばないし、装飾と思ってた物が魔法具で結構厄介だった。
「あ、ほら、もう皆さま待ってらっしゃいますね」
サリエルが指さす方を見ると、パパたちに加えてアシッドも騎士団の皆も来ていた。
「パパ! 離せ!!!」
「ラグ! 無事だったんだね!」
パパのわきでセバスチャンとアシッドが直ぐにでも魔法を発動しそうな勢いで、サリエルやら獣人の騎士たちを睨みつけていた。
「まぁ、落ち着いてください。
本日は、ちょっとした催しがあるんです」
結婚式とか言ってるこれだろ? ふざけんな!!
「サリエル、お前いい加減にしろ!」
聞き覚えのある声が、抱き上げていたサリエルから僕を取り上げて、抱きかかえ直された。
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