森の木陰から始まる物語

ビーバー父さん

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10, 回り出せば意外と

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 おじいちゃんの馬車はサスが改良されているので、快適でした。
 シナガワ国を出たのが、日付が変わる前でしたから、早く着いた方だと思います。

「お帰りなさいませ、キアラ様。
 明日お帰りのご予定でしたので、他の者は休ませております」

「ごめんね、早く帰りたくて」

 侍従頭のライアットが居ずまいを正して出迎えてくれた。

「キアラ様がご無事ならそれで」

 ライアットは胸に手を当て、軽く腰を折り頭を下げて、何か飲み物をと聞いてくれた。

「なら、キッチンで頂くから、ホットミルクにお砂糖を入れてくれる?」

「畏まりました」

 僕は自室に着替えに行き、荷物と言うほどの物でも無いけど、ジェラルドど街中を見て気になった物を買っていたので、それを机に置いてライアットが淹れてくれるホットミルクを飲みにキッチンへと向かった。





「ライアット、ありがとう。
 美味しい」

「キアラ様、お食事はいかがなさいました?」

「んー? なんか食べるのも面倒だったし、お腹空いてないからいいよ」

 ふぅっとライアットはため息を吐いて、普段もあまり食べない僕の体を心配して、明日はしっかり食べるように約束させられた。
 もういい歳のライアットに、こんな夜更けまでお世話させる僕がダメななんだよなぁ。

「明日、いや、もう今日か、レオナルドとクーリッシュの去勢が決まった。
 これでやっと前に進める」

 独り言のように言うと、ライアットは静かに、ようございました、と告げた。

 思いっきり伸びをして、ライアットにお休みなさい、と挨拶をすると眠気と共に涙が数滴散った。

「足元をお気をつけて。
 お休みなさいませ、キアラ様」

 何事も無かったように、僕はライアットのいるキッチンを後にした。


 自室に戻ると机の上に置いた荷物の中を見て、レオナルドと小さい頃に遊んだ小さな仕掛けで動くオモチャを思わず買ってしまった事に笑った。

「レオナルド、さようなら」

 ベッドに体を投げ出して、深呼吸を数回すると睡魔に襲われて意識を手放した。




「おはようございます。
 キアラ様、昨夜は遅かったので遅めに起こしたつもりですが、体調はいかがですか?」

 ライアットも僕に付き合って遅かっただろうに、キビキビとカーテンを開け散らばった僕の服や荷物を片していく。

「おはよう、ライアット。
 ふぁああ~、今何時?」

「11時を過ぎたところで御座います。
 本日は新しく騎士に就任される者達のお披露目で夜会がありますので、御支度をなさってください」

「う、僕も、ですか?」

「はい、陛下たってのご要望でございます。
 若い騎士らの士気を上げるのも、王族の役目で御座います」

 僕が出ても士気は上がらないと思いますが。

「本日の夜会用の御衣装は、こちらにご用意してあります。
 薄い布地ですが、我が国で開発された縫製技術により、繊細な縫い目を実現できました」

 だされた衣装は、まるで前世のバレエのプリマ達が着るような薄い紅色のレースとオーガンジーを幾重にも重ねて出来たドレスのように裾の長い上着に、白いマリンパンツのような丈のズボン、それにショートブーツ だった。

「え、と、これ着るの?」

「はい、こちらの縫製技術のお披露目も兼ねておりますから、そのモデルとしてキアラ様以外いらっしゃらないと。
 御父上様も御母上様もおっしゃっておりました」

 諦めるしかなさそうです。

「騎士達のお披露目では技術披露には役不足では無いですか?」

 諸外国の要人が集まるような時ならいざ知らず、騎士達では余り、はて?

「まだ、滞在されてる方々もいらっしゃいます。
 それに合同演習が御座いますので、同盟国からも騎士団が来られていますので」

「はて? ではこの衣装より軍服の方が」

「いえ、この繊維は特別に作られておりまして、剣からの攻撃を防ぎます。
 また、槍、矢などにも耐えられるとか」

 はて、すごい技術ですね。
 この薄さで、ですか。
 
「金属の糸を使用してあるそうです」

「父上は天才ですね」

 ライアットはにっこり笑うと、僕にブランチと言うには大分豪華な食事を用意していて、果物から色々入った野菜ジュースを、しっかり手に持たされて食事をさせられてしまいました。

 ゲフ。
 
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