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強欲★嫉妬

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「いい景色だろう」


高級マンションの最上階から眺める夜景は言葉では言い表せない程美しかった。全面ガラス張りの窓と広い室内に、緩やかなクラシックが流れている。


「……僕より、夜景の方が綺麗だと?」
「ここからの眺めは最高だ。だが、お前の美には敵わん」


後ろから優しく抱きつかれ、希澄(きすみ)は表情を歪めた。


「本当にそう思ってます?」
「あぁ。私にはお前が一番綺麗に見える。希澄、この部屋だって特別に魔女に用意して貰ったんだ。お前と一緒に過ごせるように」
「欲しいモノは全て手に入れる……それが貴方のやり方ですものね、黎槐(くろえ)」


彼の手を解きながら希澄は向き直り、浮かない表情で彼を見上げた。漆黒の瞳と一つに結った長い黒髪、高い背にしっかりとした体つき。一度欲しいと思ったモノは絶対に手に入れる。それが【強欲の天狗】である黎槐。仲間内で魔女と一番親しい。


「お前の欲しいモノも与えてやる。何でも強請れ」
「……なら、貴方の血を……頂きたいです」
「今日はどこの血がいい?昨日は左肩だっただろう?」
「では……右腕を」
「構わないよ。気の済むまで飲めばいい」
「ありがとうございます」


差し出された右腕に希澄は白い牙を突き立てた。毎度の痛みに黎槐は表情を顰める。だが、すぐに慣れ吸われる気持ちよさがクセになっていた。
紫水晶の瞳に白い肌、華奢な身体な割に飲む生き血は大量で普通の食事は好まない。それが【嫉妬の吸血鬼】である希澄。仲間内でも黎槐の血は2番目に美味しい。以前まで黎槐と変わらない長さだったグリザイアの髪は最近野蛮な輩に絡まれた際に切り落とされてしまい、今は肩までの長さになってしまった。


「ーーご馳走様でした」
「もういいのか?」
「はい。これ以上頂く訳にはいかないです」
「なら、また明日だな」


希澄に噛まれた後は一晩眠ると自然治癒され、黎槐にとっては大した事ではなかった。


「さて……。それじゃあ、次は私が頂く番」
「黎槐……」


そっと顔を近付けられ、そのまま2人は口付けを交わした。自分より少し背が小さい希澄の為に黎槐は姿勢を合わせている。希澄の負担にならないように全ての事に気を配っている。


「ベッドまでエスコートしよう」
「……あの、黎槐……」
「ん?どうした?」
「……今日は……この景色を見ながらが良いです…」
「ーー成程。嗜好を凝らしてみる、か」
「貴方もお好きでしょう?」
「あぁ。大好きだよ」


今度は抱き合いながらキスをし、何度か舌を絡ませ身体が疼いてきた頃、希澄は服を脱いだ。


「ガラスに身体くっつけろ。その方がよーく見えるだろう」
「冷たっ……」
「すぐに気持ちよくなる。脚、広げて」
「…はい……」


従順な希澄に黎槐は満足しながら、彼の股の間に指を入れた。


「んっ……」
「痛いか?」
「…いえ……」
「大分、感じるようになってきたな。指、増やそうか」
「ぁあ……っ」
「どうした?キツいか?」
「違っ……。もっと……弄って下さ……」
「ほぅ。随分と甘い声が出るようになったじゃないか。お望み通りにしてやるよ」
「ひぃ……!あ……そこ……当たって……っ」
「一番気持ちいい所だもんな。コリコリいって、弄り甲斐がある」
「ぁ…あぁ……っ」
「脚が震えてるぞ。もう立っていられないのか?」
「んっ……無理……です……」
「そうか」
「…ひぁあ……っ…!」


黎槐はいきなり指を突き立て、激しく動かした。前立腺を3本の指で刺激され、希澄はガクガクと痙攣し始めていた。


「あ、イっ……!イク……!やぁ……!」


ぴちゃぴちゃっとガラス窓に希澄の精液が飛び散った。黎槐が指を抜くと透明な液が数滴床に漏れた。


「指だけで達するなんて、感じやすくなったな。希澄」
「っ…はぁ……ぁ……」
「このまま挿入されたいか?」
「……はい……。犯して…くださ……」


綺麗に磨かれたガラスには2人の姿が鏡のようによく映り出されていた。希澄は自分の淫らな表情に堪らなく興奮した。


「踏ん張れよ、希澄」
「………っ!」


黎槐の大きいペニスがゆっくりと中に入ってくる。すぐに熱を帯び、それだけでまた昇天してしまいそうになる。


「辛くないか?」
「……全部……入ってる……?」
「いや。いきなり奥まで突くと崩れるだろう?」
「構いません……。奥まで……一気に…欲しい……」
「そんな可愛いおねだりされたら叶えない訳にはいかないな」
「はっ……ぁああ……っ!」
「全部入ったよ、奥までぎちぎちだ。痛くないか?」
「…んっ……。動いて……いい…ですよ……」
「あぁ。存分に突いてやるからな」


バチュンと卑しい音が響き渡る。突かれる度に前立腺をアタックされ、希澄はまた射精してしまった。


「ほら、希澄。よく見てみろ。あの光の一つ一つに人間が暮らしてる。誰かがお前に気付くかもな」
「やっ……!耳元で喋らな………」
「今夜は星がよく見えるな」
「……星……?」


