婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました

天宮有

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第56話

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 放課後――私はメリタの部屋にやって来て、中に入った瞬間に罠だと知る。

 扉を閉めたと同時に勝手に鍵がかかり、部屋の外に出られなくなったからだ。

 その気になれば壊せるけど、正面にいるメリタに隙を作ってしまう。

 メリタは私と距離をとって――楽しげに話した。

「ルーミエ様、貴方は自分が思っている以上に嫉妬深い人なのですよ」

「……どういう、ことですか?」

「私はあえて、ジトア様のことが好きだと思わせる演技をしました。ジトア様を思い通り動かすことは不可能でも、ルーミエ様なら動かせますもの」

 演技という発言に、私は驚くしかない。

 メリタは自分の意思で顔を少し赤らめたり、声の感情を調整できるようだ。

 人より魔力や魔法のことに意識を向けるジトアだからこそ、気付けなかった。

 そして嫉妬していた私だからこそ、メリタの思い通り動かされてしまう。

 全て把握した私は、メリタに言っておきたいことがあった。

「演技力、凄すぎじゃないですか?」

「問題行動を起こした際、処罰が軽くなる為の技術ですよ……この部屋は防音もされていますし、逃げることもできません」

 そう言って、メリタが魔法を使おうとしている。

 どうやらメリタは、自分の部屋で私を消したかったようだ。
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