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異世界は続くよどこまでも
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しおりを挟む「最初は、アキを手に入れて
神の代行者として傀儡にするつもりが
逃げられちゃった、って言うのが真相だろ?」
神様はセルゲートに尋ねた。
最初に、人間のところへ行って、状況を把握したのはセルゲートだったから。
「そうです。
アキ様がまだ幼い子猫の姿だった時に、
拘束魔法で一度は捕えてますから。
ただ、神がお与えになった能力でその時は事なきを得て
時間稼ぎができましたが」
その先は、みんなが知ってるところになる。
神様の結界領域で魔法の練習をしたり、まぁ、色々経験した。
「せっかくのお披露目だったのにね。」
神さまはどこか面白げに本当はそう思ってないだろうな、って取れる表情で告げた。
俺は心しておかないといけないんだ。
俺は捕えられた時、みんなの負担にならないように身体を霧散させてでも、この人たちにつらい決断をさせるわけにはいかない、ということを。
捕えられた魔族の人たちは、やはり、向こうの協力者だった。
話を聞くと、本当に心酔してる者と、脅されている者、そして、服従魔法で縛られている者とパターンがあった。
これも含めて、精霊王たちと真名のことや今までの事を話し合った。
神様が言った真名を解除してよかったの意味を知りたくて。
「アキ様と番になりたいは今も変わっておりません。
ただ、番になる理由が神獣だったから、が一番強い気持ちだったと、離れてみて思い知りました。
もし、次の神獣が出たらどうするのか、と神に問われて初めて思い知りました。
フェースライザーが顕著でした。
ですから、解除されてやっとアキ様の本来の心を考えることができたのです。
正直。私たちはみな今でも真名を捧げたい。
ですが、フェースライザーのように愚かなことで、アキ様の関心を惹くようなことはしたくないと一致しました。
この先も、アキ様の守護として存在しますが、その先は長い時間をかけて繋がっていきたいと思っております。」
やっぱり神獣って、何かの符丁の様なものなんだ。
俺は伴侶になったのだから、手伝えることはしなくてはって勢い込んでみたものの、タロー様からこの件にあまり近づくなと言われているので、もっぱら執事のカスティアさんのお手伝いの様な事がメインになっていた。
でも、この世界を知るためには、一番の近道であり先生だった。
魔族の生活も、人間の生活も変わらない。
ただ、魔力量とか姿が違うとかその程度しか差は無かった。
闇属性だからって暗闇で生きてるわけではない、最初にタロー様はそう言った。
明るい世界の中で笑い、歌い、泣いて、喜んで、悲しむ。
何も変わらなかった。
人間の姿の方が偉いわけでもないし、魔族の姿が間違っているわけでもない。
多いか少ないかの違い。
前の世界でもあったことだ。
マイノリティは悪の様な風潮が、迫害につながる地域も未だにあった。
数が少ない魔族だからこそ、魔獣も大事にしてるし、家族も大事にしてる。
同じ姿の子じゃなくても、それが当たり前で血を分けていようが、いまいが、愛するべき者という認識が定着してるのが羨ましかった。
タロー様自ら育ててるぐらいだもんね。
でもその分、裏切られたのは悲しかったんだと思う。
いま、タロー様の心を占めているのは、弟と甥っ子、その母親だろう。
慰めることも、踏み入ることもできなくて、真名以外で繋がることが無くなっていた。
それどころじゃないって俺も分かってるけど。
夜も寝室に戻ってくるのは、明け方近くで、ただ、睡眠を取るだけの時間を幾日も過ごした。
寂しい、悲しい、側にいて欲しい。
一度だけ、言ってみた。
「お忙しいのは分かってますが、寂しいので夜は一緒にいてください」
「う、ん、そうだな。」
そ言って寝入った姿を見れば、これ以上は言えなかった。
タロー様が、家族を思うように、俺もお母さんを救わなくてはいけない。
俺は色々頼りすぎて、自分の力で立つことが少なくなっていたんだって気づいた。
タロー様はご自分のご家族のために、俺は自分のお母さんのために、やれることをやろう。
夜、タロー様が寝室に戻らないので、夢を紡ぐ練習というか本番をやっていた。
毎夜、自分に子守唄を歌う。
初めて子守唄を歌って魔力を練った時みたいな影響が出ないように、でも癒しが必要な人が眠れるように。
タロー様がせめて、眠ることで癒されるように、歌った。
最初の頃は、眠ると夢の中でお母さんを探した。
でも、どうしてもお母さんに会えない。
すぐ夜明けが来て、告鳥が俺を起こした。
段々と、もう少し、長く、もう少し深く、そう思うと、告鳥に俺意外は起こさないといけないけど、自分で起きるから起こさなくていいと言うようになった。
実際、自分では起きれたから。
隣にタロー様がいないのを見ると、時々涙が落ちたけど、解決するのを待つしかなかったから、普段通りカスティアさんの手伝いをした。
夜、子守唄を歌う。
深く眠ると、前に見た夢と繋がった。
暗闇で、泣くお母さんがいた。
駆け寄るとやっぱり子猫の姿になってしまって、亜希ではなくなっていた。
「あら、この前の子ね。
また来たの?」
「お母さん、ここで泣かないで
俺、助けに来たの」
「子猫ちゃんのお母さんも、ここに?」
「違うよ!
お母さん、俺、亜希なの!!
亜希なの!」
涙がたくさん出た。
「亜希って、私の子よ。
でも、人間なの」
「俺、こんな姿だけど」
繋がりかけて、目が覚めた。
胸に手を当てて、号泣した。
「お母さん!!
亜希だよ!
亜希だよぉ!!!!」
尻尾を握って、また泣いた。
もう一度、もっと深く長くいかなきゃ、ちゃんと夢の中でも人の姿になれるように。
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