空には多くの星が光っていた。普段はそんなに綺麗じゃない。けれど今夜だけは夜景と合わさって綺麗なイルミネーションみたいに思えた。


「…希澄……中に、出す……」
「え、待っ…!中は……」
「済まない」
「ぅあ……!あ…熱いの……出て……」
「お前も出すか」
「ちょっ……!前……嫌……っ…触らな……!」
「ほら。一緒にいこう、希澄」
「…はぁ……ンッ……」
「全部出して。空っぽになれよ」
「いっ……!やぁああ……っ!」


ドクンと大きく脈打ち、黎槐が抜くと希澄は力が抜け倒れそうになった。


「…っと。危ない危ない」
「…くろ……」
「続きはベッドでしようか。お前の表情、今度は正面で見たい」
「……はい……」


柔らかな微笑を浮かべた希澄に黎槐はドキッとしながらもそのまま姫抱きし、ベッドへ移動した。


「黎槐……」
「ん?身体、痛いか?」
「…少し…足が痺れてます……」
「休むか?今、水を持ってくる」
「……ありがとうございます」


黎槐は台所へ向かい、希澄はゆっくりと起き上がった。中に出された黎槐の精子がアナルから少しだけ垂れる。体はまだ熱く、首にまとわりついていた髪に触れた。


「……」


黎槐が整えてくれたお陰で毛先も揃って良くなった。折角同じ長さまで伸びたのに、あっさりと切られてしまったものだから落ち込みも半端なかった。



魔女によって具現化された『七つの大罪』。初めは仲間内で行動していたのに、いつの間にかバラバラになって、会う機会も無くなった。一番美味しい血の持ち主とも音信不通になってしまい、捜索していた時に不良達に絡まれ髪を奪われた。髪だけで済んだのは、その時に助けてくれた黎槐のお陰。黎槐ともこの時に再会し、今に至る。


「まだ落ち込んでいるのか?」


カップを希澄に手渡しながら黎槐は隣に腰掛けた。


「……貴方と同じ長さだったのに……虚しいものですね」
「ならば今度は私がお前の長さに合わせよう」
「却下します」
「……何故?」
「貴方の長い髪、好きなんです。艶があってサラサラしていて。なので、勝手に切ったら空っぽになるまで血を頂きます」
「それは……いや……この際、お前の満足するまで私の血を吸えば……!」
「そんな事したら死んじゃいますよ!」 


軽い冗談を真剣に受け止められた希澄は慌てて否定した。黎槐は希澄の為なら死だって恐れない。希澄が「死ね」と言えば迷わず舌を噛むだろう。


「……すみません、本気にされるとは思わなくて…」
「なんだ、冗談だったか」
「……誰にも……渡したくないんです。だから……」
「それは私自身をと言う意味か?それとも私の血だけが欲しい?」
「僕が欲しいのは貴方です!その優しさも全部、僕だけのものだ……。誰にも……透韻(とうい)にだって渡す気はありません!」 


本音を晒した希澄はゆっくりと息を整える。黎槐は優しい微笑を浮かべながら希澄の肩を抱いた。


「私もだよ、希澄。お前は誰にも渡さない」
「……僕の前からいなくなったら、許しませんよ」
「あぁ。ずっとお前の側にいるよ、当たり前だろう」


……嘘つき。
そう感じてはいても言葉には出せない。今の黎槐は希澄を求めている。それは、『彼』がいなくなったから。それまではただ微笑みかけてくれるだけだった。募る嫉妬とは裏腹に『彼』の血を好んでいる自分に腹が立つ。だが今は状況が違う。『彼』とも連絡がつかなくなり、黎槐は希澄だけを求めるようになった。現状が望んだ未来ならこのまま維持する。絶対に誰にも壊させやしない。


「そろそろ、熱も下がっただろ。第2ラウンドといこうか」
「仰せのままに」


黎槐は希澄を押し倒し、キスから再開したーー。










「だーかーら!しつけーんだよ、てめぇは!オレは創葉と居たい訳。邪魔すんじゃねぇ!」


透韻に何度拒否されても黎槐は全く諦めず口説いていた。仲間内で最も美しいとされる【色欲の天使】である透韻。その麗しい姿には似つかわしくない乱暴な言葉遣いが印象的だった。


「透韻」 
「なんだよ……。あぁ、餌の時間か。ほら、吸え」


口は悪いが根は優しく、だから嫌いになれない。そんな彼だから血も一際美味だった。その味を占めてからは透韻を求めてしまい、よく黎槐とも鉢合わせした。黎槐は誰にでも態度が良く、希澄にも笑いかけてくれた。そんな自分を「良い奴」だと図に乗っている黎槐の事を希澄は好いていた。透韻には到底適わないが、いつか振り向かせてやろうと。


透韻の血を吸えなくなったのは残念だったがその代わりに好きな相手を手に入れた。もう邪魔者はいない。この時を、永遠のものにするんだ。



「黎槐……」
「泣く程、悦かったか?」
「はい……。とても……気持ちいいです…」
「可愛いな、希澄」 


意識が飛ぶまで2人は何度も何度も抱き合い、互いの名を呼び合った。
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