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舞☆路銀
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華やかな街並みにある煌びやかな店の中では、見目麗しい二人の踊り子が観客を盛り上げていた。
まるで天女のような舞に男女関係なく魅入っている。お酒や料理も嗜みながらの鑑賞だが、舞手があまりにも美しいので沢山の視線が注がれる。
薄い生地の鮮やかな衣装だが、動きがキレキレなので卑猥な印象は無く最早格好良い。曲調が変わると観客も楽しんで拍手している。
今宵の売上金に貢献出来たなと端から見守っていたアルセは満面の笑みを灯した。
「なかなか良い案でしたね」
「そうだろ?オレが見たかったし」
「願望ですか」
「レヴィだって嬉しいクセに」
「そうですね。新鮮で良きです」
舞姫として働かないかと提案した時、 朱雀と透韻はあっさり了承した。踊るだけなら抵抗は無いそうなので数日前からこのお店で働いている。
「綺麗な舞手がいる」と噂が噂を呼び、今では満員御礼の状態だ。店側も儲かっているのである程度の条件は受け入れてくれている。
「それにしても、綺麗な踊りですね」
「一回見たら覚えちゃうんだってさ。流石、人間離れしてるだけあるよね」
「指先の動きまで靭やかで美しいです」
「それはほら。夜の営みが影響してるから」
「してますか?」
「昨日もオーバーしたんでしょ」
「失敬ですね。透韻があまりにも色っぽかったので仕方なくです」
「レヴィは見た目より性欲強いしね」
「透韻の色気に自制出来ないだけです」
「まぁ、サクも可愛いけど」
「従順そうですものね」
「あれで調教師やってたとか信じらんない」
「100年も前の話でしょう?」
「いや、吃驚するでしょ。オレの方が調教師っぽくない?」
「向いてそうですね」
リズムが変わり、先程の早い踊りから今度はゆったりとした旋律が流れた。一つ一つの動きが丁寧なので見ていて飽きない。目を逸らしたくない程に釘付けになる。
「あと一曲で終わりだね」
「外で待ちますか?」
「うん。レヴィは付き添いして」
「了解です」
観客達で出口が混み合わない内にアルセは外に出た。
夜の街並みも賑わっている。同じ様な店がちらほらあるが、他のお店は信用出来なさそうだったので見向きもしなかった。
それから小一時間程して客達がぞろぞろと流れ出てきた。アルセが邪魔にならない位置に移動しようとした頃に見慣れた顔が現れた。
「おまたせしました」
出てきたのは朱雀一人だけだ。レヴィと透韻の姿は見当たらない。
「他の二名は?」
「透韻がオーナーに呼ばれたのでレヴィも付いていくって」
「先に帰ってる?」
「うん。遅くなるかもしれないからそうして欲しいって言ってた」
「そ。絡まれたくないしね」
行くよ、と差し出された手を朱雀は嬉しそうに握った。
初日は無事に何事もなく帰宅した舞姫だったが、3日後位に夜道で輩に襲われた。その時は透韻も一緒だったので輩をバキバキにして事なきを得た。それを知ったアルセは送迎を欠かしていない。
「あの指先の動きって意識してるの?」
「……最近は綺麗だと褒められたから意識するようにした」
「誰に言われたの?」
「レヴィ。いつも褒めてくれる」
「オレも褒めてるけど」
「ありがとう」
「……変な輩はいない?大丈夫そう?」
「うん。アルセのおかげ」
「なら良いんだ」
「アルセの方は仕事大丈夫?」
「討伐依頼なら余裕だし。暫くはこの街にいる予定だから」
「レヴィも?」
「一緒。街の外れの方とか山の中とか魔物が多いんだって」
「魔物……。無茶はしないで欲しい……」
アルセの手を強く握りながら朱雀はお願いした。
「しないよ。無理だと思ったら逃げるし」
「……でも……」
「……心配してくれてありがと。やっぱ可愛いな、お前」
無邪気な笑みで褒められ、朱雀は顔を赤らめた。
「一一一舞姫見ーっけ!」
街灯の少ない夜道。
軽い声とともに不穏な空気が二人を包んだ。
バキッ一一一
一瞬、何の音だか分からなかった。
隣のアルセが力なく倒れ込んだのを見て朱雀は漸く周りの気配に気付いた。
最近は危険察知能力も劣っているらしい。周りが見えなくなっている証拠だ。
「アルセ……っ……!」
