29 / 62
反逆
しおりを挟む
確かにこの人、いやこの方が神官長様なのだろう。
だが、強盗団と行動を共にしているのは解せなかった。
「ボンクラ公爵さんは本当に血の巡りが悪いなぁ」
大剣を自称副神官長の肩口にサクッと突き刺して、身動きできなくさせた上で馬上から降りてギモーブと対峙していた。
「まあ、ボンクラでしたから私も動きやすかったんですがね。
強盗団のくせに王弟殿下の命を受けた私に歯向かうという事は、王族に剣を向けたとみなしますよ?」
「ああ、構わねーよ。
だがな、俺たちが剣を向けたのは王弟殿下と、その後ろにいるもちっと、位の高い誰かさんなんだがな」
ムッとしたギモーブが、失敬なと吐き捨てた。
「フィナンシェ様と王妃様にと言うのですね?」
王妃も、か。
「ギモーブ! この件には王妃も与してるのか!?」
「与するなんて、愚かな。
王弟殿下フィナンシェ様は国王になるお方、そして王妃様は真の王妃になられるのです。
そして、憂いとなる王太子殿下も真の王太子殿下としてね。
お世継ぎも正統な血筋が既にあるのですから」
「つまりは、国王陛下の子ではなく、王弟殿下の子だった、という事だな?」
「今更ですがね。
いま、城ではフィナンシェ様が兄君の国王、いや、元国王を討っているところでしょう」
大義を成してると言わんばかりに語るギモーブが、心から傾倒して王弟に従っているのが分かった。
「反逆者になり下がった、という宣言をしてくれてありがとうよ」
「はぁ? 反逆者ではありません!
国王を討てば、反逆者ではなく国王になるのですから!」
なんともおかしな理論だが、王室では幾度となく繰り返されて来た歴史の一つだった。
今回の様に兄弟で親子で争う場合もあれば、全くの他人が立ち上がって討たれる場合もある。
王族の血筋だなんだと言っても、数代血縁関係というだけで実際はどいつもこいつも、私も含めてどこの馬の骨とも分からない血筋って事だ。
「ギモーブとやら、正当な血筋などすでに存在しないのは明白であろう?
歴史書にも記載されておる。
それなのに正当な血筋とは……嗤えるな」
「ふ、言いたいことはそれだけか、たかだか神殿の大神官長だからと神に匹敵するわけではあるまい?
フィナンシェ様が王座に就いた瞬間から、この国は変わるのだ。
建国された初代の王としてな」
「お、なんだ? 国名を変えて初代の王を名乗っちゃうって事か?」
バカにしたように眼帯の大剣男が言うものだから、ギモーブはイライラとして来ていた。
「おしゃべりはこのくらいにしましょう。
そこのルイを渡しなさい」
馬の上で他の強盗団の一人に抱きかかえられるように、ぐったりと目を瞑っているローレンツォの目が開くことを願った。
「私は王弟殿下に逆らわない、だからローレンツォも助けて欲しい」
「貴方が逆らわなくても、逆らったとしても、そこのルイは殺しますよ。
だってねぇ、元国王のご落胤なんて国が乱れる素じゃないですか」
ギモーブがおかしなことを言った。
ローレンツォが、ご落胤って。
ご落胤ってなんだ?
私が知ってる言葉の意味と同じだろうか?
「国王陛下の派閥って厄介な奴らが多いんですよ。
担ぎあげられて、王権を奪還とかいう動きになったら困るじゃないですか」
「それは王弟の人気が無いって自分で言ったようなもんじゃね?
厄介な派閥ってのは上位貴族連中の殆どで、力関係は兵力財力共に高い連中だろ?
その点で言うなら、王弟には新興貴族しかいないって事だよな?
古参の歴史ある家門は誰一人、王弟の事なんざ認めていねぇ」
眼帯の大剣男は、はっきりと王弟は器じゃないと言った。
私は二人の、いや、大神官長との話も含めて、今初めて知る事ばかりだった。
何よ、この展開!
ローレンツォが王様の子供って!
これラノベでもゲームでもないじゃない!
ただの平行世界? それとも偶々名前が似ていて境遇も似通った世界って事?
でもモンブラン公爵を助けてあげたいって気持ちに変わりは無くて、どうにかこの均衡を破る手段は無いかと考えてる自分が好きだった。
ただ、途中から見ているだけの私では、どうしたものだろうか、とそれしかなかったけど。
アイテム、何かあったかしら?
そうだ、私のスキル『息吹』!
あのギモーブって奴の足元の草を急成長させられないかしら?
そしたら隙も出来るんじゃないかって考えた。
「息吹」
お願い! あいつの足元の草たち、あいつの邪魔をして!!!
