体育会系の魔法使いは呪文が覚えられない~暴死するか先輩と寝るかの二択です~

清田いい鳥

文字の大きさ
13 / 37

13 ブルーノ先輩の独白

しおりを挟む
「受理致しました。ご婚約おめでとうございます」

 役所で婚約や結婚の書類を提出した者には、サービスブーケが贈呈される。白い半透明の花弁がたっぷり重なった花を、銀のリボンで纏めた小ぶりな花束だ。

 イレネオはそれに鼻先を突っ込み『俺、こういうの初めて貰ったかも。いい匂いする!』と、花粉をつけて笑っていた。鼻を舐めてやったら悪戯すんなと怒っていた。



 幼い頃から、この柔らかい色をした髪と、向日葵のような目を持つ男の子を狙っていた。

 初めて会い、触れたときの衝撃は未だ言葉に出来ない。彼は『いってえ!バチって来た』と情緒のないことを言っていたが。

 彼は知らないだろうが、オレにとっては一瞬で彼が世界の全てになったのだ。


 子供の1歳差は案外大きい。

 歩く幼児と寝転がる乳幼児。精通を迎えたものとそうでないもの。たかが一年、されど一年の経験の差。

 そういったアドバンテージを生かして、オレは怖くない、オレは優しい、オレはお前の味方なのだ、と繰り返し彼の脳に刻み込んだ。


 功を奏してイレネオは、オレをブルーノ兄ちゃんと呼んで慕うようになってくれた。
 しかし元々オレは兄の方と友人だ。その弟だけを連れ出そうとするのは不自然になる。

 どうするかとチャンスを常に狙っていたオレの下心に気づいた聡い友人は、弟を守るために牽制をかけてきた。奴は弟と喧嘩ばかりしているが、大事に思ってもいるのだ。

 彼の兄としては家が大きいだけの、自身は何も持たない男に弟を好き勝手されるのはかなり嫌だろう。だから将来のことにピントを合わせ、それに向けて真剣に、頭と身体を鍛え抜くことに集中しようと決意した。


 とはいえ、オレは若かった。
 欲望を学びの活力へと変換するも、合口あいくちきみが手の届く範囲にいる事実は変わらない。

 あの安心し切って隙だらけの小さい男の子に、襲いかかることなど造作もないのだ。
 人のいない場所に連れ込み、衣服を剥ぎ取り、露出させ、魔力を流して前後不覚にさせ、…それから。気持ちがいいとはこういうことだと身体に教え込むなんていつでもできる。

 カップに押し込めた欲望を縁の際ギリギリまでに留まらせていたオレは、何度もそれを決壊させかけ、他者との後腐れのない関係に手を出した。

 こんなことのために鍛えたわけではない魔術を使い、姿が分からないようにして。オレの頭の中で勝手に嬲られ、乱される彼に罪悪感を持ちながら。



 学園内で時折会うようになったイレネオは、昔のまま無邪気で裏表のない少年だ。
 めったに会わないから美化され妄想が膨らんでしまうのだと思っていたが、オレを見かけるたびに近寄ってくる彼がいる生活。

