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第4話
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どうしてニコラスがここにいて、私を助けてくれたのかわからない。
日が暮れてほとんど真っ暗な状態で、灯りは私とニコラスが持っている微弱な光だけだ。
それでもニコラスの周囲を眺めることができて、護衛が誰もいないことが気になってしまう。
「とにかく、今日は休みましょう」
ニコラスがそう言って筒のような魔法道具を地面に刺し、それがすぐに簡素な木の家となる。
この魔法道具は周囲の魔物を寄せ付けない魔法がかかっているようで、モンスターが気づくことはない。
高価な魔法道具で、扱える人も限られていると聞いたことがある。
それをニコラスは問題なく使い、木で作られた家の扉を開けてくれた。
「ルーナ様。今日は申し訳ありませんけど、ここで休んでください」
「謝らないでください……ありがとうございます。あの、本当にニコラス様ですよね?」
思わず私が尋ねると、ニコラスが頷く。
「はい。私はニコラス……もう家を捨てたので、ただのニコラスです」
「……えっ?」
ニコラスの発言が、私は信じられなかった。
唖然としていると、そんな私を見てニコラスが話す。
「私はエドルド伯爵家を捨てました……準備はしていましたし、家族もすぐに受け入れてくれました」
あの家族なら、ニコラスが家を捨てると言っても普通に受け入れそうだ。
私の元に来た理由が気になっていたけど、ニコラスがエドルド伯爵家を捨てた理由の方が心配だ。
不安になっているのが顔に出てしまったのか、ニコラスが微笑みながら話す。
「この魔法道具の家は、モンスターを寄せ付けない魔法がかかっています……話したいことは色々とありますけど、真っ先にルーナ様に伝えたいことがあります」
「はい」
真っ先に伝えたいことなら、一番重要に違いない。
ニコラスの発言を待ち――私は、驚くことになる。
「ルーナ様は魔法が使えないのではありません。支援魔法という名の希少魔法の力が備わっている為……その代償として使えないだけです」
ニコラスは、真っ先に私が魔法を使えない理由を話す。
「支援魔法……ですか?」
「はい。それがルーナ様の本来の力です」
支援魔法は初耳だけど、希少魔法は聞いたことがある。
強力で珍しい魔法とされていて、扱う人は何かしら代償を支払う必要があるらしい。
希少だから情報が少ないとされていて、代償も様々だと聞いている。
私が魔法を使えないのがその代償のせいで……支援魔法という希少魔法を、私は扱える?
「……それは、本当なのでしょうか?」
「はい。元兄ラドンが婚約してからのエドルド領の繁栄から、ルーナ様は無意識に支援魔法を使っています」
どうやら私が婚約者になってから、エドルド領は繁栄していたらしい。
ただの偶然なのかもしれないと、私は考えてしまう。
それでもニコラスは確信があるようで――私が持つ本来の力について、詳しく話してくれた。
日が暮れてほとんど真っ暗な状態で、灯りは私とニコラスが持っている微弱な光だけだ。
それでもニコラスの周囲を眺めることができて、護衛が誰もいないことが気になってしまう。
「とにかく、今日は休みましょう」
ニコラスがそう言って筒のような魔法道具を地面に刺し、それがすぐに簡素な木の家となる。
この魔法道具は周囲の魔物を寄せ付けない魔法がかかっているようで、モンスターが気づくことはない。
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それをニコラスは問題なく使い、木で作られた家の扉を開けてくれた。
「ルーナ様。今日は申し訳ありませんけど、ここで休んでください」
「謝らないでください……ありがとうございます。あの、本当にニコラス様ですよね?」
思わず私が尋ねると、ニコラスが頷く。
「はい。私はニコラス……もう家を捨てたので、ただのニコラスです」
「……えっ?」
ニコラスの発言が、私は信じられなかった。
唖然としていると、そんな私を見てニコラスが話す。
「私はエドルド伯爵家を捨てました……準備はしていましたし、家族もすぐに受け入れてくれました」
あの家族なら、ニコラスが家を捨てると言っても普通に受け入れそうだ。
私の元に来た理由が気になっていたけど、ニコラスがエドルド伯爵家を捨てた理由の方が心配だ。
不安になっているのが顔に出てしまったのか、ニコラスが微笑みながら話す。
「この魔法道具の家は、モンスターを寄せ付けない魔法がかかっています……話したいことは色々とありますけど、真っ先にルーナ様に伝えたいことがあります」
「はい」
真っ先に伝えたいことなら、一番重要に違いない。
ニコラスの発言を待ち――私は、驚くことになる。
「ルーナ様は魔法が使えないのではありません。支援魔法という名の希少魔法の力が備わっている為……その代償として使えないだけです」
ニコラスは、真っ先に私が魔法を使えない理由を話す。
「支援魔法……ですか?」
「はい。それがルーナ様の本来の力です」
支援魔法は初耳だけど、希少魔法は聞いたことがある。
強力で珍しい魔法とされていて、扱う人は何かしら代償を支払う必要があるらしい。
希少だから情報が少ないとされていて、代償も様々だと聞いている。
私が魔法を使えないのがその代償のせいで……支援魔法という希少魔法を、私は扱える?
「……それは、本当なのでしょうか?」
「はい。元兄ラドンが婚約してからのエドルド領の繁栄から、ルーナ様は無意識に支援魔法を使っています」
どうやら私が婚約者になってから、エドルド領は繁栄していたらしい。
ただの偶然なのかもしれないと、私は考えてしまう。
それでもニコラスは確信があるようで――私が持つ本来の力について、詳しく話してくれた。
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