29 / 68
29 王子様の社長面接1
しおりを挟む
「…そうか。カイの能力を生かすなら、王都で調教師としてまず認定される必要があるんだな」
「その資格が、そもそもどうやって取るものなのかわからないけどね。魔術師さんにその辺も聞けばよかったな」
「また図書館に行けばいい。一緒に探してやるよ。でもさ、悪いけどちょっとその前に…」
「オルフェ──!! カイくーん!! ご飯だよ──!! オルフェー!!」
「うるせーな!!聞こえてるよ鼠ババア!!!!」
──残念だったねオルフェくん。僕としてはちょっと助かった気分だよ。
僕にセクハラが出来ずムスッとしたオルフェくんを横目に、王都に行ったらしばらく食べられないご飯をしみじみと味わい、『いつまで続くんだろうね! ウマ息子の反抗期は!』と文句混じりのマウラさんの話を楽しんだ。
──────
「カイくーん! もう王都から手紙が来たよお。あの話じゃないかね」
マウラさんから受け取った手紙には、『早馬』の印が押されていた。わざわざ手紙で、しかも速達で送ってくれたのか。
なぜに速達、と思いながら裏を見ると封蝋にお花の印が押されている。オシャレだなあと思っているとマウラさんに『カイくん、それ王家の印だよ。えらいところから送ってくださったもんだね』と言われた。お、王家。苗字すらない小市民の僕には縁がないはずの王家から。
手紙の内容はこうだった。
調教師が就業不能で立て続けに辞めてしまい、人員が不足している。治療院からの報告によれば君の能力は充分。迎えをやるゆえ準備せよ。急ぎ王都に来られたし。これは王命である。第七王子 ニコラウス・セルリアン
だ、第七王子。そして王命って。命令されなくても行くのに。封筒の中にはしっかりした紙素材の、大きな印鑑を押したカードが同封されていた。到着したらすぐに王城に入り、案内に従い王子様に謁見し、そのあと調教師に引き合わせるとのこと。
待って。ちょっと待って。この間に挟まれた謁見って必要なの。僕、調教師さんについては本で読んだ知識しかないけど、まず謁見するなんて記述はなかったけど。珍しい人間を見てみたいってことかな。しかも迎えに来てくれる。待遇の良さが怖い。珍しい人間を面白ろがられて、お城から出して貰えない、なんてことにならないだろうか。
どうしよう、と困っているとマウラさんが『すぐに返事を書いてみな。早馬で送ればいいさ。オルフェも連れてっていいかって書くんだよ。書いたらあたしに一度見せな』と指示してくれたのでひとまず落ち着き、レターセットを貰った。久しぶりだな、お堅い文章でのメールって。
まず季節の挨拶を入れたほうがいいだろうかと、春風の候、王家の皆様はいよいよご盛栄のこととお慶び申し上げます、なんて書いたらマウラさんに『あんたいつでも王都に勤められるんじゃないかい』と褒められた。アリなんだ、時候の挨拶。
──────
王都からのお迎えまで間に合うかとハラハラしていたが、なんとか間に合ったようで、お付きの人が『オルフェウス様もどうぞ』と言ってくれた。良かった、僕一人じゃ泡を吹いて倒れていたかもしれない。だってこの馬車、黒の車体にワインレッドの美しい内装で高そうだし、見たこともない立派さだもん。絶対ガタガタ揺れないやつだ。
お付きの人は『狭くてすみません。お邪魔はしませんので、私はないものとして扱ってくださいね』とウインクしながら言った。ないものとして扱ったりなんてできないけど、小心者の僕は横に座ったオルフェくんになるべく身体をくっつけた。オルフェくんは『役得だな』と笑っていた。なんで君はそんなに落ち着いていられるの。僕より若いのに凄いな。
馬の交代と人の休憩を挟み、半日ほどで到着するという。機関車だともっと早いのだが、直接のお迎えというところに意味があるらしく、一応高速道路に乗った感じで最短の道のりにはなるようだ。辞めた調教師さんの就業不能ってどういうことなんでしょうとお付きの人に聞いたら、『すみません、私ではわかりかねます』と返事が返ってきた。怖いことじゃなければいいが。
──────
初めて足を踏み入れる王城。テーマパークで見たアレとは規模が違った。ビシッと整えられた前庭に、遠すぎるエントランス。小城の天辺が所々デコボコしているけど、確かあれは要塞として必要なやつだ。うわあ。死ぬほど窓がある。何人勤めて何人住んでるんだろう。いや、住居は別にあったりして。
守衛さんらしき人に敬礼され、お付きの人に中に案内され、入ったら一生出られなさそうだとヒソヒソ話していると『こちらに第七王子がいらっしゃいます。よろしいですか』と声をかけられた。来た。これはある意味、社長面接だ。
