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11,懲りない人と
しおりを挟むいくら縫製技術とこの布地のプレゼンとは言え、大分恥ずかしいデザインかと。
前世の記憶では、エルダーと言われる年代でしたし、いくら今十八歳とは言え男子にこのデザインは如何なものでしょう?
「さぁ、そろそろお時間でございますよ」
ライアットが夜会の時間を知らせてきたので、この衣装で出るのかと思うと、少し、いえ、大分憂鬱です。
前世の自分の姿で想像してしまうのもあって、ですが。
王族は大変だなぁ、としみじみ思いながら責務として果たさなければならない事と、自分に言い聞かせました。
ライアットと護衛騎士が先導して広間の扉まで来ると、更に扉前で立っていた騎士がその扉を開けて、僕の名前を高らかに告げてくれました。
「キアラ・シナガワ・エビス様の御来場です!!」
イケボって言うんですか? それでした。
こう、尾骶骨に響くと言うか。
チラッとその声の騎士を見て、ありがとうございます、と会釈をすると、甲冑を少し軋ませて礼を取られました。
会場の上座におじいちゃんと、ドロワス王太子殿下に叔父上達がズラーッと並んで、新しく騎士になった方々が整然と隊ごとに並ばれている間を歩くはめになっていました。
これは、まさかですが、最後では?
こんな登場は不敬では無いでしょうか?
大観衆の中、花道を行く役者の様に、または花魁道中の様に、裾を踏まない様に気をつかないながらおじいちゃん達の前へ行き、膝を折りました。
「キアラ、新しく騎士になる若人らを祝ってやってくれまいか?」
「畏まりました」
おじいちゃんに言われた通り、整然と並ぶ大勢の騎士達に向き直り、祝辞と強固な盾であり剣である彼らの武運を祈ると、王への忠誠の誓いを隊ごとに行いました。
「新たな剣と盾を得て、ゲートウェイ国は更に強固な国として、国民を守る事を我ら王族も誓おう!!」
ドロワス叔父上が王太子として、次期国王として宣誓すると、一斉に騎士達の剣が床へと打ち鳴らされ、鼓舞する様に儀式は幕を閉じた。
「これよりは、祝宴を存分に楽しんでくれ!
そして明日から、その力を存分に発揮して欲しい!!」
それぞれが乾杯の合図にあわせて、グラスを高く掲げた。
宴会の始まりの合図と共に若い騎士達は立食で用意された料理のテーブルへ向かう者や、中には参加してる貴族の令息へ挨拶へ行く者など、各々で目的や楽しみを見つけた様でした。
「キアラや、その衣装は軍事的にも今後採用する予定でな、諸外国には縫製技術だけを売り物にしたいんじゃ。
だから敢えてそのデザインにしたのよ。
キアラに着せたくての、それにシナガワ国のバカを去勢した事で、不穏な動きもある様じゃからな」
防護服の意味もあったんですね。
「お祖父様」
言いかけた時、背後からいきなり抱きつかれ、ビックリして振り返るとグランデ叔父さんの息子で従兄弟にあたる法務大臣のシュレッドの弟、トルキアが被さってました。
「キーアラ!
すっごく綺麗!」
トルキアはタイプで言えばクリッシュ・ボナーみたいなふわふわ系ですが、腹黒さで言えば王族一だと思います。
「トルキア兄様、重いですよ。
それに、この衣装の裾踏んで、マス!」
段々首が絞まって来て、かなり息苦しくなってきたところで、ごめーんと言って放してくれました。
トルキアは腹黒いですけど、家族に関しては激アマなので敵には容赦なくその奸計を余す事なく発揮してくださいます。
ふわふわ系なのに、知略・謀略を得意とする国の軍事参謀ですから。
「キアラもやるよね! 去勢! 嗤っちゃったよ~」
明るくケラケラと笑い転げて、あ、スパイが入って来てたんだ、とあっけらかんと皆に言ってました。
「トルキア、既に捕獲し拷問で聞きだした後であろう?」
グランデ叔父さんが聞くと、当たり前だと口を尖らせて報告されてました。
「まぁ、今日は新しい騎士たちのお祝いだし、その話しは後でね!
それよりもキアラの綺麗な姿を見たら、お嫁にやりたくないなぁ」
トルキアだってもう大分いい歳なのに、実年齢を感じさせません。
ふわふわ系なのに、期待を裏切る細マッチョですし、僕よりもずっと魅力的な人に綺麗と言われても複雑です。
「トルキア兄様が結婚を先にされなければ、僕もあまりする気にはなれないですね」
「言う様になったなぁ、こいつぅ」
にこにこと笑うトルキアが僕の耳元で、なら俺の所に嫁においで、と囁いた時は余りの冷たさにゾッしました。
「トルキア兄様には敵いません」
「ふふふ、大人を揶揄うと痛い目を見るんだよ?
でもキアラなら、甘くしちゃうな、俺」
心底、家族で良かったと思った瞬間でした。
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