その執着は今更です。

ビーバー父さん

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奸計

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 ヌガーさんはここに居ると嫌なんじゃないの?って言われて、王室が追手を出してたら既に捕まってるだろうし、公爵が離婚を言い出したんだからきっとうまく王族にも言い訳出来たんだろうって思うと、別に痛くも痒くもだったけど、安否確認って言うのが気になった。
 もしかしたら、マカロン准男爵かもしれないと思うと、あの頃の辛さを思い出して古傷が痛み出した。

 数日だったけど女将さんに丁寧に手当てをしてもらって、大分良くなったのに。

「ねぇ、ルイ君、血が滲んで来てない?
 どっかケガしてる?」

 熊の様な大きい体で、意外と気遣いをするヌガーにちょっと笑ってしまった。

「大丈夫です。 
 昔からの傷が、なかなか治らなくて傷口が開いちゃうんです」

「それ、普通じゃないから! 
 神殿で治療してもらった?」

 当たり前のように神殿って言うけど、僕には神殿で治療をお願い出来る程お布施は無いし、まず外出するための服すらまともなものはなかった。
 
「俺ね、本当はルイ君の護衛兼監視役なのよ。
 国王陛下からの命を受けて、ルイ君をマカロン准男爵から守るために、モンブラン公爵は君と婚姻契約をしたはずなんだよ。
 だけど、ボンクラお子様公爵は話を理解してなかったために、公爵邸で冷遇される羽目になっちゃったんだよ」

 ヌガーはやっぱり、僕を監視してたんだ。

「公爵邸での冷遇はマカロンの息がかかった使用人が先導してたから、なかなか俺の所まで情報が来なかったんだ」

「大したこと無いですよ。
 痛い思いをしなかっただけ、幸せでした」

「違うよ、そんなの幸せじゃないよ。
 陛下は君を王位争いに巻き込みたくなくて、公爵に守らせるつもりだったんだ。
 なのに、思惑とは全然反対へと転がってしまった。
 だから、今度こそ、君が幸せだと思う所へ逃がしてあげたい、それが陛下の願いなんだ」

 ん?
 何で王位争い?

「話が見えません。
 国王陛下が何で僕を逃がそうとしてるんですか?
 それまではこのスキルが敵対するのを恐れて、囲いこみたかったのでは?」

「え? 囲い込みなんて誰から聞いたの?」

「マカロンと王弟殿下です」

 婚姻契約をする日の朝、マカロンから目立たずにいろと言われ、契約の直前にも直後にも王弟殿下から念を押されるように、王室はスキルを流出させたくないから王族に連なる者にしたんだって言われた。

「王弟殿下が、そうか。
 反目してるとは思っていたが、ルイ君の事を知っていてもおかしくないか」

「なんで僕が知らない事を知ってる風に話すんですか?」

「君の母上が、陛下の知り合いの様なんだよ。
 それは、王妃も王弟も当然ご存じと言う事だ」

 とにかく、この部屋から出て安全な所へと言われて、躊躇っていると俵の様に担ぎ上げられて、ヌガーは部屋を飛び出した。

 ガックンガックンと振られ、首も頭も舌も噛みそうだった。

「ルイ君が孤児院にいたのも、マカロンに勝手に養子にされたのも、全部、裏にいるのは王妃と王弟だって今分かったんだ!
 だから今はその身の安全が第一なんだよ」

「えぇー? 孤児院は別としても、マカロンの養子の話は僕の意志、……、じゃなかった。
 なんか追い詰められて、さもそうしないといけないように言われたんだ」

 建物の外に出ると、ぐんぐんと景色が変わって街からその外へ出た事が分かった。

「そうだよ、だから陛下は頭を悩ませたのさ。
 でも、まさか王弟が絡んでるとはね」

 走り抜けながら、途中で何かを切り捨て返り血を浴び、せっかく新調した服に血のシミが出来て行った。
 後ろ向きで良かった、と思っていたら、後ろから何人もの兵士が追いかけて来た。

「すまんな、もう少し我慢してくれ!」

 大剣をグルグル回し大旋風を起こすと一気に振り下ろし、追手の兵士も待ち伏せていた誰かも巻き込んで殲滅してしまった。

 この人本当に強い。

「さて、もうひと踏ん張りだ!」

 そして、ひと際鋭い口笛を鳴らすと、その口笛に答えるように次々と口笛がなり始めた。

「え、なに、なんなの?」

「さぁ、これが傭兵団カヌレだ」









 何でヒロインの私がこんなところに隠れなきゃいけないのよ。

 厨房の使用人に混じって皿洗いをしていると、ちょっと上から目線の上位の使用人のおばはんが、何やら料理人に瓶を渡していた。

 これってゲームにある毒殺系のイベントじゃないかしら?
 大分イベントが違う気がするけど、もしかしたらシークレットイベントかもしれないし。

 二人の動きを良ーく見ていると、思った通りスープに、ワインにと数滴ずつ入れて行った。

「だれか! これを陛下の所まで届けなさい!」

 ええ? ちょっと、陛下を毒殺しちゃったらまずいじゃない!
 私のこれからの動きに多大な影響が出ちゃうわ!

「私! 私が行きます!」

 挙手して立候補した。

 ふふふ、私が陛下を救った聖女になるのよ。
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