王城で王子様に謁見、という字面だけ見れば、長い絨毯の先に階段があってそこに王子様が座ってて、等間隔に並ぶ兵士さんに見守られながら頭を下げて、話しかけられたら話して、みたいなイメージだったが全然違っていた。明らかに良い意匠の内装ではあるが、大企業の社長室に通されてソファーに腰掛けて話す、みたいな感じだった。緊張は解けてないけど拍子抜けした。
「初めまして、君がカイくんね。君はオルフェウスくんか。遠いところからお疲れ様。わざわざありがとう」
産まれて初めてお目にかかった王子様は、光が当たると菫色に輝くプラチナブロンドと、宝石みたいな紫色の瞳を持つ背の高い美男子だった。まさに天上人。王様もお后様もお美しいんだろうなあ。
挨拶からずっとラフな感じで王子様はお茶とお菓子を勧めてくれる。…なんかどんどん運ばれてくるぞ。オルフェくんと目を見合わせてしまった。僕と同じようなことを考えているようだ。
僕は貴人じゃないし、ただの従業員になるつもりだったのに。…何か過度な期待をされている気がする。
「その資格が、そもそもどうやって取るものなのかわからないけどね。魔術師さんにその辺も聞けばよかったな」
「また図書館に行けばいい。一緒に探してやるよ。でもさ、悪いけどちょっとその前に…」
「オルフェ──!! カイくーん!! ご飯だよ──!! オルフェー!!」
「うるせーな!!聞こえてるよ鼠ババア!!!!」
──残念だったねオルフェくん。僕としてはちょっと助かった気分だよ。
僕にセクハラが出来ずムスッとしたオルフェくんを横目に、王都に行ったらしばらく食べられないご飯をしみじみと味わい、『いつまで続くんだろうね! ウマ息子の反抗期は!』と文句混じりのマウラさんの話を楽しんだ。
──────
「カイくーん! もう王都から手紙が来たよお。あの話じゃないかね」
マウラさんから受け取った手紙には、『早馬』の印が押されていた。わざわざ手紙で、しかも速達で送ってくれたのか。
なぜに速達、と思いながら裏を見ると封蝋にお花の印が押されている。オシャレだなあと思っているとマウラさんに『カイくん、それ王家の印だよ。えらいところから送ってくださったもんだね』と言われた。お、王家。苗字すらない小市民の僕には縁がないはずの王家から。
手紙の内容はこうだった。
調教師が就業不能で立て続けに辞めてしまい、人員が不足している。治療院からの報告によれば君の能力は充分。迎えをやるゆえ準備せよ。急ぎ王都に来られたし。これは王命である。第七王子 ニコラウス・セルリアン
だ、第七王子。そして王命って。命令されなくても行くのに。封筒の中にはしっかりした紙素材の、大きな印鑑を押したカードが同封されていた。到着したらすぐに王城に入り、案内に従い王子様に謁見し、そのあと調教師に引き合わせるとのこと。
待って。ちょっと待って。この間に挟まれた謁見って必要なの。僕、調教師さんについては本で読んだ知識しかないけど、まず謁見するなんて記述はなかったけど。珍しい人間を見てみたいってことかな。しかも迎えに来てくれる。待遇の良さが怖い。珍しい人間を面白ろがられて、お城から出して貰えない、なんてことにならないだろうか。
どうしよう、と困っているとマウラさんが『すぐに返事を書いてみな。早馬で送ればいいさ。オルフェも連れてっていいかって書くんだよ。書いたらあたしに一度見せな』と指示してくれたのでひとまず落ち着き、レターセットを貰った。久しぶりだな、お堅い文章でのメールって。
まず季節の挨拶を入れたほうがいいだろうかと、春風の候、王家の皆様はいよいよご盛栄のこととお慶び申し上げます、なんて書いたらマウラさんに『あんたいつでも王都に勤められるんじゃないかい』と褒められた。アリなんだ、時候の挨拶。
──────
王都からのお迎えまで間に合うかとハラハラしていたが、なんとか間に合ったようで、お付きの人が『オルフェウス様もどうぞ』と言ってくれた。良かった、僕一人じゃ泡を吹いて倒れていたかもしれない。だってこの馬車、黒の車体にワインレッドの美しい内装で高そうだし、見たこともない立派さだもん。絶対ガタガタ揺れないやつだ。
お付きの人は『狭くてすみません。お邪魔はしませんので、私はないものとして扱ってくださいね』とウインクしながら言った。ないものとして扱ったりなんてできないけど、小心者の僕は横に座ったオルフェくんになるべく身体をくっつけた。オルフェくんは『役得だな』と笑っていた。なんで君はそんなに落ち着いていられるの。僕より若いのに凄いな。