すると、初めてスキルが発動した。
庭で争ってくれていたことも良かった。
「な、なんだ! これは」
あいつの周りだけ、色んな草や本来なら雑草として抜かれちゃうような蔓があるような草が、どんどん伸びて絡みつくとうまく拘束してくれた。
「やった!!!」
思わず立ち上がってしまって、大注目を浴びることになってしまった。
だが、強盗団と行動を共にしているのは解せなかった。
「ボンクラ公爵さんは本当に血の巡りが悪いなぁ」
大剣を自称副神官長の肩口にサクッと突き刺して、身動きできなくさせた上で馬上から降りてギモーブと対峙していた。
「まあ、ボンクラでしたから私も動きやすかったんですがね。
強盗団のくせに王弟殿下の命を受けた私に歯向かうという事は、王族に剣を向けたとみなしますよ?」
「ああ、構わねーよ。
だがな、俺たちが剣を向けたのは王弟殿下と、その後ろにいるもちっと、位の高い誰かさんなんだがな」
ムッとしたギモーブが、失敬なと吐き捨てた。
「フィナンシェ様と王妃様にと言うのですね?」
王妃も、か。
「ギモーブ! この件には王妃も与してるのか!?」
「与するなんて、愚かな。
王弟殿下フィナンシェ様は国王になるお方、そして王妃様は真の王妃になられるのです。
そして、憂いとなる王太子殿下も真の王太子殿下としてね。
お世継ぎも正統な血筋が既にあるのですから」
「つまりは、国王陛下の子ではなく、王弟殿下の子だった、という事だな?」
「今更ですがね。
いま、城ではフィナンシェ様が兄君の国王、いや、元国王を討っているところでしょう」
大義を成してると言わんばかりに語るギモーブが、心から傾倒して王弟に従っているのが分かった。
「反逆者になり下がった、という宣言をしてくれてありがとうよ」
「はぁ? 反逆者ではありません!
国王を討てば、反逆者ではなく国王になるのですから!」
なんともおかしな理論だが、王室では幾度となく繰り返されて来た歴史の一つだった。
今回の様に兄弟で親子で争う場合もあれば、全くの他人が立ち上がって討たれる場合もある。
王族の血筋だなんだと言っても、数代血縁関係というだけで実際はどいつもこいつも、私も含めてどこの馬の骨とも分からない血筋って事だ。
「ギモーブとやら、正当な血筋などすでに存在しないのは明白であろう?
歴史書にも記載されておる。
それなのに正当な血筋とは……嗤えるな」
「ふ、言いたいことはそれだけか、たかだか神殿の大神官長だからと神に匹敵するわけではあるまい?
フィナンシェ様が王座に就いた瞬間から、この国は変わるのだ。
建国された初代の王としてな」
「お、なんだ? 国名を変えて初代の王を名乗っちゃうって事か?」
バカにしたように眼帯の大剣男が言うものだから、ギモーブはイライラとして来ていた。
「おしゃべりはこのくらいにしましょう。
そこのルイを渡しなさい」
馬の上で他の強盗団の一人に抱きかかえられるように、ぐったりと目を瞑っているローレンツォの目が開くことを願った。
「私は王弟殿下に逆らわない、だからローレンツォも助けて欲しい」
「貴方が逆らわなくても、逆らったとしても、そこのルイは殺しますよ。
だってねぇ、元国王のご落胤なんて国が乱れる素じゃないですか」
ギモーブがおかしなことを言った。
ローレンツォが、ご落胤って。
ご落胤ってなんだ?
私が知ってる言葉の意味と同じだろうか?
「国王陛下の派閥って厄介な奴らが多いんですよ。
担ぎあげられて、王権を奪還とかいう動きになったら困るじゃないですか」
「それは王弟の人気が無いって自分で言ったようなもんじゃね?
厄介な派閥ってのは上位貴族連中の殆どで、力関係は兵力財力共に高い連中だろ?
その点で言うなら、王弟には新興貴族しかいないって事だよな?
古参の歴史ある家門は誰一人、王弟の事なんざ認めていねぇ」
眼帯の大剣男は、はっきりと王弟は器じゃないと言った。
私は二人の、いや、大神官長との話も含めて、今初めて知る事ばかりだった。
何よ、この展開!
ローレンツォが王様の子供って!
これラノベでもゲームでもないじゃない!
ただの平行世界? それとも偶々名前が似ていて境遇も似通った世界って事?
でもモンブラン公爵を助けてあげたいって気持ちに変わりは無くて、どうにかこの均衡を破る手段は無いかと考えてる自分が好きだった。
ただ、途中から見ているだけの私では、どうしたものだろうか、とそれしかなかったけど。
アイテム、何かあったかしら?
そうだ、私のスキル『息吹』!
あのギモーブって奴の足元の草を急成長させられないかしら?
そしたら隙も出来るんじゃないかって考えた。
「息吹」
お願い! あいつの足元の草たち、あいつの邪魔をして!!!
すると、初めてスキルが発動した。
庭で争ってくれていたことも良かった。
「な、なんだ! これは」
あいつの周りだけ、色んな草や本来なら雑草として抜かれちゃうような蔓があるような草が、どんどん伸びて絡みつくとうまく拘束してくれた。
「やった!!!」
思わず立ち上がってしまって、大注目を浴びることになってしまった。
57
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる