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5, 愛情を知る
しおりを挟むさて、おじいちゃんの顔も立てましたし、ドロワス叔父さんの顔も潰さずに済んだかと思います。
広間では晩餐会の後のお茶が出され、そろそろこの会はお開きですから、僕は軽く周りにご挨拶をして引き上げる事にしました。
「お爺様、僕そろそろ部屋へ戻り寝ますね」
「おお、キアラ、いい人は見つかりそうか?
ドロワスめ、儂に黙って半日ほどで集めおった。
伴侶なんぞ持たずにおじいちゃんのとこに、ずーっていて構わないのだからな?」
「父上、キアラの子が見たくないと?
こんな綺麗な子の子供なら絶対に可愛いに決まってます!」
ブリーダーじゃないんですから、生まれた子をとか言わないで下さい。
「相手がまずおりませんし、万が一にも出来たとして、相手側が個性的な方ならドロワス叔父上が望む様な容姿ではないかもしれませんよ?」
「ドロワス、お前は豪快な所は賞賛するが、デリカシーが無いのは欠点じゃ!
それでケイラスからずっと振られておったのを忘れたか!
今の発言、儂からもケイラスに報告しておくので、しっかり躾直して貰え!! 馬鹿者が!」
「えぇ、そうですねぇ。
ドロワス殿下、いま、しっかり聞きましたからね?
貴方の望む容姿の子は私では産めませんし、容姿で貴方は人を見ていたんですね、残念です」
おじいちゃんの言葉をドロワス叔父さんの後ろで聞いていたケイラス叔父さんが、鬼の形相で立っていました。
「あ、いや、違う、違うんだ!」
「何がですか?」
「すまん、本当にすまなかった」
「謝る相手が違うのでは?」
「あ、キアラ!
すまん! 子供もだが、早く幸せにしてやりたくて、勝手をしたし酷い事を言った!
キアラの子供が見たいと言うのも本音だが、それ以上にお前が笑って過ごす幸せをあげたかったんだ、本当に申し訳なかった」
大型の猛獣がうなだれている様で、この姿がきっとケイラス叔父さんが絆された理由なのかもと思うと、笑ってしまった。
「ふふ、許します。
ケイラス叔父上は、調教師だったんですね。
尊敬します」
悪気や悪意じゃないのは最初から分かっていたから不快感は無いんですよ。
でもおじいちゃんとケイラス叔父さんが憤怒の表情で怒っていたので、お任せしてしまった次第です。
「キアラ、その調子じゃ
たくさん笑って、怒って、泣いたっていい、だから幸せになっておくれ」
「お爺様……」
ああ、僕は幸せだ。
そう思うと、早くベッドへ入って眠りに就きたくて仕方無くなりました。
「ありがとうございます。
また、明日」
そう言って広間を出ようとした時、先ほどご挨拶をされたミハイルと他の方々がこちらへ来て、婚約破棄をされているなら自分を候補にとおじいちゃんとドロワス叔父上に言ってました。
はて? そのような会話をした覚えはないんですが。
「キアラの気持ちが第一なので、皆様方がここで我らにお話しをされても無意味ですよ。
あの子は苦しんできたんです。
ですから、ちゃんとキアラに認められるように頑張って下さいませ」
ケイラス叔父さんが、彼らを一蹴していたので、軽く会釈だけして部屋へ下がらせて頂きました。
窓から見える月は前世に見た月よりも明るく、そして神秘的としか言えない赤く輝いていた。
婚約破棄を言い渡され、その報告におじいちゃんの国へ来てまだ一月も経っていないのに、既に不貞を理由に僕からの破棄へと正式になり慰謝料も払うと言う事で誓約証書へのサイン待ちの状態になっています。
僕はこれで安眠できると思っていたんですが、何故か眠れません。
正確には、ちゃんと眠れて起きるんですが、お昼寝が出来なくなりました。
三度の飯よりお昼寝だった僕が、です。
あれほど眠かった毎日が、今では頭の中もスッキリした感じです。
「今晩は、キアラ様」
月を見ていた窓の下から声がするので覗いてみたら、自称婚約者候補のハーミットが手を振っていた。
「今晩は、ハーミット様
こんな時間に、庭で何をされているんですか?」
赤い月に照らされたハーミットの髪は金髪なのにストロベリーみたいな色に見え、ここが二階なのに登って来ようとさえしていた。
「あ、あの、危ないと思われますが……」
「な、んの! キアラ様とお話が出来るのであればこの、くらい!」
はて? お話しってこんな風にしないと出来ないんでしたっけ?
「ハーミット様は壁を登ってからじゃないと、お話しが出来ない習慣のお国でしたか。
それは大変なお国ですねぇ」
個々の国習慣はまだまだお勉強が足りませんね。
「ぶっ、っは! っは!」
おや、凄く笑ってますけど大丈夫ですか?
「んな国あるか!!」
僕の部屋の窓枠に手を掛けて体を乗り上げてしまいました。
「習慣ではないとすると、趣味? ですか」
「ぶっ! キアラ様って顔に似合わず面白いな!」
ハーミット様は何が面白いのか分かりませんが、凄く笑っています。
「あの? お話しとは何でしょうか?」
「俺はあのパーティーでキアラ様を見て、一目で恋に落ちた。
だから結婚して欲しい」
真面目な顔になっていきなり求婚されてしまいました。
「はて? ご挨拶しか、してませんよね?」
「ああ、その挨拶の時はまるで綺麗なただの人形だったのに、家族といたアンタは花が咲いたように笑っていた。
あの笑顔に惚れた!
俺の手でその笑顔を作ってやりたいって思ったんだ」
ハーミットは確か武装国家のユグレーナの国主、つまり国王だったかと思いますが。
「ハーミット様、有難いお申し出ではありますが、僕はまだ正式に破棄が完了したわけではありませんのでお断りさせてください」
「では正式に破棄が完了した暁には、こちらも正式に申し込ませて頂く」
「はて? 皆様同じことをおっしゃるのですが」
「は? みんな、みんなって?」
ハーミットは美丈夫な体躯に武骨ともいえるお顔をビックリしたと言うような表情にして、自分以外の誰が? と聞いたようでした。
「あの時いらした方々、全員? でしょうか。
ミハエル様は既にシナガワ国へかなりの圧力をお掛けになっているとか。
お陰で破棄は早く済みそうですし、その後の訴訟も有利に進みそうです」
ミハエルなんて、何の得も無いだろうに僕の婚約破棄を後押ししてくださっていて、感謝しかありません。
「抜け駆けしやがって」
はて? 抜け駆けとは、何か協定が結ばれていたのでしょうか。
「ハーミット様も、もうお休みください」
そう言うと何故だか意気消沈して、部屋をドアから出て行かれました。
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