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第7話
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リアス視点
今までデーリカが優秀だったのは、魔法道具でシンシアの魔力を奪っていたからだ。
それなのにシンシアは指輪を壊せたようで、宰相が苦しそうな声を出す。
「ルジオ国には優秀な魔法使いが多い……魔法道具の呪いを解くことが、できたのかもしれません」
「馬鹿な!? 誰にも外せない魔法道具と言っただろ!? どうするつもりだ!!」
「とにかく様子を見るべきでしょう。竜族が消えた影響が、どれほどなのか私にも想定できません」
竜王の言動から、もうラグード国に戻ることはないだろう。
最悪の事態になっているが、モンスターの被害が増すかはまだわかっていない。
「クソッッ……モンスターが凶暴になるかもしれないのだろ! どう対処するつもりだ!?」
「手は打ちますが……デーリカ様には、聖女としてもっと活動してもらわなければなりません」
「わかっているわ! 今まで余裕だったし、シンシアの魔力がなくても余裕よ!」
「そ、それは……そうだな! 期待しているぞ!!」
俺はデーリカの発言を聞き、不安になりながらも賛同する。
聖なる魔法が扱えるのは事実だが、問題はシンシアの方が優れていたということだ。
今まではシンシアの魔力を奪うことで、デーリカが活躍していた。
本当に大丈夫なのか不安になり、デーリカの実力はすぐに判明することとなる。
■◇■◇■◇■◇■
シンシアが消えてから、数日が経っている。
竜族が消えた理由なのか不明だが、モンスターによる被害は増えていた。
凶暴になったモンスターは強くて、負傷者が増えていく。
聖女の力を求める声が多いが、今のデーリカでは期待に応えることができなかった。
玉座のある部屋に俺と国王と宰相が集まり、報告を聞き今後について話し合う。
聖女デーリカは魔力を使いすぎて倒れたが、これから更に苦しむこととなるだろう。
「数日なのにまさかここまでの被害が出るとは、どうすればいい!?」
国王が叫ぶが、俺は何も思いつかない。
そんな中で、冷静な宰相が話す。
「……竜王ヨハンは、明らかにシンシアに好意を持っていました」
「どういうことだ?」
「竜王ヨハンは激怒していました。恐らく本来は、この国を滅ぼすつもりでいたのでしょう」
宰相の発言を聞き、俺は兵士達を一瞬で倒したヨハンの力を思い返す。
平然と城の兵士を倒したのだから、全力なら城は崩壊していただろう。
そうしなかったのは、シンシアが望んでいなかったかだと推測できる。
「シンシアがいなければ、俺達は生きていなかったということか」
「はい。私達が生きているのはシンシアが止めたからで、それはシンシアならヨハンを制御できるということです」
「ヨハンがいるのだから、シンシアを従えるのは不可能だろう」
「シンシアが山地に住めるとは思えません。一人になった時を狙い捕らえましょう」
「危険だが、シンシアと竜族の力がなければ事態は悪化する……か」
そんなことをすればヨハンは怒るのは間違いないが、他に手はない。
このまま何もしなければラグード国が滅びる可能性があり、宰相の言う通りシンシアを人質にして竜王ヨハンを従えるしかないだろう。
ルジオ国の山地でシンシアの居場所がわからなくなったが、シンシアが竜と同じように山地で暮らせるとは思えない。
宰相の提案を聞き、俺達はシンシアが一人になった時を狙って捕らえることに決める。
この時はまだ――ヨハンが常にシンシアの側にいることを、俺達は想定していなかった。
今までデーリカが優秀だったのは、魔法道具でシンシアの魔力を奪っていたからだ。
それなのにシンシアは指輪を壊せたようで、宰相が苦しそうな声を出す。
「ルジオ国には優秀な魔法使いが多い……魔法道具の呪いを解くことが、できたのかもしれません」
「馬鹿な!? 誰にも外せない魔法道具と言っただろ!? どうするつもりだ!!」
「とにかく様子を見るべきでしょう。竜族が消えた影響が、どれほどなのか私にも想定できません」
竜王の言動から、もうラグード国に戻ることはないだろう。
最悪の事態になっているが、モンスターの被害が増すかはまだわかっていない。
「クソッッ……モンスターが凶暴になるかもしれないのだろ! どう対処するつもりだ!?」
「手は打ちますが……デーリカ様には、聖女としてもっと活動してもらわなければなりません」
「わかっているわ! 今まで余裕だったし、シンシアの魔力がなくても余裕よ!」
「そ、それは……そうだな! 期待しているぞ!!」
俺はデーリカの発言を聞き、不安になりながらも賛同する。
聖なる魔法が扱えるのは事実だが、問題はシンシアの方が優れていたということだ。
今まではシンシアの魔力を奪うことで、デーリカが活躍していた。
本当に大丈夫なのか不安になり、デーリカの実力はすぐに判明することとなる。
■◇■◇■◇■◇■
シンシアが消えてから、数日が経っている。
竜族が消えた理由なのか不明だが、モンスターによる被害は増えていた。
凶暴になったモンスターは強くて、負傷者が増えていく。
聖女の力を求める声が多いが、今のデーリカでは期待に応えることができなかった。
玉座のある部屋に俺と国王と宰相が集まり、報告を聞き今後について話し合う。
聖女デーリカは魔力を使いすぎて倒れたが、これから更に苦しむこととなるだろう。
「数日なのにまさかここまでの被害が出るとは、どうすればいい!?」
国王が叫ぶが、俺は何も思いつかない。
そんな中で、冷静な宰相が話す。
「……竜王ヨハンは、明らかにシンシアに好意を持っていました」
「どういうことだ?」
「竜王ヨハンは激怒していました。恐らく本来は、この国を滅ぼすつもりでいたのでしょう」
宰相の発言を聞き、俺は兵士達を一瞬で倒したヨハンの力を思い返す。
平然と城の兵士を倒したのだから、全力なら城は崩壊していただろう。
そうしなかったのは、シンシアが望んでいなかったかだと推測できる。
「シンシアがいなければ、俺達は生きていなかったということか」
「はい。私達が生きているのはシンシアが止めたからで、それはシンシアならヨハンを制御できるということです」
「ヨハンがいるのだから、シンシアを従えるのは不可能だろう」
「シンシアが山地に住めるとは思えません。一人になった時を狙い捕らえましょう」
「危険だが、シンシアと竜族の力がなければ事態は悪化する……か」
そんなことをすればヨハンは怒るのは間違いないが、他に手はない。
このまま何もしなければラグード国が滅びる可能性があり、宰相の言う通りシンシアを人質にして竜王ヨハンを従えるしかないだろう。
ルジオ国の山地でシンシアの居場所がわからなくなったが、シンシアが竜と同じように山地で暮らせるとは思えない。
宰相の提案を聞き、俺達はシンシアが一人になった時を狙って捕らえることに決める。
この時はまだ――ヨハンが常にシンシアの側にいることを、俺達は想定していなかった。
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