体育会系の魔法使いは呪文が覚えられない~暴死するか先輩と寝るかの二択です~

清田いい鳥

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「……、…………」

    ブルーノ先輩の『どうにかする方法』は、俺の想像を超えた遥か宇宙に存在した。

「ネオくんは、賢いもんね。小さい頃は天才って言われてたんでしょ? 本当はちゃんと分かってるんだよね」


『お前は誰に似たのかねえ。このヘーゼルの瞳は父親そっくりなのに、父親より賢い子だ』

    もう星になっちゃった、父方のおばあちゃんの言葉を思い出した。俺達兄弟をとても可愛がってくれていた。
    彼女は俺を膝に乗せ、ミルクティー色の髪を手梳きながら、何度も褒めてくれたっけ。

『しっかし顔は平凡だね。おっかしいねぇー、誰に似たのやら』

    これもよく言っていた。
    俺の愛するババアは割と辛辣でもあった。



「いい子、いい子。暴れたらどうなるか、分かるよね。暴れて興奮すると魔力が吹き出しちゃうかもしれないよ。困るでしょ。それにさ、痛いのより気持ちいい方が、いいよね?」

    魔力が、と言われて我に返った。
    ギラギラ光る両目にしか焦点が合わないほどに顔を近づけながら、呪文が覚えられないという一番の泣き所を突かれ、声色だけは優しく宥めるような先輩の言葉に頭が混乱してくる。頭の中も目の前も、滲んでよく見えなくなってきた。

    理屈はさっき散々聞いた。男の子種や女の愛液は魔力の濃縮液だ。
    平均的な魔力の持ち主であればちょっと出すだけで事足りる。しかし高保持者は、出すだけ出してもまだ足りない。体力が先に尽きる。
    そこで同時に他者の魔力をねじ込み、混ぜ合わせる。そうすることで、強引にだが希釈させられるのだ。

    ──こんなこと、女の子とだってまだなのに。

    でも、だからって、呪文を覚える自信は今のところないし、本格的に危なくなる前にこんなことを進んでしてくれる人が今後、タイミング良く見つかるとは思えない。でも。でも。
    身体の力が一気に抜けた俺を、先輩は背中から包んで抱きしめた。涙を拭い、大きな掌で包み込み、髪を掬うように撫でながら耳元で囁いた。

「可哀想に。ほんとは好きな子とこういうことしたかったよね。でもね、死んだら意味がないからね。生きるためにすることなんだよ」
「いきるため…」

「そうだよ。ネオはいい子だね。僕がついてるから怖くないよ。力を抜いて楽にしたら、痛くないようにできるからね」

    ブルーノ先輩は怖くない、大丈夫と言いながらしばらく俺の二の腕をさすった後、抱きしめながらそっと顔を寄せた。
    キスが始まっていた。俺とは違う大きな口に、喰われるかもという本能的な怖さを感じつつ、熱い舌で蹂躙されるようなキスは俺が全く知らないもので、これがキスってやつなのかどうかも解らなかった。

    肩に引っかかっていたシャツの内側に、指を滑らされたのが分かる。先輩の指の腹が俺の皮膚を撫でるたび、ピリピリと痺れる何かが這い回り、そのたびにビクンと背中が反ってしまう。
    喉の奥から勝手に、突き上げるように声が出る。俺の変な声を聞かないで欲しいと必死に耐えるが、抵抗するだけ無駄だった。
    んん、うん、と漏れ続ける声を、咬まれるようなキスで呼吸ごと塞がれる。
    何も訴えられずにいると、胸の辺りから突然、先ほどよりずっと強い甘い痺れが全身を走り回り、それを追いかけるようにドクドクと心臓が跳ねた。
    先輩の指が、俺の不用な胸の突起を悪戯するように触れている。

    少しずつ確実に水位を上げてくる、甘ったるい未知の何か。
    それに流されたらどこに連れて行かれるのか分からない怖さと、痺れを感じるたびにズクリと疼いて主張し始めた下半身。
    本当は思いっきりそれを掴みたいのに、先輩の目の前でそんなことをしても良いのか分からない。
    不安に駆られ、追い詰められ、苦肉の策で脚を閉じると何やら冷たさを感じた。濡れている。先走りだと気づいた瞬間、顔に熱を感じた。

「上手だね。ほら、ちゃんと出てきた。もっと気持ちよくなればもっと出てきて、とっても楽になれるからね」

    俺の腹や鼠蹊に散らした液体を掬い取った先輩は、目の前で指を開いて見せてくる。
    めいっぱいに羞恥を感じて顔を逸らすと、大きな手で顎を口ごと強めに掴まれ、肩から首筋を舐められ、またゾクゾクと電流のような性感が頭の先まで駆け上がった。
    さらに耳を甘噛みされたと気づいた瞬間、バチッ!!という電気が短絡ショートしたときのような幻聴と、フラッシュを焚かれたように目の前が白く弾ける幻覚を見た。

「あっ!? ……はっ、……はっ、うそ、」
「ん?  イッちゃった?」

    事が始まってどのくらい経っているのか分からないが、直接触れてもいないのに達してしまった。
    最近そういう処理を全くしていなかったとはいえ、 あまりにも簡単に、しかも幼なじみの先輩の前でそうなってしまったことへの羞恥と当惑で頭に血が上り、俺は再度顔を真っ赤にしていたと思う。

    もう終わりでいいよな。好き勝手に散らかしたモノを拭わなければ。
    先輩に謝ればいいのか、感謝すればいいのか、どっちなんだ、どっちもか?と考えつつも、疲労とショックで動かす気にならない身体を投げ出し、顔に手を当て呆然とした。
    先輩は少し離れたと思ったら、またすぐベッドに戻ってきた。

「まだ終わってないよ。怪我しちゃうからじっとしててね。 できるよね?」

    その手には何か光るものが握られている。
    そしてその後ろに見える先輩の股間にも、腹までそそり立ち、妖しげにぬらぬらと光る鈍器が装備されていた。



「せんぱい……それ…………」
「このまま突っ込むと痛いからさ。これで柔らかくするの。ネオくん痛いの嫌だよね?」

    全てにおいて嫌です。
    口にするともっと悪いことになりそうなその台詞を押し留めていた隙に、生暖かい液体が手早く局部に塗られた。

「待って先輩、先輩のそれ、絶対入んない。絶対入んないからそれだけは」
「あー大丈夫だよ。すぐ入るようにはなんないから。無理やりしないよ。大丈夫」

    わりとここまで無理やりじゃなかった? 無理やりの定義とは??
    えっ、これ何でこんなに暖かいんだろ。なんかお花のいい香りがする、あーブルーノ先輩んちって家業が治療魔術系だから、今まで色々融通して貰ってたなあ。
    擦り傷の治りが早いぷにぷにした肌に貼るやつとか。肌の組成ナントカを再生する化粧品とか。母様が喜んでたやつ。こんなもんまであんのか。

    基本的に嘘は吐かない人だ。他のことを考えて現実逃避に勤しみながら、昔のよしみで信用しようかと僅かな希望を持ちつつ、まだ宙を飛んだままのはっきりしない意識でとりあえず寝転んでいた。
    俺はきっと、疲れて油断していた。突然、グチュ、と音を立て何かが侵入してきた感覚で現実に引き戻されたのだ。


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