馬の交代と人の休憩を挟み、半日ほどで到着するという。機関車だともっと早いのだが、直接のお迎えというところに意味があるらしく、一応高速道路に乗った感じで最短の道のりにはなるようだ。辞めた調教師さんの就業不能ってどういうことなんでしょうとお付きの人に聞いたら、『すみません、私ではわかりかねます』と返事が返ってきた。怖いことじゃなければいいが。
──────
初めて足を踏み入れる王城。テーマパークで見たアレとは規模が違った。ビシッと整えられた前庭に、遠すぎるエントランス。小城の天辺が所々デコボコしているけど、確かあれは要塞として必要なやつだ。うわあ。死ぬほど窓がある。何人勤めて何人住んでるんだろう。いや、住居は別にあったりして。
守衛さんらしき人に敬礼され、お付きの人に中に案内され、入ったら一生出られなさそうだとヒソヒソ話していると『こちらに第七王子がいらっしゃいます。よろしいですか』と声をかけられた。来た。これはある意味、社長面接だ。
王城で王子様に謁見、という字面だけ見れば、長い絨毯の先に階段があってそこに王子様が座ってて、等間隔に並ぶ兵士さんに見守られながら頭を下げて、話しかけられたら話して、みたいなイメージだったが全然違っていた。明らかに良い意匠の内装ではあるが、大企業の社長室に通されてソファーに腰掛けて話す、みたいな感じだった。緊張は解けてないけど拍子抜けした。
「初めまして、君がカイくんね。君はオルフェウスくんか。遠いところからお疲れ様。わざわざありがとう」
産まれて初めてお目にかかった王子様は、光が当たると菫色に輝くプラチナブロンドと、宝石みたいな紫色の瞳を持つ背の高い美男子だった。まさに天上人。王様もお后様もお美しいんだろうなあ。
挨拶からずっとラフな感じで王子様はお茶とお菓子を勧めてくれる。…なんかどんどん運ばれてくるぞ。オルフェくんと目を見合わせてしまった。僕と同じようなことを考えているようだ。
僕は貴人じゃないし、ただの従業員になるつもりだったのに。…何か過度な期待をされている気がする。
35
あなたにおすすめの小説
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜
せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。
しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……?
「お前が産んだ、俺の子供だ」
いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!?
クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに?
一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士
※一応オメガバース設定をお借りしています
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。
村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました!
ありがとうございました!!
いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い
<あらすじ>
魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。
見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。
いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。
ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。
親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。
※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。
└性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる