その執着は今更です。

ビーバー父さん

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神聖力

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 この世界で生まれて初めてのお風呂に満喫した。

 今思えば、何だってこんな生活に我慢が出来たんだろうって不思議に思った。
 モラハラとかDVとか受ける人の典型だったのかもしれない。
 脳内の回路がどっかで自分が悪い、自分が我慢すれば、って気持ちになってたんだ。

「ルイ様、傷の手当てをするとパパリーヌ様が仰っています。
 お着換えがすみましたら、こちらへ」

 カヌレ団は才色兼備な人が多かった。
 それだけ潜入とかが出来ないといけないからだろうと考えてみても、多才としか言いようがなかった。

「あの、カヌレの方なんですよね?」

「はい、主に貴族の屋敷へ潜入するのが私の分野です。 
 他にもございますが、一番長いのはこのような使用人になって工作する事ですね」

「女性なのに」

「えぇ、女だから出来る潜入があるのです。
 そして私は、女だからと縛られるのが嫌で、家を出ましたから」

 この一言で、どこか名のある家門のご令嬢なんだと察した。

「すみません、僕なんかのお世話をさせてしまって」

「え? 凄く光栄ですよ。
 こんなに綺麗で可愛らしい方のお世話をするなんて、昨今ありませんでしたからご褒美です」

 ご褒美って響きがなんだか、その、エッチっぽく聞こえた。

 今まで公爵が使っていた執務室に来ると、彼女はノックをして入室の許可を得た。
 そして、その許可を出したのは団長である、大神官長パパリーヌだった。

「さぁ、入って。 
 治療しよう」

「あの、僕、お金の持ち合わせがないので」

「自分の好きな人を守るために、幸せにするためにこの力があるのに、対価なんか必要ない」

 いや、なんか、そういう好意を貰えるのはうれしいけど、応えられるとは思えなかったから、対価を求めてくれた方が気持ちが楽になるのに、と思った。

「診せて、来る前も血が滲んでいたよね」

「治りかけると皮膚が引っ張られて、他が裂けちゃうんです」

「これは、呪いもかけられてるじゃないか」

「え? そうなんですか?」

「ああ、マカロンの所のご令嬢は、質が悪いようだな」

 この傷が治らない理由が、呪いだったとは。
 パパリーヌが僕の背中に手を触れるのが分かると、そこからじんわりと熱くなりだんだん痒いようなくすぐったい感触が広がると、治療がすんだと言われあっと言う間に綺麗な背中になったみたいだった。
 今までは傷が盛り上がったりして、でこぼこしていた皮膚がつるつるした感触に変わっていた。

「あ、治って、る?」

「あぁ、綺麗なもんだ」

 治らなくて血が滲んでいた時は、ずっとジクジクと痛んだけど、今はすっかり痛みを感じなかった。

「ありがとうございます!」

 思わず、その手を取って額に押し付けると、涙があふれて来た。
 今まで痛かった、辛かった、苦しかった、でも今は痛くないんだ。
 
「さぁ、これからが踏ん張りどころだよ」

 そう言われて尋問を受けている、あのギモーブって人の所へ移動した。






「もう一度結婚すれば私たちは元通りうまく行く」

「ねぇ、なんでもう一度チャンスがあると思ってるの?
 ローレンツォの意見聞いたことあるの?」

 ピンク頭が痛いところを突いてくるが、それでもこれまで夫婦として暮らして来たんだ。
 
「は、まるで演歌の歌詞みたいね。
 女が男にすがって生きてるとか思ってる、モラハラ男だったわ」

 私が分からない言葉を言うピンク頭に、イライラした。
 
「はっきり言うけど、ローレンツォは貴方から逃げたの! 
 そこ、理解してる?
 何度も言うけど、自分が愛されてるとか、どこをどう切り取ったらそういう思考になるのか教えてくれない?」

 容赦なくぶつけられる言葉に、ピンク頭の真意が見えた気がした。

「すまんな、私の心はローレンツォのものなんだ、お前の気持ちに応えてやることは出来ん」

「あ、いらないわ。
 てか、その勘違いをさせたのは私の所為かもだけど、ローレンツォに対する言葉も態度も、どこをどう思ったらその自信につながるのか知りたくないわ」

 何を言っているんだ? ローレンツォだって泣いて喜ぶはずだ。
 そう確信していた。



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