森の木陰から始まる物語

ビーバー父さん

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9,ハプニングは突然に

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 ラドルチェ家から自動車で、二人は裁判所指定の病院へと送られて行きました。

 少し前の僕なら、もしかしたらこんな光景でも何とも思わなかったかもしれません。
 ですが、今は、自業自得だと正直笑ってしまいました。
 ジェラルドが二人を送り届けたら迎えに来るという事だったので、城下町で買い物がてら待つことにしました。

「そこの綺麗なお兄さん!
 良かったら見ていかないか?」

 露店が並ぶ広小路で声を掛けられて店先を覗くと、綺麗な布地が沢山下げられていた。
 
「この裏がうちの店だから、中も見て行ってよ!」

 僕の知る限りですが、この手のお店は店舗が無いから、露店を広げてるのであって実店舗がある上にこの裏とは、はて?

「いえ、先を急ぎますから」
「キアラ殿! お待たせ致しました!」

 不意に背後から肩を叩かれてて振り返るとハーミットが額に汗をかきながら、結構な息を乱して立っていました。

「え?」

「店主、申し訳ないが彼は私と約束があって急いでいる、すまんな」

 凄い勢いで背中を押されて、露店が広がる道を後にした。

「あんたなぁ!!
 ボンヤリしてんな!! 危うく拐われるところだったんだぞ!」

「やはりそうでしたか」

「やはり、じゃねーよ!!」

 僕だって怪しいと気づいてましたけど。

「みすみす拐かされたり」
「いい加減にしろ!」

 パシン!

 頬が突然熱くなりました。
 ハーミットに叩かれたようです。

「あ、」

「すまない、だが、拐われたらと思ったらゾッとした。
 もう少し、自分を大事にしてくれ」

 城にいた時のハーミットとは口調が大分違う気がします。
 でも、それだけ本当に心配して頂いたのだと理解しました。

「ハーミット様、ありがとう、ございます」

「ジェラルドは何処にいるんだ?」

「はい、ラドルチェ家から二人を病院へ移送して下さっていて、帰りにお迎えに来て頂けるので、歩いて待ち合わせ場所まで行くところでした」

 ハーミットはホッと息をついて、叩いた僕の頬を撫でた。

「痛いか?」

「熱い、です」

 眉を下げて、へにゃっと笑った。
 大丈夫と言う意味を込めてだったのですが、ハーミットは僕を抱きしめて、私が守るから、と熱く息を吐きました。

「あの?」

「どうした?」

「そろそろジェラルド様との待ち合わせの時間なので……」

「そ、うか。
 ではその場所まで送ろう」

 武装国家でご本人もかなりの方なのに、スマートに僕をエスコートして下さいました。
 歩きながら、このままユグレーナへ来ないか? と誘われましたが、まだ、本格的にシナガワ国を追い詰めないといけないので、そこはお断りしました。

「でも、遊びには行きたいです。
 ただ、その、暴力は怖いので、あまり……」

「分かった、善処しよう」

 そう言ったハーミットの笑顔は、金髪の髪がキラキラしていたせいか、凄くドキドキしてしまいました。

「今日で漸く婚約破棄が調います。
 また、ゲートウェイにも遊びに来てくださいね」

 待ち合わせ場所にはまだ、ジェラルドは来ていなかったのですが、引き止めるのも申し訳ないので、ここで、と言って別れました。

 不思議とハーミットを優しいと感じた時間でした。




 ハーミットと別れてほんの数分で、ジェラルドが車を横付けしてくれました。

「ジェラルド様、彼らはどうでしたか?」

「ふふ、裁判所命令だから明日の午前中に執行されるそうだ」

 凄く楽しそうに笑いながら、去勢よりこの後の国の動向が一番気になってワクワクするよ、と呟かれました。

「キアラ様、明日まではこの国に滞在ですか?」

「いいえ、夜、お祖父様のお迎えで国へ帰ります。
 正式に、僕が持っている特許やゲートウェイ国所有の技術を押さえますから、きっと敵対すると思います。
 ですから、避難しますよ」

「では、国境まで送りましょう」

 ジェラルドもまた、自国へと誘う言葉を出したが、漸く婚約破棄が調ったばかりなので遠慮させて頂きました。




 国境でおじいちゃんの馬車が待機していました。

「ここまで送って頂きありがとうございました」

「キアラ様、私たちは貴方を損得ではなく、愛しいと思うから求婚しているのです。
 どうかそれだけはお忘れなき様、お願い致しますね」

 ジェラルドは最後に僕の手を取り、その甲にキスをして去って行った。

 全てがスマートでした、はい。
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