いきなり背後から伸びてきた手が朱雀の口元に布を当ててきた。
その瞬間、朱雀は意識を失い、黒い影が手際よく運んで行った。
まるで天女のような舞に男女関係なく魅入っている。お酒や料理も嗜みながらの鑑賞だが、舞手があまりにも美しいので沢山の視線が注がれる。
薄い生地の鮮やかな衣装だが、動きがキレキレなので卑猥な印象は無く最早格好良い。曲調が変わると観客も楽しんで拍手している。
今宵の売上金に貢献出来たなと端から見守っていたアルセは満面の笑みを灯した。
「なかなか良い案でしたね」
「そうだろ?オレが見たかったし」
「願望ですか」
「レヴィだって嬉しいクセに」
「そうですね。新鮮で良きです」
舞姫として働かないかと提案した時、 朱雀と透韻はあっさり了承した。踊るだけなら抵抗は無いそうなので数日前からこのお店で働いている。
「綺麗な舞手がいる」と噂が噂を呼び、今では満員御礼の状態だ。店側も儲かっているのである程度の条件は受け入れてくれている。
「それにしても、綺麗な踊りですね」
「一回見たら覚えちゃうんだってさ。流石、人間離れしてるだけあるよね」
「指先の動きまで靭やかで美しいです」
「それはほら。夜の営みが影響してるから」
「してますか?」
「昨日もオーバーしたんでしょ」
「失敬ですね。透韻があまりにも色っぽかったので仕方なくです」
「レヴィは見た目より性欲強いしね」
「透韻の色気に自制出来ないだけです」
「まぁ、サクも可愛いけど」
「従順そうですものね」
「あれで調教師やってたとか信じらんない」
「100年も前の話でしょう?」
「いや、吃驚するでしょ。オレの方が調教師っぽくない?」
「向いてそうですね」
リズムが変わり、先程の早い踊りから今度はゆったりとした旋律が流れた。一つ一つの動きが丁寧なので見ていて飽きない。目を逸らしたくない程に釘付けになる。
「あと一曲で終わりだね」
「外で待ちますか?」
「うん。レヴィは付き添いして」
「了解です」
観客達で出口が混み合わない内にアルセは外に出た。
夜の街並みも賑わっている。同じ様な店がちらほらあるが、他のお店は信用出来なさそうだったので見向きもしなかった。
それから小一時間程して客達がぞろぞろと流れ出てきた。アルセが邪魔にならない位置に移動しようとした頃に見慣れた顔が現れた。
「おまたせしました」
出てきたのは朱雀一人だけだ。レヴィと透韻の姿は見当たらない。
「他の二名は?」
「透韻がオーナーに呼ばれたのでレヴィも付いていくって」
「先に帰ってる?」
「うん。遅くなるかもしれないからそうして欲しいって言ってた」
「そ。絡まれたくないしね」
行くよ、と差し出された手を朱雀は嬉しそうに握った。
初日は無事に何事もなく帰宅した舞姫だったが、3日後位に夜道で輩に襲われた。その時は透韻も一緒だったので輩をバキバキにして事なきを得た。それを知ったアルセは送迎を欠かしていない。
「あの指先の動きって意識してるの?」
「……最近は綺麗だと褒められたから意識するようにした」
「誰に言われたの?」
「レヴィ。いつも褒めてくれる」
「オレも褒めてるけど」
「ありがとう」
「……変な輩はいない?大丈夫そう?」
「うん。アルセのおかげ」
「なら良いんだ」
「アルセの方は仕事大丈夫?」
「討伐依頼なら余裕だし。暫くはこの街にいる予定だから」
「レヴィも?」
「一緒。街の外れの方とか山の中とか魔物が多いんだって」
「魔物……。無茶はしないで欲しい……」
アルセの手を強く握りながら朱雀はお願いした。
「しないよ。無理だと思ったら逃げるし」
「……でも……」
「……心配してくれてありがと。やっぱ可愛いな、お前」
無邪気な笑みで褒められ、朱雀は顔を赤らめた。
「一一一舞姫見ーっけ!」
街灯の少ない夜道。
軽い声とともに不穏な空気が二人を包んだ。
バキッ一一一
一瞬、何の音だか分からなかった。
隣のアルセが力なく倒れ込んだのを見て朱雀は漸く周りの気配に気付いた。
最近は危険察知能力も劣っているらしい。周りが見えなくなっている証拠だ。
「アルセ……っ……!」
いきなり背後から伸びてきた手が朱雀の口元に布を当ててきた。
その瞬間、朱雀は意識を失い、黒い影が手際よく運んで行った。
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