 それなりに背が伸びて、声が少し低くなった。でも相変わらず、オレの下心にまるで気づかず何も疑わずに近づいて、パッと発光するような笑顔を向けてくる。

 そんな生活はオレの獣欲をひたすら煽られ続けるものだった。



 だから、彼が呪文を覚えられず、暴発の恐怖を抱えていることを知ったときの喜びは凄まじかった。暴発寸前なのはオレの方だった。

 人に言えないことや、叶えられない夢を抱え、本性をひた隠しにして生きてきたオレに与えられた幸運。神はオレを見捨ててはいなかった。



 出来るだけ乱暴にしたくない、優しくしたいと思ってはいるのだ。しかし一度興奮するとまるで我慢が利かない。魔力制御は誰に教わることなく、早々に身につけられたのに。

 抵抗する彼を組み敷くたび、ゾクゾクとした愉悦が込み上げてくるのだ。ギュッと目を閉じて、涙を浮かべ、顔を紅潮させて何かを叫ぶ彼。

 手足の力が弱り、濡れた目の焦点が合わなくなった頃、また仄暗い充足感に満たされる。オレはもっと、最愛の彼の前では紳士でいられると思っていた。

 とんでもない自惚れだった。


 言い訳になるかもしれないが、彼に魔力を突っこむたび、彼の柔らかい肌と濃い魔力に触れるたびに、バチバチと理性を消し炭にされるような快感に襲われるのだ。

 男なら誰しもこうなってしまうだろうとも思っている。


 イレネオはきっと覚えていない。
 自分はいつも早々に気絶していると思っているだろう。実は違う。

 甘い電撃を味わうことばかりに夢中になってしまうせいで、いつも最後は彼の股間が広範囲に充血して、真っ赤に腫れ上がる。

 息も絶え絶えというように収縮を繰り返す彼の後孔からは、魔力の凝縮液が溢れ出し、オレが出し尽くした白濁が多量に混じり、照明の光を反射してぬらぬら光る。

 もうとっくに魔香油は使っていない。奥の奥から、泡立つほどに溢れてオレを刺激し続ける。

 あまりにも扇情的な彼の姿にまた理性を飛ばしそうになりながら、もう休もう、と終わらせようとはするのだ。

『いやだあ、もっとする、もっといれてえ、いれてえ、せんぱいい』

 脚を開き、腰を揺すり、譫言のようにそう強請られて我慢できる男などいない。いたらそいつは見上げた紳士だ。それかイ○ポだ。


 大丈夫かこの子は、と思いながらも要求に応えると、『あん、きもちい、きもちい、好きい、好きいい』などと鼻にかかった甘ったるい掠れ声を上げるのだ。

 理性など爆砕されるに決まってんだろバカヤロー。

 オレだってもっと大人ぶりたかったよ。彼の前では。



 魔力は生き物であり、人間は魔力を利用しているようで、されているだけなのかもしれないと、オレは考えている。

 魔力にとってはただの宿主である人間。乗り移る先の器が大きければ大きいほど種の保存のために有利であり、より器の大きな宿主を増やすため、相性が良い魔力を持つ者同士の性感を刺激し、快感で支配し、枯れるまで子種を出させ、また新たな宿主たる子孫を増やす。

 オレたちは魔力という名の生き物に、意思のある生命体に、操られているだけではないか。そう思えて仕方がないのだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

素直に同棲したいって言えよ、負けず嫌いめ!ー平凡で勉強が苦手な子が王子様みたいなイケメンと恋する話ー

美絢
BL
 勉強が苦手な桜水は、王子様系ハイスペックイケメン幼馴染である理人に振られてしまう。にも関わらず、ハワイ旅行に誘われて彼の家でハウスキーパーのアルバイトをすることになった。  そこで結婚情報雑誌を見つけてしまい、ライバルの姫野と結婚することを知る。しかし理人は性的な知識に疎く、初夜の方法が分からないと告白される。  ライフイベントやすれ違いが生じる中、二人は同棲する事ができるのだろうか。【番外はじめました→ https://www.alphapolis.co.jp/novel/622597198/277961906】

公爵子息だったけど勘違いが恥ずかしいので逃走します

市之川めい
BL
魔王を倒した英雄によって建国されたグレンロシェ王国。その後は現在までに二人、王家の血を引く者から英雄が現れている。 四大公爵家嫡男、容姿端麗、成績優秀と全てにおいて恵まれているジルベールは、いつか自分も英雄になると思い、周りには貴公子然とした態度で接しながらも裏では使用人の息子、レオンに対して傲慢に振る舞い性的な関係まで強要していた。 だが、魔王の襲来時に平民であるはずのレオンが英雄になった。 自分とレオンの出生の秘密を知ったジルベールは恥ずかしくなって逃走することにしたが、レオンが迎えに来て……。 ※性描写あり。他サイトにも掲載しています。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

【16話完結】スパダリになりたいので、幼馴染に弟子入りしました!

キノア9g
BL
モテたくて完璧な幼馴染に弟子入りしたら、なぜか俺が溺愛されてる!? あらすじ 「俺は将来、可愛い奥さんをもらって温かい家庭を築くんだ!」 前世、ブラック企業で過労死した社畜の俺(リアン)。 今世こそは定時退社と幸せな結婚を手に入れるため、理想の男「スパダリ」になることを決意する。 お手本は、幼馴染で公爵家嫡男のシリル。 顔よし、家柄よし、能力よしの完璧超人な彼に「弟子入り」し、その技術を盗もうとするけれど……? 「リアン、君の淹れたお茶以外は飲みたくないな」 「君は無防備すぎる。私の側を離れてはいけないよ」 スパダリ修行のつもりが、いつの間にか身の回りのお世話係(兼・精神安定剤)として依存されていた!? しかも、俺が婚活をしようとすると、なぜか全力で阻止されて――。 【無自覚ポジティブな元社畜】×【隠れ激重執着な氷の貴公子】 「君の就職先は私(公爵家)に決まっているだろう?」

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 一月十日のアルファポリス規約改定を受け、サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をこちらへ移しましたm(__)m サブ垢の『バウムクーヘンエンド』はこちらへ移動が出来次第、非公開となりますm(__)m)

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

わがまま放題の悪役令息はイケメンの王に溺愛される

水ノ瀬 あおい
BL
 若くして王となった幼馴染のリューラと公爵令息として生まれた頃からチヤホヤされ、神童とも言われて調子に乗っていたサライド。  昔は泣き虫で気弱だったリューラだが、いつの間にか顔も性格も身体つきも政治手腕も剣の腕も……何もかも完璧で、手の届かない眩しい存在になっていた。  年下でもあるリューラに何一つ敵わず、不貞腐れていたサライド。  リューラが国民から愛され、称賛される度にサライドは少し憎らしく思っていた。  

処理中です...